インフルエンザは、冬にかかることが多い感染症です。しかし冬は、似たような他のウイルスや細菌による感染症にかかる可能性もあり、何の病気かわかりにくいこともあります。そこで今回は、インフルエンザかどうかを判定するための検査方法はどんなものか、またどんな診断基準なのかについて、ご紹介します。
インフルエンザの検査はなぜ必要なの?
インフルエンザは、インフルエンザウイルスが感染して起こる病気です。
一番の特徴は急激に発熱することで、他にも全身のだるさや筋肉痛、頭痛、吐き気、下痢などを起こすこともあります。また、通常の風邪のように鼻水や咳、喉の痛みが見られることもあります。
インフルエンザは、発症してから48時間以内であれば、インフルエンザ治療薬を使用することにより、発熱の期間を短縮し、ウイルスの排出をある程度抑制する効果が期待できます(※1)。
そのため、症状が出て2日以内のタイミングであれば、インフルエンザかどうかを検査で明らかにし、治療薬を投与することで、症状を早く抑えることが可能になります。
特に、赤ちゃんや受験生、高齢者など、インフルエンザの症状をできるだけ抑えたい人にとっては、検査を受けて、早めに薬を服用することが大切です。
インフルエンザの検査方法は?病院以外でも検査できるの?
現在、病院で主に採用されているインフルエンザの検査方法は、「迅速抗原検出キット」といわれる、シンプルかつ短時間で判定可能な検査キットを使った方法です。
迅速抗原検出キットには、以下のようなメリットがあります(※1)。
● 最短10分以内で検査できる
● 健康保険が適用される
● インフルエンザウイルスがA型かB型かを特定できる
ただしこのキットは一般向けに市販されているものではないので、病院で検査を受ける必要があります。
また、一定量以上のウイルスがなければ判定できないため、ウイルスが少ない発症前や、検査時にウイルスの採取が不十分な場合は、インフルエンザウイルスに感染していても陽性にならないことがあります。
インフルエンザの検査方法は鼻で?痛いの?
迅速抗原検出キットは、12社から、18製品が販売されています。使い方や判定時間はさまざまですが、検体の採取方法には以下のものがあります(※1)。
● 鼻腔ぬぐい液:鼻のなかに採取用の綿棒を挿入し、奥まで綿棒が達したら、粘液をこすりとる
● 咽頭ぬぐい液:口を大きく開け、採取用の綿棒を扁桃腺に強くこすって粘液を採取する
● 鼻腔吸引液:吸引カテーテルを用いて鼻の奥から鼻水を吸引し、綿棒でその一部を採取する
● 鼻かみ液:専用のシートで鼻をかみ、そのシートに綿棒をこすりつけて粘液を採取する
採取の際、鼻腔ぬぐい液と鼻腔吸引液は、鼻の奥まで綿棒やカテーテルをいれるため、鼻の奥が痛くなることがあります。
一方鼻かみ液は、日常生活でおこなう鼻かみと同じやり方で検体を採取できるため、痛みはありません。ただし、鼻をかめない小さな子供は、使うことができません。
正確性は、鼻腔ぬぐい液が約80~90%、鼻腔吸引液が約90~95%、鼻かみ液は約80~85%、咽頭ぬぐい液は約60~80%です(※1)。
インフルエンザ検査での診断基準は?
インフルエンザかどうかの診断は、先に説明した方法で得られた検体を、インフルエンザの抗原にだけ反応する「マウスモノクローナル抗体」が塗られたテスターに付着させることで行います。
キットの種類にもよりますが、15分前後でテスターの色が変われば陽性、変わらなければ陰性となります。
また、色の変化の程度などにより、インフルエンザA型かB型かを判定することもできます。
インフルエンザの検査方法はほかにもある?
迅速抗原検出キット以外にも、インフルエンザの検査方法はいくつかありますが、検査に時間がかかるため、初期の治療に対して使われることはほとんどありません。
しかし、より細かい検査ができるため、研究や調査、インフルエンザ脳症など重症化したときの診断のためなどに使われています。
具体的には、以下のような検査方法があります(※1)。
ウイルス検出検査
ウイルス検出検査には、「real time-PCR」「血液での酸素免疫法」などの方法があります。
これらの検査は、判定に1~3日程度の時間が必要です。
また、微量のウイルスも検出できる「ウイルス分離」という方法もあるものの、判定までに2~3日以上のの時間がかかるので、実用的ではありません。
迅速抗原検出キットも、このウイルス検出検査に含まれます。
血清抗体検査
血液中に含まれる抗体の量を測定し、インフルエンザウイルスに感染しているかどうかを検査します。
インフルエンザA型、B型だけでなく、亜型(派生型)の特定ができるものの、こちらも判定まで時間を要します。
インフルエンザの検査方法はシンプルです
前述したとおり、インフルエンザは発症してすぐに治療薬を使用することにより、発熱の期間を短くすることができます。
ただし、発症してから6時間以上経過しないと検査に十分なウイルス量がでないため、検査の精度は下がる傾向があります。
インフルエンザは治療薬を使わなくても、多くの場合は自然に治癒する病気です。
しかし発熱のつらさから少しでも早く逃れたい人や、インフルエンザが重症化しやすい赤ちゃんは、インフルエンザかどうかを検査し、早めに治療薬を服用することが大切です。
検査の方法によっては鼻が痛いこともありますが、あくまで一時的な痛みですし、人によってはほとんど痛みを感じないこともあります。検査に不安があれば、検査を受ける前に医師に相談してみてくださいね。