重度のアレルギー反応として、「アナフィラキシーショック」という名前を聞いたことがある人は多いと思います。子供にアレルギー症状があると、命にもかかわるアナフィラキシーが起こらないかと心配になることも。もしアナフィラキシーが起きたら、どう対応すれば良いのでしょうか。今回は、アナフィラキシーの原因や症状、対応方法、治療法をご説明します。
アナフィラキシーとは?
「アナフィラキシー」とは、全身に急性のアレルギー反応が現れることを指します。また、アナフィラキシーによって血圧が急低下して意識障害などのショック状態を起こすことを「アナフィラキシーショック」といいます(※1)。
何らかのアレルギー体質をもっている子供が原因物質(アレルゲン)に触れることで発症します。通常のアレルギー反応とは違って命に関わることもある危険な状態で、日本では2013年には77人の死者が出ています(※2)。
アナフィラキシーの原因は?
アナフィラキシーを引き起こすアレルゲンとして、代表的なものに以下4つがあります。食べ物が原因となることがもっとも多く、続いてハチといった昆虫、薬物となります。
1. 食べ物
アレルゲンとなる特定の食べ物を摂取することで、アナフィラキシーを発症します。乳幼児に多く見られるのが、鶏卵・牛乳・小麦、幼児期以降の子供の場合はそば・ピーナッツ・甲殻類などです(※3)。
これらの食べ物を摂取しただけで起こる通常のアナフィラキシーと、小麦・甲殻類を摂取した後に激しい運動をすることで起こる食物依存性運動誘発アナフィラキシーの2通りがあります。
2. 虫刺され(ハチやアリなど)
刺されるとアナフィラキシーを引き起こす虫として、ハチがよく知られています。中でも、スズメバチ、アシナガバチ、ミツバチには注意が必要です(※3)。
ハチ毒に対するアレルギー反応がないときには、数日で症状はよくなりますが、一度刺されて抗体ができてしまうと、2度目に刺された後、5〜10分以内にアナフィラキシーを起こすことがあります。
ハチによって毒の成分は異なりますが、スズメバチとアシナガバチの毒成分は似ているため、一度目とニ度目のハチの種類が違っても、アナフィラキシー症状が出る可能性があります。
3. 医薬品
病院で処方される薬などでもアナフィラキシーが起きることがあります。ペニシリン系の抗生物質やアスピリン等の解熱鎮痛剤、検査で使用する造影剤も原因となることがあります(※3)。
4. ラテックス(天然ゴム)
天然ゴムの原材料に含まれるラテックスというたんぱく質が原因で、アナフィラキシーを起こすことがあります(※3)。ラテックスは医療用手袋やカテーテル、風船などに使われていることがあるので注意が必要です。
アナフィラキシーの症状は?
アナフィラキシーの症状は、アレルゲンに触れて数分~数時間後に出現します(※2)。アナフィラキシーは全身のアレルギー反応なので、症状はさまざま。
主に皮膚・粘膜の症状、呼吸器の症状、循環器症状などに分類できますが、具体的には以下のような症状が挙げられます。
皮膚・粘膜症状
・皮膚が赤く腫れる
・蕁麻疹
・口の中や舌・まぶたなどが腫れる
・腹痛や嘔吐、下痢など
呼吸器症状
・呼吸困難
・息を吸ったときに起こる喘鳴
循環器症状
・動悸・脈が速くなる
・血圧低下、めまい、ふらつき
・意識障害
これらの症状がひどいケースがアナフィラキシーショックで、意識がなくなって突然倒れるなど、命に危険が及ぶことがあります。
アナフィラキシーの対応方法は?
通常のアレルギー反応でも皮膚や粘膜などが赤くなるなどの症状は現れますが、アナフィラキシーの場合は、皮膚・粘膜症状に加えて呼吸器症状や循環器症状のどちらかを伴います(※2)。
また、皮膚や粘膜の症状が現れなくても、急に意識障害を起こしたときにもアナフィラキシーが疑われるので、すぐに小児科を受診しましょう。アナフィラキシーショックを起こしている場合は救急車を呼んでください。
病院に行くまでの間はできるだけ安静にさせておきましょう。仰向けで寝かせ、足を高くして楽な姿勢をとらせます。嘔吐する可能性があれば、嘔吐物が喉に詰まらないように、顔を横に向けてあげてください。
アナフィラキシーの治療法は?
アナフィラキシーを起こすと命に関わることもあるため、早急な治療が必要です。もし症状が出てしまったときには、アドレナリンの筋肉注射が第一選択薬として使用されます(※2)。
アドレナリンの筋肉注射は医療機関を受診する前にも注射できるように、アドレナリン自己注射薬(エピペン®)が世界中で利用されています。特に食物アレルギーを持ち、アナフィラキシーを発症する恐れのある人は、普段から持ち歩くこともあります。
実際に注射を行う人は症状が出ている本人や家族、学校であれば先生が使用する必要があるため、具体的に注射の打ち方を知っておく必要があります。アドレナリン自己注射薬は、医師の処方が必要なので、常備する場合は、医師や薬剤師の説明を十分に受けて正しく使用しましょう。
医療機関ではほかに、酸素や食塩水を投与して血圧を調節したり、ヒスタミン薬の使用でかゆみなどの皮膚の症状を改善したり、症状に応じた治療法が行われます。
アナフィラキシーを予防するには?
アナフィラキシーを予防するために、アレルギー体質の場合はアレルゲンに触れないようにしましょう。また、突然発症することがあるので、アナフィラキシーを起こす可能性があるものに触れた後、数時間は体に変化が現れないかを注意してみてあげてください。
そして、肌に異常が現れたり、息苦しそうにしていたりするときは早めに小児科を受診しましょう。乳幼児は体調の変化をうまく言葉で伝えられないので、機嫌や肌の様子から、早めに異変に気づいてあげてください。