更年期障害の治療法や対処法とは?病院へ行く目安は?

監修医師 産婦人科医 山本 範子
山本 範子 日本産科婦人科学会専門医。平成5年、日本大学医学部卒。日本大学附属病院および関連病院で産婦人科医として経験を積み、その間に日本大学総合健診センターで婦人科検診にも力を注いできました。現在は港区の日野原... 監修記事一覧へ

毎月、月経を起こしている卵巣は50歳頃には役割を終え、閉経を迎えます。卵巣機能が衰え始めるとホルモンのバランスが崩れ、体や心に変調をきたすようになります。最近では、更年期障害の症状を緩和する市販薬も販売され、テレビでCMを見かけるまでになりました。今回は、更年期障害の症状や治療法、病院に行く目安についてご説明します。

更年期障害とは?

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卵巣の機能が低下すると、女性ホルモンの「卵胞ホルモン(エストロゲン)」の分泌量が減ります(※1)。

卵胞ホルモンの分泌が減ると、卵胞ホルモンをもっとたくさん出すように脳から指令が出され、これまで以上に「卵胞刺激ホルモン」が分泌されるようになります(※1)。

しかし、卵巣は機能が低下しているため、指令を出されても卵胞ホルモンを出せなくなってきます。脳からの指令とホルモン分泌の連携がうまくいかないと、自律神経に乱れを生じさせてしまいます。

このように、ホルモンバランスの変化、自律神経の乱れから、様々な体調不良を引き起こすことを「更年期障害」といいます。

更年期障害、いつ頃から現れる?

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更年期は「卵巣機能が減退し始め、消失するまでの期間」と定義されていて、閉経前後の5年間、計10年間をさします。日本人の平均閉経年齢は50.5歳なので、45〜55歳が更年期にあたります(※1)。

更年期障害の症状は、閉経期前後から見られるようになります(※1)。

卵巣の活動性が次第に消失し、月経が永久に停止した状態を閉経といいます。その時期を「閉経期」といい、更年期の中央に閉経期が位置するとされています(※2)。

更年期障害の長さには個人差がありますが、1〜数年間続いたのち、老年期に近づくにつれて解消するとされています(※1)。

更年期障害、どんな症状が見られる?

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更年期障害の症状は、「自律神経失調症状」「精神神経症状」「そのほか」の3つに分けられます。

更年期障害の症状は、その人が置かれた環境のストレス(家庭や職場の人間関係など)や、その人自身の物事の捉え方などの性格に左右されることがあります(※1)。

そのため、更年期障害の症状には個人差が大きく、症状が変化したり、程度の重さが変わることも珍しくありません。

更年期障害の症状「自律神経失調症状」

更年期障害によってみられる「自律神経失調症状」では、ホットフラッシュと呼ばれるほてりやのぼせ、発汗、手足の冷え、動悸などが起こります。ホットフラッシュは、日本人女性によく見られる症状のひとつです(※1)。

更年期障害の症状「精神神経症状」

更年期障害によってみられる「精神神経症状」では、怒りやすくなる、憂うつになる、焦ったりイライラしたりする、不眠、頭痛、めまい、吐き気などが起こります(※1,2)。これらの症状のなかでは、頭痛がよくみられます(※1)。

更年期障害の「そのほか」の症状

そのほか、腰痛や肩こり、関節痛といった運動器症状や、疲れやすくなる人が多いとされています。そのほか、食欲不振、乾燥やかゆみといった皮膚症状、外陰部の違和感、頻尿や排尿障害、性交痛なども報告されています(※1)。

更年期障害、病院に行く目安は?

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40〜50代でなんらかの不調が現れると、更年期のためと決めつけてしまう人も多いそうです。

しかし、更年期は成人病をはじめとした、さまざまな疾患を発症しやすい時期でもあります。特に、甲状腺疾患やうつ病などは、更年期障害との見分けが大切とされています(※3)。

症状が強くて日常生活に支障をきたしたり、数年間経過しても症状が治らなかったりする場合は、原因がなんであろうと、すみやかに受診してください。

更年期は、女性のライフサイクルのなかで、大きなターニングポイントです。人生の後半を楽しく過ごしていくためにも、おかしいなと思ったら早めの受診をおすすめします。

更年期障害、治療法や対処法は?

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更年期障害の治療は、症状と合併症の有無に応じて行われます(※1)。

甲状腺やうつ病といった疾患の疑いがなければ、問診のほか、ホルモン検査や心理検査を行います(※1)。

自律神経失調症状が強い場合

「ホルモン補充療法」で治療をします。ただし、エストロゲンの投与が禁忌となる合併症がある人は、除外されます(※1)。

長くさまざまな症状が見られる場合

症状が長期に渡り、かつ、さまざまな症状が見られる場合は、「漢方療法」で治療します。エストロゲンが投与できない人には特に、この治療法が取られます(※1)。

精神神経症状が強い場合

精神神経が主な場合は、向精神薬で治療をします(※1)。

更年期障害の治療には、まずはホルモン療法がとられ、漢方療法や向精神薬はホルモン療法と併用されることが一般的です(※1)。

更年期障害の治療法「ホルモン療法」とは?

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更年期障害のホルモン療法とは、卵巣の機能低下によって分泌量が減ったエストロゲンを補う治療法です。比較的効き目が現れるのが早いといわれています。

エストロゲンには子宮内膜を厚くする作用があるので、投与できない人、慎重に投与すべき人がいます。

投与できないのは、乳がん(過去に乳がんにかかった人も含む)の人、妊娠が疑われる人、原因不明の不正性器出血がある人、子宮内膜がんの人、静脈血栓塞栓症(過去に患ったことがある人も含む)の人などです。

慎重に投与すべき人は、肥満、高齢の人、血栓症のリスクがある人(遺伝的に血液の固まりやすい体質の人、糖尿病や高脂血症で血液がドロドロ状態の人、病気やケガで長期歩行困難であったり、骨盤部や腹部の大手術後の人など)などです。

診察時に、過去の病歴を確認されるので、伝え忘れがないように気をつけましょう。

更年期障害の治療法「漢方療法」とは?

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漢方薬は、患者の病状や症状に合わせて処方されます。

漢方薬は効果が緩やかですが、副作用が少ないのがメリットです。そのため、ホルモン療法ができない人は、漢方薬での治療が主なものになります。

複数の生薬で構成されているので、さまざまな症状に効果があります。また、体力をアップさせたり、体質を改善する効果もあると考えられています。

更年期障害の治療で処方されるのは、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)や加味逍遙散(かみしょうようさん)などが一般的です(※3)。

適切に更年期障害を治療して、イキイキと暮らそう

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更年期障害による症状が見られても、生活に支障をきたすほど重い人はそれほど多くないようです。

しかし、更年期障害の症状は個人差が大きいので、人と比較するのではなく、自分の体の声に耳を傾けることが大切です。ちょっとおかしいなと思ったり、不安を強く感じたりしたら、婦人科や不定愁訴外来を受診しましょう。

更年期障害は、適切な治療や、生活習慣の改善で症状が軽くなることが多いといわれています。人生の大切なターニングポイントを快適に、元気に過ごしましょう。

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