更年期にさしかかり、「年齢とともに痩せにくくなった」「食べる量は変わらないのに太ったみたい」という話を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?そこで今回は、更年期に脂肪がつきやすくなる原因と、薬や漢方薬、サプリの効果についてご説明します。
更年期に脂肪がつきやすくなる原因とは?
じつは、女性は年齢とともに痩せにくくなるのではなく、「40歳ごろから肥満の割合が増える」という報告があります(※1)。
一般的に、肥満が増える原因には「基礎代謝の低下」「運動量の低下」「食事での摂取カロリーの増加」の3つが挙げられます。
さらに女性は、更年期のホルモンバランスの変化によって脂肪がつきやすくなるため、肥満の割合が増えると考えられています(※2)。
基礎代謝の低下の影響
加齢とともに筋肉量が低下し、基礎代謝量(安静時の代謝量)が減っていきます。筋肉量が低下すると活動時のエネルギー代謝も低下するため、総エネルギー代謝も低くなります(※3)。
年齢別の基礎代謝の基準値は、下記のとおりです(※3)。
年齢 | 基礎代謝基準値 (kcal/kg/日) |
30〜49歳 | 21.7 |
50〜69歳 | 20.7 |
体重によっても変わってきますが、30〜40代と50代以降の女性では、1日あたりの基礎代謝だけで50kcalの差があることがわかります。
脂肪燃焼の大半は基礎代謝が占めているため、加齢による基礎代謝の低下は肥満につながりやすくなります。
運動量の低下の影響
ホットフラッシュや頭痛など、更年期障害の症状が出ている人は、体を動かすのが億劫で、運動量が以前より少なくなっているかもしれません。
食事での摂取カロリーの増加の影響
運動量が減ることで、無意識のうちにダラダラしてしまい、間食が増えていませんか?これは更年期に限った話ではありませんが、知らず知らずのうちに摂取カロリーが増えると、当然体重も増加してしまいます。
更年期のホルモンバランスの変化の影響
女性が更年期に差し掛かると卵巣の機能が低下し、「エストロゲン(卵胞ホルモン)」の分泌量が低下します(※4)。
このエストロゲンには、総コレステロールと悪玉コレステロールを減少させ、善玉コレステロールを上昇させる働きがあります。さらに、悪玉コレステロールが酸化するのを防いだり、肥満になるのを防いだりする働きがあります(※2,4)。
また、エストロゲンは脂肪を合成する酵素のひとつである「リポ蛋白リパーゼ」ができるのを抑制し、脂肪が蓄積するのを減らす効果があることもわかっています(※2)。
更年期は皮下脂肪に加えて内臓脂肪もつきやすくなる
体脂肪には「皮下脂肪」と「内臓脂肪」の2種類があります。エネルギーを蓄えるという意味では同じ働きをするものですが、更年期になると、内臓脂肪が増えるといわれています(※1)。
そもそも、この2つの脂肪にはどのような違いがあるのでしょうか?
女性に多い皮下脂肪
皮下脂肪はエネルギーを長期的に蓄える特徴があり、運動や摂取カロリーをコントロールしてもなかなか減らすことができません。
下半身に脂肪がつきやすいことから、皮下脂肪の多い人の体系を洋ナシに例えることが一般的です。
閉経後の女性に増える内臓脂肪
一方の内臓脂肪は、日々の活動エネルギーのために蓄えられます。お腹がぽっこり出ることから、内臓脂肪が多い人の体系は、りんご型と例えられます。
内臓脂肪は男性に多いのですが、閉経後の50歳ごろからは女性にも増え、メタボリックシンドロームの原因になることがわかっています(※1)。
ただ、内臓脂肪は食事制限や適度な運動を心がけることで、比較的減らしやすいことが知られています。
更年期の脂肪対策に有効な方法とは
脂肪を落とそうと極端な食事制限を行う人もいますが、それだと脂肪が減らずに筋肉や骨量が減ってしまうこともあります。
更年期のエストロゲンの減少は骨粗しょう症を引き起こしやすくするため、無理な食事制限は控えましょう(※3)。
脂肪を落とすには、バランスのよい食事、適度な運動、生活習慣の改善が欠かせません。具体的な対策を一つずつご説明します(※5)。
更年期の脂肪対策に効く食事療法とは
下記の三大栄養素のバランスを考えた食事を摂ることが大切です。
炭水化物
炭水化物を制限しすぎると、グリコーゲンの貯蔵量が減って食欲を旺盛にしてしまいます。1日の摂取エネルギーの60%ほどを炭水化物から摂取するようにするといいですよ。
たんぱく質
たんぱく質の摂取エネルギーを減らしすぎると、たんぱく質を効率よく使うことができなくなります。標準体重1kgあたり1,1〜1.5gを目安に、やや多めに摂るようにしましょう。
ビタミンそのほか
ビタミン、ミネラルは代謝を活発にするので、十分に摂るようにしましょう。脂肪は控えめにしますが、極端な制限は禁物です。
更年期の脂肪対策に効く運動療法とは
1回あたり30分以上、週に3〜6回を目安にウォーキングやサイクリングなどの有酸素運動を行うのが理想です。血圧や脈拍が上がりすぎない程度で十分ですよ。
運動を行うことで筋肉量が増え、体脂肪が燃えやすくなります。とりわけ、更年期につきやすい内臓脂肪の燃焼には運動が有効です。
更年期の脂肪対策に効く生活習慣とは
知らず知らずのうちに脂肪を蓄えてしまうのが、無意識のうちに行っている食事習慣です。
ストレスを発散するために食べてしまったり、家族の食べ残しを口にしてしまったり、人に勧められてつい食べてしまったり。思い当たる人も多いのではないでしょうか。
無意識のうちに摂取カロリーを増やしていないか、食事習慣を見直してみましょう。
更年期に増える脂肪に薬や漢方薬、サプリの効果は?
前述のとおり、更年期の体重増加対策には、生活改善をすることが一般的です。
併せて、症状に合わせて漢方薬が処方されることもあります。
更年期につきやすくなった脂肪には、「防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)」が処方されることが多いようです。水太りでぽっちゃりとした人の体質改善に適しています(※6)。
更年期の脂肪対策として販売されているサプリにも、漢方薬の生薬が配合されたものが多いようです。「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」や「大柴胡湯(さいさいことう)」などがよく配合されています。
更年期につきやすい脂肪には生活習慣の改善で対策を
女性なら、いくつになってもおしゃれを楽しみたいですよね。
更年期に差し掛かると脂肪がつきやすくなりますが、生活習慣の改善で対策することができます。
更年期は子育てがひと段落し、おしゃれを楽しむのに絶好のチャンスでもあります。バランスのよい食事と適度な運動で、自分らしいプロポーションを保ってくださいね。