若い世代を中心に感染者が多い「淋病」。再発しやすい厄介な病気なので、きちんと治療することが大切です。しかし最近は、抗菌薬への耐性をもつ菌が増えているため、薬の種類によっては治療がうまくいかないケースも。今回は淋病の治療方法について、どんな薬が効果的なのか、注射や点滴で治るのか、治療の期間や費用はどれくらいなのかなどをご説明します。
淋病とは?
淋病とは、「淋菌」という細菌が性器や咽頭などに感染して起こる感染症で、正式には「淋菌感染症」といいます。主に性行為で粘膜同士が接触して発症する性感染症の一つです。
数日の潜伏期間を経て発症しますが、女性の場合は自覚症状が現れにくいのが特徴です。子宮頸管や尿道が炎症を起こして外陰部のかゆみを感じたり、不正出血が現れたりすることもありますが、気づかない場合がほとんどです。その結果、治療が遅れてしまうこともあります。
一方、男性が感染すると、強い排尿痛などの自覚症状が現れることが多くあります。男性パートナーに淋病が疑われる症状が現れたときは、自分も感染している可能性があるので、早めに婦人科を受診しましょう。
淋病は薬を飲めば治る?
最近では、薬剤に対する耐性を持っている淋菌が増えていることから、経口抗菌薬(飲み薬)だけで淋病を治療することは推奨されていません。ペニシリンやテトラサイクリンといった抗生物質も効果が見られず、これまでは特効薬とされていたニューキノロンに対しても約80%の淋菌が耐性を獲得しているとされています。
経口薬としては、アジスロマイシンのシロップ薬が淋菌の治療薬として保険適用の対象となっており、90%以上の有効率であることが報告されています。しかし、海外では治療の失敗例もあるため、日本性感染症学会のガイドラインでは第一選択薬としては勧められていません(※1)。
淋病の治療薬は?点滴や注射が必要?
現在のところ、保険適用の対象で、淋病に確実な効果があるとされるのは、「セフトリアキソン」の点滴静脈注射薬や、「スペクチノマイシン」の筋肉注射薬など限られた薬だけです。
これらの薬は、95%以上の有効率が報告されており、1回または短期間で淋病を治すことができます。基本的には治療後の検査が必要ないため、日本感染症学会のガイドラインにおいて、第一選択薬として記載されています(※1,2)。
ただし、感染の状態によって点滴・注射薬の投与量や投与期間が異なります。自覚症状がなくても、医師の指示に従って治療を続けることが大切です。
アレルギーなどの理由で、セフトリアキソンやスペクチノマイシン以外の薬を使う場合、症状が改善しても、必ず淋菌が体内に残っていないかどうかを確認する必要があります。淋病が治ったと診断される前に治療をやめてしまうと、性交渉によってパートナーにうつしてしまう恐れがあるので、注意しましょう。
淋病の治療にかかる費用は?
病院によっても異なりますが、健康保険が適用されない自由診療の場合、診察と淋病検査の料金で5,000~8,000円程度、治療薬が処方される場合は別途1~2万円ほどかかるのが一般的です。保険が適応された場合は、その3割が自己負担となります。
また、淋菌性尿道炎や淋菌性子宮頸管炎と診断された場合、それらの病気の治療にも費用がかかります。
決して安い費用ではありませんが、淋病を治療しないまま放置してしまうと、男女ともに不妊の原因になります。症状が悪化する前に、できるだけ早く検査と治療を受けましょう。
淋病は点滴や注射薬でしっかり治しましょう
淋病は、性感染症の中でも感染者の多い病気ですが、薬剤に対する耐性を持つ菌が増えているため、高い効果を持つ薬の種類が限られてしまっているのが現状です。
服用しやすい飲み薬だけでは完全な治療ができないため、点滴や注射を受ける必要があり、患者さんにとっては時間や費用の面で負担が大きいかもしれません。しかし、症状の悪化や不妊を防ぐためには、なるべく早く治療を終わらせることが大切なので、辛抱強く取り組みましょう。