子宮内膜は生理周期に伴う女性ホルモンの影響を受けて、薄くなったり、厚くなったりを繰り返します。子宮内膜の厚みには個人差がありますが、厚みと妊娠のしやすさには関係があると考えられています。そこで今回は、子宮内膜が薄い原因や、薄いと生理の量が少ないのか、そして薄いと妊娠しにくいのかなどについてご説明します。
子宮内膜とは?
子宮内膜とは、子宮の内側の表面を覆っている粘膜のことです。エストロゲンとプロゲステロンという2つの女性ホルモンの影響を受け、生理周期に伴って厚くなったり、薄くなったりと変化します。
具体的には、生理が終わると卵巣からエストロゲンが分泌されて子宮内膜は少しずつ厚くなっていき、排卵直前には厚みが1〜1.5cm程度になります。
その後、排卵が起きると、今度はエストロゲンに加えてプロゲステロンも分泌されるようになり、その作用でさらに子宮内膜が厚くなります。これは、受精卵が着床しやすくするための仕組みです。
しかし、妊娠が成立しないとエストロゲンとプロゲステロンの分泌が減って子宮内膜の一部が剥がれ落ち、血と一緒に体外に流れ出ます。これが生理です(※1)。
一方、受精が成功すると、受精卵は子宮内膜に着床します。すると子宮内膜は剥がれ落ちず、「脱落膜」と呼ばれる組織に変化し、受精卵に栄養を与えるようになります。そして最後は、分娩の際に胎盤と一緒に体の外に出されます(※2)。
子宮内膜が薄い・薄くないの基準は?
子宮内膜の薄い、薄くないという基準は明確には決まっていません。
しかし、日本産科婦人科学会の報告によれば、22歳から45歳までの女性205人を調べたところ、生理周期全体を通して、子宮内膜の厚みが平均8mm以上だった女性は全体の約90%、平均6mm未満の女性は約3%だったとしています。
つまり、子宮内膜の厚みは生理周期全体を通して平均8mm以上が一般的であると考えられるでしょう。
また、この後に説明する妊娠率との関係から、平均6mm以下は薄いといえそうです(※3)。
子宮内膜が薄い原因は?
子宮内膜が薄くなる原因は、まだはっきりとわかっていません。しかし、子宮内容除去術と呼ばれる処置を行うと、子宮内膜が薄くなる可能性があると考えられています(※3)。
子宮内容除去術とは、初期の人工妊娠中絶や流産、または胞状奇胎の際に行われる、胎児や胎盤などを取り除く手術のことです(※4)。
子宮内容除去術を受けた経験のある女性の子宮内膜が薄いという調査結果があることや、流産や子宮内膜ポリープの治療で子宮内容除去術を行わずに別の治療を行ったところ、子宮内膜が薄くならなかったという報告などから、何らかの関係があると考えられます(※3)。
無排卵などの治療で使われる「クロミッド」に含まれる「クロフェミン」という成分の副作用で、子宮内膜が薄くなってしまう場合もあります(※1)。
子宮内膜が薄いと生理の量が少ない?
生理の経血は、剥がれ落ちた子宮内膜の一部と血が混ざりあったものです。子宮内膜が薄いと剥がれ落ちる量も少ないため、子宮内膜の厚さと生理の量には関係があると考えられます。
また、避妊薬として使われる低用量ピルには、排卵を抑える作用の他に、生理のときに出る血の量を減らす効果があります。これは子宮内膜が増殖するのを抑える作用があるからです(※5)。
これらのことから、子宮内膜が薄いと生理の量が少なくなると考えられます。
子宮内膜が薄いと妊娠しにくい?妊娠率は?
子宮内膜の厚さと妊娠のしやすさは、専門家の間でも意見が分かれており、まだはっきりとした結論は出ていません。
しかし、子宮内膜が薄いと妊娠率が下がるという報告は多く、日本産科婦人科学会も、子宮内膜の厚みが7mm以上あると妊娠率が約50%、6mm未満だと0%であるといった報告もあります。また、着床に必要な子宮内膜の厚さは最低でも5〜8mmだとする研究報告もあります(※3)。
こうした結果から、妊娠が成立するためには子宮内膜の厚みがある程度以上は必要であるという考えを持っている専門家が多いようです。
子宮内膜が薄いときの治療法は?
子宮内膜が薄いときの治療方法については、まだ専門家の間でも結論が出ていません。
しかし、血流を増やす効果などがある「ペントキシフィリン」、「トコフェロールニコチン酸エステル」、「ビタミンC」などを9ヶ月間飲み続けると、子宮内膜が少し厚くなったという報告もあり、研究が進められています(※3)。
実際に子宮内膜が薄いときの治療方針は、医師によっても異なることがあるので、かかりつけの医師の指示に従ってくださいね。
子宮内膜が薄くても悲観しすぎないで
子宮内膜の厚さと妊娠のしやすさには何らかの関係がありそうですが、まだはっきりとはわかっていません。また、妊娠のしやすさは子宮内膜の厚さだけで決まるものでもありません。
そのため、もし子宮内膜が薄かったとしても、悲観しすぎる必要はありませんよ。
子宮内膜の厚さにこだわりすぎず、栄養バランスの取れた食事やストレスを溜めない生活を意識して、いつ妊娠してもいいように体を整えておきたいですね。