淋病は代表的な性感染症として知られており、クラミジア感染症に次いで多くの感染が報告されています。10代後半や20代前半の若い女性の感染者も多く、身近なところで感染が広がっています。今回は淋病について、原因や感染経路、症状などをご説明します。
淋病とは?原因や感染経路は?
淋病とは、「淋菌」という細菌による性感染症です。近年では、性行為が多様化していることから、性器だけでなく咽頭や直腸への感染も増えています。
主に性交渉による感染後、数日間の潜伏期間を経て、男性は尿道炎、女性は子宮頸管炎などを発症することがあります(※1)。
淋病の症状は?女性と男性で違う?
淋菌に感染すると、男女それぞれで次のような症状が現れます(※1)。
女性の場合
女性は、外陰部のかゆみや不正出血のほか、尿道炎による排尿痛、外尿道口からの膿(うみ)、そして子宮頸管炎による悪臭を伴うおりものなどが現れることがあります。
ただし、女性の場合は症状が軽く、人によっては無症状の場合もあるので、淋病の発症に気がつかずに治療が遅れてしまうことが多くあります。
男性の場合
一方、男性の場合は、尿道炎を発症すると早い段階で強い排尿痛が現れます。
もしパートナーに排尿痛が現れた場合は、自分も感染している可能性があると考えて、一緒に淋病検査を受けておいたほうが良いでしょう。
淋病が悪化すると、不妊症になるの?
女性の場合、淋病を放置していると、稀に上行感染をきたし、骨盤内の臓器(子宮や卵巣、卵管など)に炎症を起こしてしまう「骨盤内炎症性疾患(PID)」を発症することがあります。
骨盤内炎症性疾患による下腹部痛や発熱が現れるだけでなく、妊娠に重要な生殖器が炎症や癒着を起こすと不妊の原因となります。
また男性の場合も、尿道炎が治療されないまま淋菌の感染が広がると、精巣上体炎を引き起こします。両側の精巣上体が炎症を起こすと、精子の通り道が詰まってしまうことで閉塞性の無精子症になる恐れがあるため、男女ともに早期の検査と治療が大切です。
淋病の検査方法は?男性と女性で違う?
淋菌の検査方法はいくつかあり、男性は尿や尿道分泌物を採取、女性は膣内の粘膜部分を軽くこすり、おりものを採取して行います。
主に男性に行われる「グラム染色」は、尿道分泌物を染色し、顕微鏡で菌を観察する方法です。女性の場合、膣分泌物には、淋菌以外の細菌も存在するため、グラム染色による淋菌の検出は困難です。
そのほか、「培養法」や「遺伝子診断法(核酸増幅法)」もありますが、病院によって取られる方法が異なります。淋病のうち10~30%のケースでクラミジア感染も見られるので、遺伝子診断法によって同時検査を受けることが望ましいとされます(※1,2)。
少しでも淋病の可能性があると感じたときは、できるだけ早く婦人科・泌尿器科や性病専門のクリニックを受診して検査を受けましょう。自宅で簡易的に調べられる検査キットも市販されているので、それを使ってみるのも一つの方法です。
ただし、自己判断で淋病を見過ごしてしまうと、気づかないうちに悪化させかねないので、病院で医師の診断・検査を受けることをおすすめします。
淋病の治療方法は?
薬に対する耐性を持っていて、効き目がない菌(薬剤耐性菌)が増えているため、現在では、淋病を経口抗菌薬だけで治療することは推奨されていません(※3)。
今のところ、淋病の治療に確実な効果があり、かつ保険が適用されるのは、「セフトリアキソン」の点滴静脈注射薬や、「スペクチノマイシン」の筋肉注射薬など限られた薬だけです(※3)。
アレルギーなどの理由で、そのほかの薬が使われることもありますが、その場合は症状が改善したとしても、再検査で淋菌の陰性化を必ず確認する必要があります。
淋病はパートナーと一緒に検査を受けましょう
淋病は、特に女性の場合は自覚症状がほとんどなく、気づかないうちに悪化してしまう危険性があります。まずは感染を防ぐため、性交渉を行うときはコンドームを使用しましょう。
男女ともに、不妊症につながる恐れがあるので、妊娠を望んでいる場合は特に、「自分は大丈夫」と思い込まずに十分注意しましょう。そして、自分だけでなくパートナーに淋菌感染の疑いがあるときは、すぐに病院を受診し、一緒に検査を受けてください。