不妊症を解決する方法として、漢方薬や鍼灸といった東洋医学に頼る人も多くいます。漢方薬は病院で処方されたことがあっても、鍼灸は受けたことがないという方が多いのではないでしょうか。今回は、不妊治療における鍼灸について、妊娠しやすくなる効果があるのか、痛みはあるのか、治療を受けるときにどんなことに気をつけたらいいのかなどをご説明します。
鍼灸とは?
「鍼灸(はりきゅう・しんきゅう)」とは、人の体全体にある経穴(ツボ)と呼ばれる箇所に、針を刺したり(「鍼」)、もぐさに火をつけて温めたり(「灸」)することで刺激する方法です。鍼や灸をどのように組み合わせるかは、患者の症状によって異なります。
ツボを刺激することで人間が本来持っている自然治癒力を向上させ、気になる症状を改善したり、体質を整えたりして病気を治療する東洋医学の一つですが、西洋医学的な治療と組み合わせて行うことも多くあります。
不妊に鍼灸は効果があるの?
一般的に、鍼灸は肩こりや腰痛、神経痛などによく効くとされていますが、日本鍼灸師会によると、生理痛や月経不順、不妊などの婦人科系疾患にも効果があるとされます(※1)。元々、鍼灸は予防医学なので、自分が本来持っている体内のバランスを整えることで、様々な症状に対応できると考えられているのです。
不妊治療の一環で鍼灸を行う場合、不妊症の根本的な原因を治療するというよりも、「体の調子を整えて妊娠しやすい体を作る」のが目的です。鍼灸を受けると、具体的には以下のような効果が期待できます。
● 血行が良くなり、お腹や骨盤周りの冷えが改善
● 自律神経が整い、ホルモンバランスが改善
● ホルモンバランスが整い、子宮や卵巣の働きが改善
● 心身をリラックスさせ、ストレスを解消
体の冷えや自律神経、ホルモンバランスの改善は、妊娠しやすい体作りの基本。ストレスなど精神的な影響でホルモンバランスは乱れやすいので、リラックスすることも大切です。
たとえば、ホルモンバランスの乱れで月経不順が起きていて、なかなか妊娠できないという人は、鍼灸の治療によって妊娠できる可能性が高まるかもしれません。
不妊改善の鍼灸はどんなことをするの?痛みはある?
鍼灸の治療を受けたことがないという人は、どんな方法で行うのか気になりますよね。鍼灸は、鍼灸院と呼ばれる専門の施設で受けられ、施術内容は施設によって異なりますが、一般的には以下のような方法で行われます。
カウンセリング・診察
まず、鍼灸師によるカウンセリングや診察で、体の状態や体質をチェックされます。「タイミング法で妊娠したいが、生理が不規則で難しい」「何年か不妊治療をしているが、なかなか授からない」といったことを伝えてみましょう。
不妊の原因と考えられる症状や体質に合わせて、鍼灸師が効果的なツボを判断して施術方法を考えます。
鍼の施術
細いステンレス製の鍼をツボに刺します。このとき、鍼を上下させたり、回したり、振動させたりして刺激を加える方法もあれば、ツボに刺したまま10~15分間置いておくこともあります。
鍼を刺すときの痛みが心配な人もいると思いますが、通常は金属や合成樹脂製の筒を使って刺すので、ほとんど痛みはありません(※1)。緊張せず、できるだけ力を抜いた状態で鍼の施術を受けましょう。
灸の施術
もぐさでツボに熱刺激を与える方法は主に2つあり、もぐさを直接皮膚の上に乗せて、火をつける「直接灸」と、もぐさと皮膚の間に生姜やにんにくなどの緩衝材を置く「間接灸」があります。
不妊など婦人科系のトラブルがある場合、お灸で下腹部のあたりや足を温めることで骨盤内の血行が良くなり、卵巣や子宮の機能が改善されることが期待できます(※2)。
鍼灸院に通うペースはだいたい週1回、3~6ヶ月程度が目安です。個人差があるので、体調や症状の変化を見てもらいながら、鍼灸師と治療法やスケジュールを検討してください。
不妊で鍼灸を受けるときの注意点は?
不妊を改善するために鍼灸を受ける場合、以下の3点に注意してください。
1. 鍼灸を受けてよいか担当医に確認する
すでに他の病院の婦人科などで不妊治療を受けている場合、まず担当の医師に鍼灸を受けてよいかどうかを確認しましょう。体調や不妊の原因によっては、鍼灸の施術を推奨されないこともあります。
また、鍼灸院の先生にも、どのような不妊治療を受けているのかを伝えることを忘れずに。
2. 不妊に理解のある鍼灸院を選ぶ
鍼灸院・鍼灸師によって施術方針は異なり、すべての鍼灸院が「不妊改善」を治療効果として挙げているわけではありません。また、費用の高低や人が入っているかどうかだけで鍼灸院の良し悪しを判断するのは難しいもの。
すでにその鍼灸院に通っている人の口コミなどを参考に、不妊に対する理解があるか、鍼灸師が親身になってくれるかどうかも判断材料にしましょう。
3. 西洋医学的な治療とのバランスを考える
鍼灸は、一度受けただけで即効果が出るものではありません。体質が改善されて効果を感じるまでは、ある程度の時間がかかるということを理解しておきましょう。
また、鍼灸は東洋医学の一つの方法であり、子宮や卵巣の病気が不妊の原因となっていたり、自然妊娠がどうしても難しかったりする場合は、薬物療法や外科手術、体外受精など西洋医学的な治療を検討することも必要です。
不妊治療は年齢との兼ね合いもあるので、パートナーとも相談しながら進め方を考えていきましょう。
不妊治療と鍼灸のバランスを検討しましょう
東洋医学の考えに基づいた鍼灸は、西洋医学とは異なるものであり、施術を受けてどれだけ妊娠しやすい体になれるか、どのくらい続ければ不妊が改善されるかは数字で示せるものではありません。
施術効果は個人差がありますが、ストレスによる生理不順などが不妊の原因となっている場合、鍼灸を受けることで体質が改善され、自然妊娠できる確率や不妊治療の効果が高まる可能性もあります。自分に合った方法で、妊活を進められるといいですね。