出生前検査、受ける?受けない?専門の相談窓口をご紹介!

初めての妊娠や、2人目、3人目の妊娠、待ち望んでいた妊娠、予期せぬ妊娠など、妊娠には色々な背景やドラマがあります。

早く赤ちゃんに会いたい、会うのが怖い、おなかの中の赤ちゃんの健康はどうなっているだろう?と考えることもあると思います。生まれるまで楽しみに待つこともあるでしょうし、不安でいっぱいで、もっと詳しく赤ちゃんのことを知りたいと思うこともあるかもしれません。

今回は、おなかの中の赤ちゃんについて「知る」ための手段の一つである「出生前検査」や、その相談窓口についてご紹介します。

執筆:渡辺佐智子(助産師・認定心理士 親子の未来を支える会(Fab)胎児ホットライン相談員)

出生前検査とは?

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赤ちゃんは、受精卵の時からある特徴をもって生まれたり、おなかの中にいるときに病気になったりすることがあります。生まれる前の赤ちゃんの健康状態や、赤ちゃんの育つ環境(母体)を知る検査のことを「出生前検査」と言います。

妊娠中には様々な出生前検査があり、妊婦健診の流れで誰もが自然に受けるエコー検査や血液検査、心拍測定などもそのひとつです。その他に、受けること、受けないことを自分たちで考えて決めるものもあります。

出生前検査で、おなかの赤ちゃんに異常がなければ、安心して妊婦生活を送ることになりますし、赤ちゃんに異常が見つかれば、妊娠中や生後適切な対応ができるように準備することができます。

出生前検査について、皆さんはどなたに相談されますか?パートナー?ご両親?かかりつけの産婦人科医や助産師、看護師でしょうか。

出生前検査のいろいろ

超音波検査 機械 医師
心臓病や口唇口蓋裂など、「形」で診断できるものはエコー検査でわかります。

胎児の形を詳細に確認する検査は、「胎児精密超音波検査」と言われます。また、胎児の人間ドックという意味で「胎児ドック」とも呼ばれます。いずれも、妊婦健診で行う通常エコー検査とは分けて考えられています。

ダウン症候群など、染色体情報で診断するものは、絨毛/羊水検査でわかります。絨毛/羊水検査は、おなかに針をさす検査のため、わずかながら流産の危険があります。

そのため、おなかに針を刺す必要があるかどうかを判断するために、血液検査やエコー検査を用いた「非確定検査」があります。最近話題になることがあるNIPT(新型出生前検査)もその一つです。

NIPT(新型出生前検査)

NIPTでは、妊婦さんの血液中にある、胎盤由来のDNAを調べることで、赤ちゃんに13、18、21トリソミーの染色体異常がありそうかがわかります。妊婦さんの血液検査だけで実施可能という安全さと簡便さが故に、産婦人科以外の医療機関での実施も増えています。

NIPTの適切な実施のための施設基準を日本医学会が定めています。認可施設の場合、認定遺伝カウンセラー®️や認定遺伝看護師等に、検査の目的や限界についての説明を受けてから、検査を受けるかどうかを決めることができます。

認可外施設では、一定の基準が定められていないため、検査前後に十分な説明がないまま検査を受けることもあります。施設によっては、全染色体の数的異常、微小欠失、重複なども検査対象ですが、それらの精度や臨床的な意義については説明されないこともあります。

以前は、認可施設では妊婦さんの年齢制限等があり、35歳未満だと認可外施設を受診するしかありませんでしたが、2022年7月より年齢制限が事実上なくなり、どなたも、認可施設でのカウンセリングを受けられる体制になってきています。

母体血清マーカー検査

NIPT以外の非確定検査として、母体血清マーカー検査もあります。妊娠11週から13週の間に、エコー検査と組み合わせるものを「コンバインドテスト」といい、妊娠15週以降に血液検査のみで行うものを「クアトロテスト®︎」といいます。

精度としてはコンバインドテストの方が高いのですが、胎児精密超音波検査と組み合わせるため、受けられる施設は限られます。

NIPT、コンバインドテスト、クアトロテスト®️はいずれも非確定検査の為、その後、確定検査を受けるかどうかを考える必要があります。確定された後の選択をどうするかなども含め、自分の気持ちを確認しながら、家族でよく話し合うことが重要です。

「赤ちゃんの健康状態を知りたい・・」と思ったら、まずは相談窓口へ

カウンセリング 安心 手
おなかの赤ちゃんとの向き合い方は、十人十色です。

生まれる前に赤ちゃんのことを知ることで、安心することも不安になることもあるため、何をどこまで知りたいかを、ご家族のなかで整理することは重要です。

ただし、そもそも生まれつきの病気や症候群にはどんなものがあるのか、それをどの検査でいつ調べることができるのかなど、検査を受けるかどうかを考える時に必要な情報はとても多いため、専門の相談窓口での相談をおすすめします。

