不妊の定義は、「子どもを望む健康的なカップルが、一般的に1年間、避妊をせずに性交渉を続けても妊娠できない状態」とされており、不妊の原因の男女比はほぼ半々といわれています(※1)。
男性側に原因があった場合、具体的にどのような治療を行うのでしょうか。今回は、男性不妊の原因は治療方法、費用についてご紹介します。
男性不妊で考えられる原因は?
男性不妊の原因は、主に以下の3つに分けられます。
精子をうまく作れない「造精機能障害」
精子を作る機能がうまく働かず、十分な精子が作られない状態を「造精機能障害」といいます。これは、男性不妊の原因の約8〜9割を占めています(※2)。
造精機能障害となる原因は、主に以下のようなものがあります。
- 陰嚢の周りの血管が拡張して精巣の温度があがる「精索静脈瘤」
- おたふく風邪のウイルスによって起こる「耳下腺炎精巣炎」
- 精巣が陰嚢内に降りてこない「停留精巣」
- 染色体異常、遺伝子異常
- 脳下垂体機能低下によるホルモンの異常
精子がうまく通過できない「精路通過障害」
精子を運ぶ精管が部分的に欠けていたり、詰まっていたり、狭くなっていたりすると、精子がうまく通過することができません。この状態を「精路通過障害」といいます。
射精された精液中に一つも精子がない「無精子症」、精子が少ない「乏精子症」などがあてはまります。
性交渉が困難な「性機能障害」
身体的・精神的な理由で「勃起しない」「射精しない」「性欲がわかない」などの状態となり、性交渉ができないことを「性機能障害」といいます。
正常に勃起しない「ED」や、精液が逆流してしまう「逆行性射精」、早漏、遅漏などがあてはまります。
また、検査で不妊の原因が特定できないことも多くあります。
男性不妊の治療方法は?
不妊の状態が疑われる場合、まずは病院で問診や精液検査を受け、その結果に応じて医師と相談し、最適な治療法を選択します。
原因別に治療法を見ていきましょう(※3)。
精子をうまく作れない場合の治療法
精子を作る機能がうまく働かない「造精機能障害」の治療には、二通りの方法があります。
1. 精液の状態を改善する
精巣や周りの静脈にこぶができる「精索静脈瘤」の手術や、薬物療法によって、精液が作られない原因そのものに対処することで、精液の状態を改善します。
2. 今ある精子を使って妊娠に結びつける
自然妊娠が困難な場合や射精障害がある場合は、培養液で調整した精子を人工的に女性の子宮内に注入する「人工授精」を行い、妊娠を目指します。
ただし、精液の状態によっては、精子と卵子を採取して授精させる「体外受精・顕微授精」が選択されます。
精子がうまく通過できない場合の治療法
精子が通り道をうまく通過できない「精路通過障害」では、多くの場合、精液中や精巣内にある精子を用いて、顕微授精が行われます。
性交渉がうまくできばい場合の治療法
精神的要因
ストレスやプレッシャーなど、精神的な原因で勃起障害(ED)や射精障害が起きている場合、カウンセリング療法など心のケアを行います。
身体的要因
EDの場合には、バイアグラなどの治療薬で勃起を助ける方法もあります。また、不適切なマスターベーションの方法に慣れてしまったせいで、性交時に射精ができない場合は、マスターベーションの方法の矯正を試みたり、スポイト法の指導を行ったりすることもあります。
高血圧、動脈硬化、腎臓病など身体的な理由でEDや射精障害となっている場合は、服用を続けている薬剤、喫煙やアルコール摂取など原因と考えられるものを可能な範囲で変更・中止して、症状の改善を目指します。
原因不明の場合の治療法
検査で原因不明だった場合、まずはタイミング法によって妊娠を目指します。
上記の治療を受けても妊娠の兆候がみられない場合は、人工授精や体外受精、顕微受精へとステップアップしていきます。
男性不妊の治療にかかる費用は?
男性不妊の原因に対する治療には、保険が適用されるものとされないものがあります。
【保険が適用されるもの】
精索静脈瘤高位結紮術(精索静脈瘤の手術):30〜40万円程度(自己負担額は9〜12万円程度)
【保険が適用されないもの】
精索静脈瘤低位結紮術(精索静脈瘤の手術):20〜45万円程度
薬剤での治療の場合は、数千円程度かかります。
次のステップとしてタイミング法や人工授精、体外受精、顕微授精に進む場合の治療費については、以下の記事を参考にしてください。
不妊治療は焦らずパートナーと一緒に
今回ご紹介したとおり、男性不妊の原因はさまざまで、原因によって効果的な治療方法が異なります。
なかなか赤ちゃんを授かれないと焦ってしまうこともあるかもしれませんが、治療法や費用も含め、夫婦で相談したり情報を集めたりして、納得のいく選択ができるといいですね。