夫婦が財産を所有していた場合、いずれ子供に相続されるというのは一般的に知られていますよね。しかし、夫婦が離婚をした場合はどうなるのでしょうか。「離婚して親権を得ていなければ、子供に相続権はない」と思っている人もいるかもしれませんが、実はそうではありません。今回は、離婚したときの子供の相続権について、権利の有無や、放棄したい・相続したくないというケース、再婚時のケースを含めてご説明します。
離婚したら子供の相続権はどうなるの?
相続権は、離婚すると夫婦間の権利は消滅しますが、子供の権利は継続されます。離婚をしても子供との親子関係が消滅するわけではないため、親権があってもなくても関係ありません。
そもそも相続権とは、婚姻時に夫婦それぞれが所有している財産を、配偶者やその子供が得られる権利のことをいいます。配偶者や親が亡くなったときに生じるもので、不動産や預貯金といった財産が対象ですが、実は借金も相続権に含まれています。
つまり、配偶者のどちらかが家族に知らせずに借金をしていた場合でも、借金をしていた人が亡くなったときに、その配偶者や子供に支払い義務が生じます。
そのため、離婚後に親権がない親と子がまったく会わず、ほとんど縁が切れてしまったような状況で、数十年後に突然、子供に財産や借金に関する相続の話がくるというケースもあるようです。
離婚後の子供の相続権は放棄もできる?
離婚後の子供の相続権は、放棄することも可能です。
たとえ財産であっても、親族との金銭的なトラブルを避けたいという場合、または先述のように、借金を負いたくないという場合には、放棄することがあるようです。
借金が理由という場合は、財産の額と借金の額を比べて、借金の額の方が大きければ放棄する判断をすることが多いようです。
離婚後に子供の相続権を放棄するときは、口約束では効力が生じません。家庭裁判所に「相続放棄申述書」とともに、戸籍謄本などの必要書類を提出し、手続きを行うことで放棄することができます。
相続放棄の手続きは、相続の開始(相続する側が亡くなったとき)から、原則3ヶ月以内に行う必要があります。
離婚後に子供に財産を相続したくないときは?
離婚後の親が、何らかの理由で子供に財産を相続したくないというケースもあります。
この場合は、遺言を残すという方法がとられます。遺言書に「子供に財産を相続しない」という内容を記載していれば、子供に相続権があったとしても、遺言が優先されます。
遺言は生前に本人が作成するものなので、相続したくないと考えている場合、あらかじめ準備しておく必要があります。
しかし、遺言書に「財産を相続しない」と書いていても、法律で定められた「遺留分」という、最低限の遺産の取り分があります。それを請求された場合は、財産の一部を渡すことになります。
遺留分も渡したくないというケースもあるかもしれませんが、それが認められることはとてもまれで、例外的な方法が必要となることが多いため、弁護士などの専門家に相談してみましょう。
離婚後の子供の相続権は、再婚するとどうなる?
離婚後に、子供をつれて再婚をしたとしても、実の親に対する子供の相続権は、変わらず継続されます。
ただし再婚相手から子供への相続権は、婚姻届を出しただけでは生じません。再婚後、子供に再婚相手の相続権を持たせたい場合は、子供と再婚相手を法律上の親子関係とする「養子縁組」をする必要があります。
養子縁組は、実の親との関係を続けたまま、新しい配偶者の子供になる「普通養子縁組」と、実の親との関係を絶ち、実の親に限りなく近い形で親子関係を結ぶ「特別養子縁組」があります。
どちらの養子縁組をしても、実の親の相続権は消滅しません。つまり養子縁組をした時点で、子供は実の親と再婚相手の親、両方の相続権を得ることになります。
離婚後の相続について事前に確認しよう
子供がいる場合の離婚には、離婚前に話し合っておきたい様々な決めごとがあります。
そのなかで抜けてしまいがちなのが「相続権」についてです。直近で問題が起こることが少ないため、話し合いがされないまま離婚に至るケースも少なくありません。
しかし、後になって話が浮上したときには、すでに話し合いたい相手がいないということは珍しくありません。人間関係や金銭面においてトラブルを招きかねないことなので、離婚の際は忘れずに話し合っておきましょう。