遺伝カウンセリング

医療機関で提供される遺伝カウンセリングでは、検査の確からしさや危険性などを踏まえながら、それぞれの家族が選択をする時に必要な医療情報を聞き、相談することができます。

相談される方の気持ちに寄り添い、相談者が欲しい情報を教えてくれます。医療機関で実施されるため、おなかの赤ちゃんの状況や、カップルの遺伝背景などを整理しながら、適切な検査について一緒に考えることができます。

患者家族会

日本ダウン症協会などの家族会には、それぞれの症候群についてのあらゆる経験や知識が蓄積されています。

家族同士の交流の場や、情報冊子、動画コンテンツなどは、妊娠中から情報を得る場の一つになります。一方で、妊娠を継続するか迷っている時に相談することを躊躇うご家族もいらっしゃいます。

胎児ホットライン

医療機関でも患者家族会でもない、第三の中立的相談窓口として、2021年に開設された相談窓口です。出生前検査についての相談や、出産後の苦悩などについて、相談することができます。

相談員は、出生前検査やそれにまつわる葛藤などについての知識や経験が豊富なスタッフで構成されています。相談員のバックグラウンドは、医師、助産師、遺伝専門看護師、小児専門看護師、認定心理士など様々です。基本的にはオンライン相談で、無料で利用できます。

検査を受けるかどうか、検査を受けて陽性となった方が妊娠を継続するかどうか、妊娠継続を決めた後の情報収集や不安な気持ちなどが寄せられます。

https://fetalhotline.fab-support.org/

ゆりかご

オンライン掲示板「ゆりかご」では、病気や障がいと関わるご家族同士が繋がって会話をすることができます。

出産子育てをしている家族だけでなく、妊娠中断を決められた方の話を聞いたり、出生前検査を受けるか悩んでいる方同士が繋がったりすることができるコミュニティです。

利用登録は無料ですが、誰かが必ず回答するという仕組みではないため、具体的な相談がある場合や差し迫って対話をしたいときは胎児ホットラインの方が適切な窓口となります。

https://yurikago.fab-support.com/

妊娠中の支援を積極的に行っている団体

親子 ハートマーク

親子の未来を支える会

「親子の未来を支える会」は、病院での情報提供や相談の前後に独りで悩んでしまう妊婦さんや、思いがけない検査結果に悩んでしまう家族を支えるための団体です。

医療者・患者本人や家族・エンジニア・弁護士などが集まり、2014年に任意団体として発足し、2015年にNPO法人化しました。

●ブックレット
たくさんのご家族と関わる中で、多くのご家族が共通して悩むこと・知りたいことがあることがわかり、悩んだときに助けになるブックレットを作成しました。

「生まれる前の赤ちゃんを知るということ」通称「たね編」は、妊娠そのものへの向き合い方や、出生前検査への考え方について書かれています。

「月編」は妊娠の継続を考えている方へ、「星編」は妊娠の継続をしないことを考えている方向けです。中立的な支援を行う立場ですので、1冊で2編どちらも読めるような形になっています。

「For Fathers」、通称「山編」は、赤ちゃんのお父さんのためのブックレットです。同じような経験をされたお父さん達の声をまとめています。

おなかの赤ちゃんのきょうだいとなる子どもは、どんなことを喜び、願い、どんなことで心をいためるのでしょうか。

大人が想像している以上に、たくさんのことを考えている子どもたちに寄り添うための情報を「きょうだいとなる子どもたちとともに」、通称「花編」に集めました。

「孫のいのちを想うこと」、通称「風編」は、親になる娘・息子夫婦への寄り添い方についてまとめてあります。

ひとりで抱え込まず、まずは相談を

男女 協力 パートナー カップル 夫婦
妊娠中には、いろいろなことが不安になるものです。妊婦健診でこんなことを聞いていいのかな?と思って相談できずにいたり、かかりつけ医で相談したら「なんでそんな検査を受けるの」と怒られたりすることもあるようでります。

妊娠・出産・子育てに関する悩み、特に赤ちゃんの病気などについては誰にも相談できずに抱え込んでしまうことがあります。周りの家族も、どう声かけをしたらいいのかわからずにいることもあります。

誰にもわかってもらえない、と思ったときこそ、わかってくれる相談窓口を頼ってみてくださいね。

執筆:渡辺佐智子
助産師・認定心理士
親子の未来を支える会(Fab)胎児ホットライン相談員
千葉大学医学部付属助産婦学校を卒業後、公立総合病院やクリニックに勤務。一時期子育てに専念。保健センターにて新生児訪問指導員に従事しながら出張専門で開業。地域の両親学級の講師、クリニックの産褥訪問や助産師外来等を行っています。毎日ママとベビちゃんから元気をもらっています。

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