川崎病は治る?治療期間や入院期間は?完治までどのくらい?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

小さい子供が発症する注意すべき病気の一つに「川崎病」があります。原因不明の病気なので、子供が発症すると不安になると思いますが、治療法は確立されています。今回は、川崎病は治る病気なのか、治療期間や入院期間、完治までの期間はどれくらいになるのかなどをご説明します。

川崎病とは?

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川崎病とは、正式には「急性熱性皮膚粘膜リンパ腺症候群」といい、全身の血管に炎症が起こる病気です。4歳以下の乳幼児を中心に発症し、特に1歳前後の赤ちゃんに多く見られます。

発症の原因ははっきりわかっていませんが、感染症によって過剰な免疫反応が起こり、炎症が現れているのではないかと考えられています。ウイルスや細菌に感染すると、体を守るために免疫反応が起こるのが正常ですが、その反応が大きすぎると組織が破壊されてしまうのです。

川崎病には特徴的な症状がいくつかあります。急性期には、38度以上の高熱が5日以上続き、全身の赤い発疹や目の充血、唇の腫れや手足にむくみが現れます。症状の程度には個人差があるため、診断が難しいこともあります。

また、血管の炎症が引き金になって、後遺症として「冠動脈瘤」ができ、場合によっては心筋梗塞を起こして死に至る危険性もあるので、注意が必要です(※1)。

川崎病は治る?薬で治療できる?

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川崎病は、症状や回復にかかる期間は個人差があるものの、発熱や発疹などの急性期症状は治ります。ただし、急性期の症状が治っても、200人に1人の割合で後遺症として冠動脈瘤を発症します(※1)。

川崎病は、血管に炎症が起きるというメカニズムはわかっていますが、その直接的な原因がわかっていないため、根本的な治療法はありません。

川崎病の治療の最大の目的は冠動脈瘤を発症させないことです。急性期の炎症が強かったり、発熱が長引いたりすると、冠動脈瘤ができやすくなるため、少しでも早く血管の炎症を抑える治療を行います。

血管の炎症を鎮めるためには、できるだけ早く「免疫グロブリン」と呼ばれる血液製剤を投与する必要があるため、川崎病と診断されたら、原則として入院治療が行われます。

また、急性期は、血液を固まりにくくさせる経口薬の「アスピリン」を服用することで、血栓や冠動脈瘤を予防します。後述するように、急性期が過ぎた後も、冠動脈瘤を予防するために投薬を続けたり、経過観察を行います。

なお、大きな冠動脈瘤ができてしまった場合には、精密検査を行い、冠動脈が狭くなってしまっている場合にはバイパス手術を行うこともあります。

川崎病の入院期間はどれくらい?

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川崎病の疑いがあるときは、まず病院で検査をして、肝機能・炎症反応を示す数値や白血球の数などを調べます。そして、心臓の超音波検査(心エコー検査)ができる病院に入院することになります。

冠動脈瘤は、川崎病の発症後1〜2週間してから大きくなり始めます(※1)。その後、数週間でピークになるため、子供の様子を見るため約2~3週間の入院が必要になることが多いようです。

川崎病の治療期間はどれくらい?

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川崎病の急性期の症状は、通常1〜2週間で回復します。ただし、症状が強い場合は治るまでに1ヶ月以上かかることもあります(※1)。

急性期を過ぎて退院したあとの検査と経過観察の期間に関しては、病院によって異なることがあります。日本川崎病研究会運営委員会の「川崎病の管理基準」により、次の方針が示されています(※2,3)。

冠動脈瘤がない場合

症状が治まったあとも2~3ヶ月間はアスピリン投与を続けます。発症から1ヶ月後に心エコー検査で冠動脈瘤の変化を確認し、それ以降は年に1回、心エコー検査を受けながら、5年間経過観察を行います。問題がないと医師が判断すれば、薬の服用を中止します。

冠動脈瘤ができた場合

冠動脈瘤の大きさにもよりますが、瘤が小さくなったことを確認できるまでは、血栓を防ぐために投薬を続けます。

約1ヶ月ごとに、投薬のタイミングで小児循環器医による経過観察を行い、心電図と心エコー検査を受けます。冠動脈瘤が大きい場合には、冠動脈造影(カテーテル検査)を行うこともあります。

川崎病が治っても、心筋梗塞に注意

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川崎病にかかったあと、冠動脈瘤がある場合に一番気をつけたい合併症は、瘤の中に血栓ができて生じる心筋梗塞です。心筋梗塞を早期発見するために、退院後も油断せず、定期的な検査をすることが重要です(※1)。

狭い範囲の心筋梗塞であれば、大きな心配はいりませんが、広い範囲で障害が起きると心機能が低下し、命の危険もある重大な病気です。何の前ぶれもなく、突然起こることがほとんどなので、川崎病の治療が終わって退院しても、定期検診や経過観察を必ず受けるようにしましょう。

川崎病は治った後も子供の様子に気を配ろう

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近年では、川崎病の治療法が進歩していることもあり、冠動脈瘤になる可能性は低くなっています。冠動脈瘤ができていなければ、治療後の経過は良好で日常生活には特別な制限がないことがほとんどです。

ただし、治療後に心筋梗塞を起こしたり、川崎病を再発したりする可能性もゼロではないので、しばらくの間は子供の様子をよく見るようにしてあげてください。医師から問題ないと診断されるまでは定期的な検査を受けましょう。

川崎病は早く治療を始めることが大切です。高熱が何日も続いたり、舌に赤いブツブツができたりと、子供の様子が少しでもおかしいようなときは、迷わず小児科を受診してくださいね。

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