「性病(性感染症)」と聞くと、エイズや梅毒などのイメージが強く、少数の人だけがかかる病気のように感じるかもしれません。しかし、性病には様々な種類があり、「私には関係ない」と思っている人でも知らないうちに感染している可能性があります。今回は、女性がかかりやすい性病の原因や症状についてご説明します。
性病(性感染症)とは?原因は?
性病(性感染症)とは、主に性的接触によって感染する病気を指します。英語の「Sexually Transmitted Diseases(Infection)」を略してSTD、あるいはSTIと呼ばれることもあります。
細菌やウイルス、微生物などを含む精液や血液が、性行為によって性器や口、皮膚などに接触すると性病を発症します。
女性がかかりやすい性病とは?
性病は、感染する病原体によって様々な種類があり、現れる症状も異なります。なかには初期症状が現れにくいものもあり、自覚症状のないままパートナーに感染させてしまうことも。そして、感染したまま放置しておくと不妊症を招く場合もあります。
性病の原因や症状を理解しておくことが、早期発見・早期治療につながります。以下では、女性がかかりやすい性感染症を4つご紹介します(※1)。
1. 性器クラミジア感染症
原因
性器クラミジア感染症は、日本で最も感染者が多い性病で、患者数は報告されているだけでも年間で2万人を超えます(※2)。
「クラミジア・トラコマティス」という微生物によって起こるもので、粘膜同士の接触や精液・膣分泌液などを介して感染します。
症状
女性の場合、性交後1~3週間で発症しますが、自覚症状が少ないのが特徴です。なかには、おりものが増えたり不正出血があったり、下腹部痛・性交痛を感じたりすることもありますが、ほとんどの場合は無自覚です。
2. 性器ヘルペス
原因
「単純ヘルペスウイルス」の感染によって起こる病気です。このウイルスに感染しているパートナーとの性行為で、粘膜などが接触することで感染します。
口唇ヘルペスを発症している場合、口による性行為を行うことで、性器ヘルペスに感染することもあります。
症状
女性の場合、性交の2~10日後に発症します。症状は、感染した場所に水ぶくれのようなものができ、外陰部に疼くような痛みを伴います。ときには、椅子に座ることもできないほど痛くなることがあります。
単純ヘルペスウイルスは、一度感染すると神経が集まっている「神経節」という場所に潜伏し続けます。疲れやストレスが溜まって免疫力が低下すると、再発することがあります。
3. 尖圭コンジローマ
原因
一部の「ヒトパピローマウイルス(HPV)」の感染により発症する病気です。ほとんどが性交渉を通じて感染します。
子宮頸がんの原因として知られているのは、16型や18型などのハイリスク型HPVですが、尖圭コンジローマの大部分は6型や11型などのローリスク型HPVが原因です。
症状
女性の場合、性交してから3ヶ月ほどで発症し、外陰部にかゆみが現れます。また、外陰部や会陰、肛門周辺などに先のとがった「いぼ」のようなものが現れます。
4. 淋病(淋菌感染症)
原因
淋菌が原因で、主に性行為によって感染します。近年では、性器だけでなく喉や直腸への感染も増えています。
症状
性行為で感染すると、その数日後には発症します。悪臭を伴うおりものの増加、外陰部のかゆみ、不正出血、排尿痛などが見られることがあります。しかし、女性の場合、自覚症状がないケースがほとんどです。
男性が感染すると、激しい痛みをともなう尿道炎が現れることが多いので、パートナーにそうした症状が見られる場合は、女性も一緒に検査を受けることをおすすめします。
女性がかかる性病はほかにもあるの?
上記の病気以外にも、女性がかかる性病はいくつかあります。ここでは、主なものを5つご紹介します(※1)。
1. 膣カンジダ(カンジダ膣炎)
原因
真菌(カビ)の一種である「カンジダ」が原因で発症します。カンジダ自体は、普段から体内にいる常在菌です。しかし、性行為などで膣に移り、繁殖することで炎症が起こることがあります。
症状
膣カンジダを発症すると、外陰部に強いかゆみが現れたり、赤く腫れたりします。また、おりものが白く濁り、ボロボロした酒かすのような状態、あるいはドロッとしたヨーグルトやお粥のような状態になるのが特徴です。
2. 膣トリコモナス症
原因
「トリコモナス原虫」が膣内で増殖することで、炎症を引き起こします。
性行為を通じて感染する場合がほとんどですが、水を介して感染することがあり、便器やお風呂場、プールなどで知らないうちに感染していることもあります。
症状
女性の場合、性交したあと5日~1ヶ月の間で発症します。おりものが臭くなり、黄色や淡い灰色で泡だった状態になるのが主な症状です。
外陰部の腫れやかゆみといった自覚症状も現れるので、比較的気づきやすい病気です。
3. 梅毒
原因
主に性行為によって、粘膜や皮膚の小さな傷から「梅毒トレポネーマ」という細菌に感染すると、梅毒を発症します。
症状
原因菌に感染すると、約3週間後に感染部分の粘膜皮膚に異常が現れます。皮膚が腫れたり、潰瘍ができたりしますが、数週間で症状がなくなります。
しかし、その後約3ヶ月~3年にわたって、全身に発疹が出たり、臓器に異常をきたしたりします。自然に症状がなくなったとしても、治療しないと再発を繰り返す病気です。
4. 肝炎
原因
B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスが原因で起こる病気です。特に、B型肝炎ウイルスは、量が多く感染力が強いため、性行為を通じて感染することがあります。
症状
倦怠感や食欲不振などの症状が現れることもありますが、肝炎ウイルスの感染が原因だと気づくのが難しい場合がよくあります。
特別な治療をしなくても自然に治っていくことが多くありますが、稀に劇症肝炎になると、死に至る可能性があります(※3)。
5. エイズ(HIV感染症)
原因
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染して免疫力が低下してしまう病気です。主に性行為を通じて感染しますが、なかには母子感染を起こすこともあります。
ほかの性感染症にかかっている人は、そうでない人に比べてHIVの感染リスクが3~4倍高くなります。
症状
HIV感染直後には、発熱や喉の痛み、筋肉痛といった、インフルエンザのような症状が現れることがあります。HIV感染だと気づかないまま放置してしまうと、免疫不全状態のエイズを発症してしまう恐れがあります。
個人差があるものの、5~10年以上無症状の期間が続き、徐々に免疫力が下がり続けます。最悪の場合、死に至ることもあるので、HIV抗体検査を受けて早期に治療を始めることが大切です。
性病かも?と思ったら病院へ
性病は、自覚症状がないこともよくあり、まさか自分が感染しているとは気づかない人も多くいます。しかし女性の場合、治療せずに放っておくと不妊の原因になることもあるので、油断は禁物です。
性器周辺の不快感や痛み、かゆみ、おりものの異常など、なんらかの異変に気がついたら、一度婦人科を受診することをおすすめします。
もし、性感染症であることが発覚した場合はパートナーにも検査を受けてもらうことが大切です。どちらか一方だけが治療するだけでは、互いにうつす・うつされる状態が続いてしまうので、パートナーと話し合ってきちんと治療しましょう。
※「膣」という字は医学上正しくは「腟」という字を使いますが、本記事においては一般のみなさまに親しみのある「膣」という字で記載しております。