20~30代の女性がかかるがんの中で、最も多く見られる「子宮頸がん」は、早期発見できれば治癒できる可能性が高い病気です。また、主な原因となるウイルスが判明しているため、ワクチンの予防接種でウイルス感染をある程度防ぐこともできます。
今回は、HPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)について、効果や副作用のほか、予防接種にかかる費用や受けられる年齢などを詳しくまとめました。
子宮頸がんとは?
子宮頸がんとは、子宮の出入り口である「子宮頸部」にできる悪性腫瘍です。子宮頸がんの主な原因は、「ヒトパピローマウイルス(HPV)」の感染だということがわかっています。
HPVは性交渉で感染するウイルスで、一度でも性交経験のある女性の50~80%が一生に一度は感染するといわれています(※1)。
ただし、HPVに感染した人が必ず子宮頸がんを発症するわけではありません。多くの場合は自分がもともと持っている免疫によって、自然にウイルスが消えていきます。
しかし、一部の人はHPVの感染が続き、数年から数十年かけて、子宮頚部に前がん病変(異形成)を発症したのちに子宮頸がんになります。
日本国内では、年間約1.1万人が子宮頸がんにかかり、約2,900人が亡くなっています(※2)。30歳代までにがんの治療で妊娠できなくなってしまう人も、1年間に約1,000人います。
HPVに感染したあとに、どのような人ががんになるのかはわかっていないため、HPVへの感染を防ぐことが大切になります。
子宮頸がん予防ワクチンとは?
現在日本で使用可能な子宮頸がん予防ワクチンは「サーバリックス®」「ガーダシル®」「シルガード®9」の3種類あります。接種することで、感染予防効果を示す抗体は12年程は維持されるとされています(※2)。
子宮頸がんを引き起こすHPVには少なくても15種類の型があり、子宮頸がんの約60〜70%は16型と18型によって引き起こされていると考えられています(※1, 2)。
サーバリックス®(2価)
16型と18型のHPVに効果があり、子宮頸がんと子宮頸がん上皮内腫瘍を予防します(※2)。
ガーダシル®(4価)
16型と18型に加えて、尖圭コンジローマの原因となる6型と11型のHPVにも効果があります。
シルガード®9(9価)
6型、11型、16型、18型に加えて、31型、33型、45型、52型、58型のHPVにも効果があり、子宮頸がんの原因の80〜90%を防ぐとされています(※2)。
子宮頸がん予防ワクチンの副反応は?
子宮頸がん予防ワクチン接種後に見られる副反応として、発熱や接種した部位の痛みやかゆみ、腫れ、注射による痛みや興奮などをきっかけにした失神などがみられることがあります。
ワクチンを接種後に生じた症状として報告があったのは、接種1万人あたりサーバリックス®またはガーダシル®では約9人、シルガード®9では約8人です。これには因果関係があるかわからないものや、接種後短期間で回復した症状の人も含まれています(※2)。
また、重いアレルギー症状や神経系の症状が起こることがありますが、接種1万人あたりサーバリックス®またはガーダシル®では約5人、シルガード®9では約7人と極まれであることがわかっています(※2)。
もし接種後に体調の変化や気になる症状が現れたら、接種を行った病院に相談してくださいね。
定期接種としてワクチンを受ける年齢は?
子宮頸がんワクチンは、定められた期間内であれば「定期接種」として無料で接種することができます。
サーバリックス®、ガーダシル®は小学6年生から高校1年生相当の間に3回、シルガード®9は小学6年生から15歳の誕生日前日までの間に2回、もしくは15歳以上高校1年生相当の間に3回接種します(※2)。いずれも1年以内に接種を終えることが望ましいとされています。
なお、HPVワクチンは、積極的な勧奨が差し控えられていた期間がありました。
そのため、1997年4月2日から2006年4月1日の間に生まれて、過去にHPVワクチンを合計3回接種していない女性は、2022年4月〜2025年3月までの3年間、定期接種としてワクチンを接種することができます(※3)。詳しくはお住いの自治体窓口へ確認してくださいね。
これ以外の場合で、定期接種の期間内に接種しなかったときは、「任意接種」となるため数万〜十数万円のワクチン費用を負担する必要があります。
ワクチンと検診で子宮頸がんを予防しよう
子宮頸がんワクチンには高い予防効果がありますが、残念ながら100%予防できるわけではありません。そのため、20歳を過ぎると2年に1回子宮頸がん検診をすることが推奨されています。
子宮頸がんは検診で早期発見がしやすいがんです。自治体からの補助があるので、定期的に検診に行くようにしてくださいね。