「よく眠れなかったり、イライラしたり、憂うつになったりする」という日が続くと、うつ病を疑う人もいるでしょう。ですが、そのイライラや憂うつは更年期障害の症状かもしれません。そこで今回は、更年期障害でうつ病になりやすいのかどうか、そして、抑うつ感が出る原因と対策についてご説明します。
更年期障害でうつ病になりやすいの?
「眠れない」「イライラする」「憂うつになる」といった症状は更年期障害の症状のひとつで、「精神神経症状」に分類されます。
これらの精神神経症状は、精神疾患の「うつ病」とよく似ていますが、分けて考えるのが一般的です。更年期障害の診断は、うつ病などの精神疾患でないことが分かって初めて下されます。
しかし実際は、更年期障害による精神神経症状と、うつ病の見分けは難しいのが現状です。
そのため一般的に、患者さんの性格と更年期特有の社会的なストレスなどが合わさり、更年期になってからうつ状態を発症した場合は、更年期障害の症状と考えます。
一方、過去に精神障害にかかったことがあったり、これまでに社会への適応に問題があるなどした場合は精神科や心療内科での診察を受け、適切な対策が検討されます。(※1)。
更年期障害の抑うつ状態と、うつ病の症状の違いは?
更年期の女性に見られる「うつ状態」は、更年期障害を引き起こすエストロゲンという女性ホルモンが関係しているか、いないかの、大きく2つに分けられます。
過去にうつ病にかかったことがあるかどうかなどでも、症状が異なります。
エストロゲンの減少が関係しているうつ状態(※1)
エストロゲンの減少が関係しているうつ状態は、更年期障害の症状のひとつと考えることができるため、うつ病とは区別されます。
精神神経症状
発症時期 | 更年期 |
原因 | はっきりしないことが多い |
うつ状態の経験 | ないことが多い |
ホルモンの状態 | 更年期障害に見られる状態(エストロゲンの低下、卵胞刺激ホルモンとプロゲステロンの上昇) |
症状 | 抑うつ症状と、ほてりやのぼせ、発汗などが同時に見られるこ事が多い |
エストロゲンの減少が関係していないうつ状態(※1)
エストロゲンの減少が関係していないうつ状態は、「更年期障害の症状」とは言いにくいでしょう。エストロゲンが関係していないうつ状態(うつ病)には、下記の3種類があります。
うつ病
発症時期 | 更年期に多い |
原因 | 様々なストレス |
うつ状態の経験 | しばしばある |
ホルモンの状態 | 患者さんによって異なる |
症状 | 抑うつ状態が主で、症状が1日のうちで変わることが多い |
仮面うつ病
発症時期 | 更年期に多い |
原因 | 様々なストレス |
うつ状態の経験 | 原因がはっきりしない不調や、自律神経失調症などにかかった経験も |
ホルモンの状態 | 患者さんによって異なる |
症状 | 抑うつ状態が主で、症状が1日のうちで変わることが多い |
抑うつ神経症
発症時期 | 更年期の前から連続的 |
原因 | 様々なストレス |
うつ状態の経験 | 以前から神経症症状が見られることが多い |
ホルモンの状態 | 患者さんによって異なる |
症状 | 抑うつ状態が主で、症状の変化があるかははっきりしな |
更年期障害のうつ状態、対策は?
更年期障害の治療では、欠乏しているエストロゲンを薬で補充する「ホルモン補充療法」が優先的に行われます。さらに、うつ状態をはじめとした精神神経症状が見られる場合は、向精神薬も服用することが一般的です(※2)。
また、症状に合わせて漢方薬が処方されることもあり、更年期障害のうつ状態の対策には「女神散(にょしんさん)」や「柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」などがよく処方されます(※ 1,3)。
更年期障害のうつ状態の対策にはカウンセリングも有効
更年期障害による不調に、社会的なストレスなどが大きく影響している場合は、カウンセリングなどの精神療法をとることもあります(※1)。
一般的な流れは、以下のとおりです。
まず、カウンセリングを通して患者さんの不安や不満を聞き取り、症状を整理してわかりやく説明します。必要に応じて検査を行うこともあります。
そして、カウンセリングをしながら把握した患者さんの性格の傾向に合わせながら、患者さん自身が問題の焦点に気づけるように働きかけていきます。そして、日常生活のなかで、患者さんが問題を克服していけるようにサポートします(※1)。
更年期障害のうつ状態は適切な対策で改善しよう
なんだか憂うつな気分が続いたり、何をするのも億劫になってしまうと、家族や友人との関係性も気になってしまいますよね。
しかし、更年期障害のうつ状態は、適切な対策をすれば、症状が軽くなることがわかっています。
更年期は育児もひと段落する人が多く、趣味を思いっきり楽しめるようになる第二の人生のスタート地点ともいえます。
更年期障害で気分が落ち込むときは早めに婦人科や更年期外来を受診し、適切な治療を受けてくださいね。