早寝早起きを基本とする規則正しい1日は、子供の心身や脳の発達にどう影響するのでしょうか。脳科学が専門の古賀良彦先生に教えていただきました。
古賀良彦先生
杏林大学医学部付属病院精神科教授。脳研究のエキスパートとして、「睡眠と脳の関係」「香りと脳の関係」など、独自に研究。アロマテラピーやぬりえによる脳の活性効果についても検証、睡眠障害などに悩む患者さんをサポートしている。著書は『睡眠と脳の科学』(祥伝社新書)ほか。
生まれたばかりの赤ちゃんは
睡眠を通して学習している
私たちの体にはもともと、固定のリズムを刻もうとする体内時計が備わっています。陽が上ったら自然と活動的になり、陽が沈み夜になったら眠くなるというのは、自然界のリズムと呼応する本来の機能によって調整されるからです。
生まれたばかりの赤ちゃんは何度も眠る「多相性睡眠」が特徴で、1日の3分の2を寝て過ごします。その眠りの大半はレム睡眠といって、学習に関係した睡眠です。体は眠っていても脳は活動していて、目覚めている間に経験したことを振り返っているのです。
脳が一番発達するこの時期は、いろいろなことを記憶し吸収して、情報を生活に活かすために整理しています。そういうことをすべて睡眠の中で確立しているのです。
体内時計が働きにくい現代
意識的にリズムを整えて
子供は月齢が進むにつれて、徐々にレム睡眠が減り、生後4~5ヶ月頃には、昼と夜の区別がつくようになります。本来なら、子供自身の内的な発達に任せていれば、自然と昼は起きて夜は休む、1日1回の睡眠(単相性睡眠)になっていきます。
ところが現代社会は、自然界のリズムに沿って生活することが非常に難しくなっています。親の生活環境によっては、幼い子供が夜10時、11時まで起きていることも珍しくありません。
このような状態では何もしなくても自然に、体内で1日のリズムができてくるということにはなりません。1日の生活リズムを、意識的に作っていくことが大切なのです。
朝日で体内時計がリセット
外遊びの疲れが安眠を誘う
生活リズムを作るうえでポイントとなるのが睡眠と覚醒。早寝早起きを基本に、毎日同じ時刻に眠りに就き、同じ時刻に目覚め、朝昼晩の食事時間も固定すると、体内リズムが整ってきます。
朝、太陽の光を浴びることで、体内時計はリセットされます。太陽光にはブルーライトが入っているので、光を目にすることで自発的に覚醒され活動状態に入ります。
毎日一定の起床時間を決め、その少し前にカーテンを開けて、日の光が室内に入るようにしましょう。
もうひとつは、体を覚醒させる意味でも、外遊びをさせること。お日様の光を浴びながら、散歩したり、公園で走るなど、体を動かす機会をできるだけ作りましょう。
昼間、体を使ってたくさん遊ぶことで、夜になると体は適度な疲労感を覚え、寝つきがよくなります。
太陽が出ている昼間には、覚醒を促すセロトニンというホルモンが分泌。陽が沈むと、眠気を起こすメラトニンというホルモンの分泌が高まります。
早寝早起きのペースができると、脳内ではホルモンのリレーが自然な形で行われ、睡眠と覚醒のバランスがとれるようになります。
「眠る、起きる、食べる、遊ぶ」を基軸に
毎日の生活リズムを整えよう!
睡眠と食事、外遊び、入浴という毎日の決まった行動を軸にして、1日のタイムスケジュールを具体的にプランニングしてみましょう。
新生活に切り替わる3週間程前から、大まかに決めた時間割に沿って過ごしてみて、無理があれば微調整を。親子で快適な毎日を過ごせることが大事です。
睡眠
数回に分かれていた睡眠が、夜まとまって眠るようになってきたら、朝決めた時間に起こして生活リズムを調節しましょう。
睡眠時間は昼寝も含め、1~3歳児で12~14時間、4~6歳で10~13時間が目安。昼寝をしていれば、一定の時間が来たら起こし、夜の眠りを妨げないようにします。
未就学児は8時前後に就寝するのが理想。働くママ・パパの場合は、園から帰宅して食事、風呂、就寝という流れで、9時を回ってしまうこともあるでしょう。
家事は手抜きするなど、睡眠時間を確保することを優先し、親子が無理なく過ごせるようにスケジュールを考えてみましょう。
食事
食事の時間は生活リズムを調整するうえで大事な柱。離乳食の3回食になったら、できるだけ大人の食事と同じ朝昼晩のタイミングで食べさせるようにしましょう。
外遊びをするなど盛んに動き回るようになると、自然とお腹がすきます。3食+間食(補食)という形で考え、できるだけ毎日同じ時間におやつもとるようにしましょう。
外遊び
昼間、体をたくさん使って遊ぶことで、夜、疲れて寝つきがよくなります。外に出るだけでも刺激になりますから、生後1ヶ月くらいから少しずつお散歩をスタート。
首がすわったら抱っこ紐やベビーカーで、歩けるようになったら手をつないでお散歩を楽しみましょう。
家の中だけで過ごすより、外へ出て得られる刺激が、子供の脳の発達にプラスの影響をもたらします。ママ自身にとっても新たな発見があるはず。公園や児童館などに出かけて、元気に外で遊ぶ機会を作りましょう。
入浴
心地よい入眠に関係するのが入浴。お湯は約38~39度のぬるめにすると、リラックスして寝つきがよくなります。体の中心温度が下がると眠くなるので、就寝の2時間前ごろに入浴を済ませるのがおすすめです。
バスタイムが毎日ほぼ同じ時間になると、就寝時間も定着してきます。
後編は「質のいい睡眠」について
記事の後編では、生活リズムを整えるうえで大切な「質のいい睡眠」についてご紹介します。ぜひ合わせてご覧ください。
出典:miku 44号 2016年春号
※掲載されている情報は2016年3月25日当時のものです。一部加筆修正しています。
絵本ナビ編集部