前編では、赤ちゃんの生活リズムの整え方についてご紹介しました。この記事では、生活リズムを整えるうえで大切な「質のいい睡眠」にスポットを当て、古賀良彦先生に教えていただきました。
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古賀良彦先生
杏林大学医学部付属病院精神科教授。脳研究のエキスパートとして、「睡眠と脳の関係」「香りと脳の関係」など、独自に研究。アロマテラピーやぬりえによる脳の活性効果についても検証、睡眠障害などに悩む患者さんをサポートしている。著書は『睡眠と脳の科学』(祥伝社新書)ほか。
安心して眠りに入れるよう
ルーティーンを習慣づけて
寝る子は育つといわれる通り、充分な睡眠時間を取ることは、心身や脳の発達が著しい幼少期には特に大切。
眠っている間に分泌する成長ホルモンは、骨や筋肉を強化し、体の成長を促すことはもちろん、疲れを癒したり傷口を修復・再生するなど、代謝のコントロールにも関わっています。
最も大量に成長ホルモンが分泌されるのは、眠りはじめのノンレム睡眠のとき。そのため、スムーズに深い眠りに入れるようにするのが理想です。
テレビの音や話し声が耳障りだったり、蛍光灯で部屋が明るすぎると、なかなか寝付けません。逆に部屋が真っ暗だと不安を感じ、寝付けない子供もいます。間接照明にするなど、眠りに入りやすい工夫をしましょう。
絵本の読み聞かせをする、リラックスする静かな音楽をかける、お気に入りのぬいぐるみやタオルに触れる…。特定のルーティーンを入眠儀式として習慣づけるのは、すんなり眠りに入るうえでもおすすめです。
寝る前のブルーライトにご用心
睡眠に関連して、気をつけたいのが、端末機器の扱いです。今の子供たちは1歳になる前から、スマホやパソコン、タブレットなどに見て触れている状況があります。日中もですが、眠る前は特にモニター画面を見せることは控えましょう。
ブルーライトを発するモニターを見ていると、視神経を疲労させて目に悪いだけでなく、脳を覚醒させてしまいます(※)。
なかなか寝付けず、睡眠が充分に取れないという状況が起こり、規則正しい睡眠リズムが作りにくくなります。
※ブルーライトが眼精疲労を起こすということは最近の研究でわかってきたこと。成長過程にある子供は大人以上に影響が大きいと考えられている。
「子供の眠り」ワンポイント講座
「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」
レム睡眠は「体の眠り」。体は休息していて、脳が覚醒に近い状態。目が覚めているときに入ってきた情報を取捨選択、整理して記憶に留めています。
ノンレム睡眠は「脳の眠り」。脳自体が休もうとスイッチが入っていますが、体はある程度起きていて寝返りを打つこともできます。
ノンレム睡眠→レム睡眠→ノンレム睡眠を繰り返す一定のリズムがあり、2種の眠りのバランスがとれていることが良い睡眠の条件と言えます。
脳を活性化する「ぬり絵」がおすすめ
ぬり絵をしている時は、脳のすべての部位(前頭葉、側頭葉、後頭葉)が協調して働きます。
発育段階にある子供にとって、ぬり絵は脳全体をバランスよく発達させると考えられます。
大人にとっては、ちょっとしたストレス解消になります。成長してぬり絵ができるようになったら、親子でおしゃべりしながら、ぬり絵に取り組んでみてはいかがでしょう。
生活リズムが整っていると
情緒が安定して気力も充実
生活リズムは、子供の精神面にも大きな影響を与えます。規則正しい生活ができている子供は、物事に取り組むときの意欲と気力、集中力があって、常に前向きな気持ちが働き、情緒が安定している傾向があります。
生活リズムが整った毎日を送ることは、ママ・パパにとってもプラスになるはず。睡眠を充分に取れて疲れを翌日まで持ち越さない、早寝早起きが習慣になり、健康的で気持ちに余裕が生まれるなど、いいことづくめです。
質のいい睡眠が確保されれば、子供と笑顔で向き合うことが増えるでしょう。
出典:miku 44号 2016年春号
※掲載されている情報は2016年3月25日当時のものです。一部加筆修正しています。
絵本ナビ編集部