子供ができない原因が男性側にある「男性不妊」に悩まされている夫婦は多いと思います。男性不妊の治療にはホルモン療法や手術、人工授精などがありますが、どれも大変そうですよね。もう少し手軽に、普段の生活の中で取り組める改善法はないのでしょうか?そこで今回は、男性不妊に悩まされる夫婦やカップルに向けて、男性不妊が食事で改善するのか、おすすめの食べ物は何かを説明します。
男性不妊とは?
子供を作ることができる年齢の男女が妊娠を望んでいて、避妊せずに性交渉を1年間しても妊娠しないことを、一般的に「不妊」といいます。そしてその原因が男性側にある場合を「男性不妊」と呼びます(※1)。
「不妊」というと女性の問題のように考える男性もいるかもしれませんが、日本産科婦人科学会によれば、男性にも不妊の原因があるケースは全体の約50%とされています(※2)。男性に不妊の原因があるのは、決して珍しいことではないのです。
男性不妊の原因は?
男性不妊の原因は、大きく分けると以下の3つになります。
● 精子を作る機能に問題がある(造精機能障害)
● 精子の通り道に問題がある(精路通過障害)
● 性交渉がうまくできない(性機能障害)
これらのうち、とくに多いのが精子を作る機能の問題で、男性不妊の原因の約80%を占めています(※2)。
男性不妊になりやすいのはどんな人?
男性不妊は病気やその治療によってリスクが高まります。
例えば、小さい頃にヘルニアや停留睾丸の手術などを受けていると、精子を運ぶ管が詰まってしまったり、精子の数が減ってしまったりすることがあります。また、おたふく風邪が原因の高熱や睾丸炎で精子を作る力が低下してしまうこともあります。
一方、大人になってから糖尿病になった人も要注意です。糖尿病は軽度でも勃起障害や射精障害といった性機能障害を引き起こしますが、病状が進行すると精子を作る機能そのものが低下してくるからです(※3)。
ただし、はっきりとした原因がわからずに男性不妊になるケースも数多くあります。
男性不妊の治療法は?
男性不妊の治療には、原因に応じて生活習慣の改善から人工授精まで、様々な治療法があり、症状や夫婦の状況に応じて使い分けられます。以下に代表的な治療法を紹介します(※3)。
● 禁煙をする
● アルコールの摂取を控える
● 運動やダイエットをする
● 十分な睡眠を取る
● 漢方薬、ビタミン剤、ホルモン薬を使う
● 精路再建手術や精索静脈瘤の手術をする
また性機能障害の場合には、射精障害を克服するためのカウンセリングや、バイアグラなどのPDE-5阻害薬を使用して治療を行います。
男性不妊に食事が効くの?必要な栄養素は?
生活習慣を整えることは、男性不妊にも好影響を与えることがあります。ただし精液に含まれる精子が全くない状態(無精子症)などの場合には、食事などで改善する効果はほぼ期待できません。
男性不妊の対策の1つとして、バランスの取れた食事を摂ることが挙げられます。とくに以下の栄養素の摂取が勧められています(※4,5)。
亜鉛
亜鉛は細胞の新生を活発にし、骨や皮膚の発育を促し、免疫力を高める作用のある成分です。生殖機能とも関係が深く、精子を作るために必要です。
成人男性の1日の摂取基準は12mgとされています。
ビタミンE
ビタミンEは抗酸化物質の1つで、脂質の酸化を抑え、細胞が老化するのを防ぐ働きをしています。また、脳の一部に働きかけて男性ホルモンや女性ホルモンの分泌を促すため、精子の数が増えたり、動きを活性化させるなどの効果があるといわれています。
成人男性の1日の摂取基準は7mgとされています。
ビタミンC
ビタミンCも抗酸化物質の1つであり、細胞同士をつなぐコラーゲンというタンパク質に不可欠な栄養素なので皮膚や骨、血管を丈夫にする働きがあります。ストレスにも関係しており、ビタミンCが不足すると、ストレスに弱くなったり、心身の不調をきたすことが知られています。
成人男性の1日の摂取基準は100mgとされています。
男性不妊の食事でおすすめの食べ物は?
以下に一般的に亜鉛、ビタミンE、ビタミンCが豊富だとされている食べ物を紹介します。なお、各成分の含有量はおおよその数値です(※5)。
亜鉛が豊富な食べ物
魚介類ではカキが豊富で、100g中13mgの亜鉛を含んでいます。肉類では牛肩が100g中5mg、豚レバーが100g中7mgの亜鉛を含んでいます。また、レンズ豆やそら豆も比較的多く含んでいます。
ビタミンEが豊富な食べ物
ビタミンEが多いのは乾燥させたアーモンドで、100gあたり31mg含まれています。アンコウの肝も多く、100gあたりビタミンEが14mg含まれています。そのほかウナギの蒲焼やかぼちゃもビタミンEが豊富です。
ビタミンCが豊富な食べ物
ビタミンCが多く含まれているのは果物のアセロラです。アセロラの10%飲料190g中にビタミンCが228mgも含まれています。カキは100g中に70mgのビタミンCが含まれています。野菜では、赤ピーマンや黄ピーマンが多く、それぞれ100g中に171mgと151mgのビタミンCを含んでいます。
男性不妊は食事などの生活習慣を見直そう
生活習慣病を持っている男性は持っていない男性に比べて精巣の働きが悪くなり、男性不妊になりやすいとされています。その改善にはバランスの取れた食事が効果的な場合もあります。
しかし食事だけで男性不妊を解決できるとは思わないでください。規則正しい十分な睡眠や軽めの運動、禁煙やアルコールの摂取を控えるといったライフスタイルに変えることも大切ですし、それでも改善できないこともあることは理解しておいてください(※4)。
不妊はどちらか一方だけの問題ではなく、女性と男性両者が向き合うべき問題です。パートナーの男性の協力を得ながら、2人で問題に向き合っていけるといいですね。