日本で1999年に低用量ピルが解禁となってから、月経困難症の改善や月経周期のコントロールのためにピルを服用する人も多くなってきました。ピルには「中用量ピル」という種類もあり、重い月経困難症の改善、緊急避妊を目的としたアフターピル、生理の予定日をずらすために処方されることもあります。そこで今回は、あまり知られていない中用量ピルについて、副作用や服用を中止したあとの生理についてもあわせてご紹介します。
中用量ピルとは?
「ピル」とは、女性ホルモンの「卵胞ホルモン」と「黄体ホルモン」を配合した薬をいいます。そのうち、女性ホルモンが50μg(マイクログラム)含まれているものを中用量ピルと呼びます。それを超える含有量のものを高用量、それ未満のものを低用量に分類しています。
「中用量ピル」は低用量ピルより女性ホルモンが多く含まれるため、ホルモンバランスのコントロールに高い効果が期待できる反面、副作用が強く出る可能性が高くなります。
かつては、女性ホルモンが原因で起きるニキビなどの諸症状の改善のためにも中用量ピルが処方されていましたが、現在では、低用量ピルが処方されることが一般的のようです。
中用量ピルで広く知られているものに、「プラノバール」や「ソフィアA」があります。
中用量ピルにはどんな効果があるの?
ピルには女性ホルモン(卵胞ホルモンと黄体ホルモン)に似た成分が含まれていて、服用することで体内のホルモンバランスを妊娠したときと同じ状態にします。
そのため、脳は妊娠したのだと勘違いして次の排卵が起こらなくなり、子宮内膜は妊娠を維持しやすい状態になります。そして、ピルの服用をやめると数日後には生理が起きます。
この作用を利用して、中用量ピルは以下のような目的で処方されることがあります。
生理をずらす
中用量ピルには、低用量ピルより多く女性ホルモンが配合されているため、短期間の服用でホルモンバランスを変えることができます。そのため、生理予定日の調整によく使われます。
生理を遅らせるには
生理が始まる予定日の5日前から、中用量ピルの服用を開始します。ピルを服用している間は生理が来なくなるので、安心して大事な予定を楽しむことができます。服用をやめればおよそ2〜3日後には生理がきて、それ以降はこれまでと同じ生理周期に戻ります。
ただ、生理周期が不順な場合は、生理が始まる予定日の5日前が予測しにくいため、この方法は向いていないかもしれません。その場合は、次の生理を早めることで、大切な予定とかぶらないようにすることもできます。
生理を早めるには
生理を早めるために中用量ピルを服用するなら、タイミングがとても大切です。
ずらしたい生理の前の生理の開始日、遅くとも前の生理の開始から5日目までに服用を開始するのが一般的です。そして、生理を起こしたい日の3〜5日前まで服用を続けます。服用をやめると、やがて生理が起こります。
大切なイベントの日程が確定したら、なるべく早めに受診して、服用のスケジュールを医師に相談するといいでしょう。
不妊につながる病気の改善
生理ではないときに、腟や子宮、外陰部などの性器から出血することを不正出血といいます。そのうち、ホルモンバランスの乱れによる出血を「機能性出血」と呼びます。この症状が見られた際、中用量ピルを処方されることがあります(※1)。
緊急避妊
緊急避妊を目的に、中用量ピルの「プラノバール」が処方されることもあります。
性交から72時間以内に2錠、さらに12時間後に2錠服用します。この方法での避妊の失敗率は2.6%という報告があります。極めて低いものですが確実に妊娠を防げるわけではありません(※2)。
また、この方法で緊急避妊をした人の半数以上に、吐き気や嘔吐といった副作用が見られています。ほとんどが一時的な症状でじきに改善しましたが、ホルモンを大量に摂取するため、体に負担がかかります。
その影響から、中用量ピルを、緊急避妊を目的にくり返し使うことがないよう医師は指導しています(※2)。
緊急避妊を望む場合は、できるだけ早く婦人科を受診して相談するようにしましょう。
中用量ピルを手に入れるには?値段は?
中用量ピルを手に入れるには、医師の診察が必要です。体重と血圧の測定、問診などをしたのち、ピルの服用や副作用について説明を受けます。
月経困難症や、月経周期異常の治療薬として処方される場合は、保険が適用されます。しかし、生理をずらしたり、緊急避妊を目的とする場合は全額自己負担となり、診察代をあわせると3,000円程度かかることが多いようです。
また、持病や既往症によっては、中用量ピルの服用を控えたほうが良い人もいます。診察時に、これまでにかかった病歴などを正確に伝えるようにしましょう。
中用量ピルに副作用はあるの?
先述のとおり、中用量ピルは低用量ピルより女性ホルモンを多く含むため、副作用が起きる可能性も高くなります。主なものは、吐き気や嘔吐、食欲不振です(※1)。
そのほか、ごくまれに血栓症が現れることがあります。急に足が痛む、むくむ、突然の息切れがある、胸痛、激しい頭痛などの症状があらわれたら、すみやかに服用を中止し、受診してください(※1)。
副作用について不安があれば、受診時に医師に相談するようにしてください。
中用量ピルの服用後、生理はいつくるの?
中用量ピルの服用をやめると、数日程度で生理がくることが一般的です。生理がくるまでの日数には個人差がありますが、1週間経っても生理がこない場合は、婦人科を受診したほうが安心でしょう。
中用量ピルを使うときは、医師の指示に従って
結婚式や旅行など、大切なイベントに生理予定日がかぶってしまうと、とても憂うつですよね。そんなときは、医師に相談して中用量ピルを服用して、生理予定日をコントロールするのも一つの手です。
とはいえ、人工的にホルモンバランスをコントロールするので、正しい理解が欠かせません。服用のタイミングを誤ると、期待した効果を得られないこともあります。
大切なイベントのスケジュールが決まったら、早めに受診の計画を立てましょう。