不妊治療に何年も取り組んでいたりすると、「妊娠できるタイムリミットも考えて、一度に2人赤ちゃんを授かったらうれしいな」と考える夫婦もいるかもしれませんね。体外受精や顕微授精がうまく行くと双子が生まれやすい、という噂もありますが、本当でしょうか?今回は、体外受精や顕微授精は双子が生まれやすいといわれる理由や、実際のデータについてご説明します。
そもそも双子が生まれる確率は?
厚生労働省の人工動態調査によると、自然妊娠も含めた全体の多胎出産率(双子や三つ子が生まれた割合)は約1%です(※1)。
双胎妊娠のうちほとんどが双子で、受精卵の発育の違いによって2つのケースに分かれます。1つの受精卵が細胞分裂の過程で2つに分かれる「一卵性双胎」と、2つの受精卵ができて別々に着床する「二卵性双胎」です。
人種などによって頻度は異なりますが、日本では一卵性双胎は全妊娠の約0.4%、二卵性双胎は約0.2~0.3%といわれています(※2)。
体外受精と顕微授精による双子の確率は?
自然妊娠も含め、すべての妊娠のうち双子や三つ子が生まれる確率が1%であるのに対して、体外受精や顕微授精による多胎妊娠率はどれくらいなのでしょうか?
日本産科婦人科学会のデータによると、2015年に体外受精・顕微授精で生まれた赤ちゃんのうち、約3%が多胎妊娠で、そのうちほとんどが双子でした(※3)。
数字を単純に比較してみると、体外受精や顕微授精などの不妊治療を行ったケースの方が、自然妊娠よりも多胎妊娠になる確率がやや高いといえます。
体外受精や顕微授精で双子が多いのはなぜ?
体外受精や顕微授精で双子が生まれやすい理由として、それらの治療の前に行う「排卵誘発」が関係しています。
不妊治療の成功率を上げるには、複数の卵子を採り、できるだけ質の良いものを選んで精子と受精させることが大切です。そこで、体外受精や顕微授精を行う前にクロミッドやhCG注射などの排卵誘発剤を使って卵巣を刺激し、卵胞の発育と排卵を促すことがよくあります。
排卵誘発の結果、複数個の卵子が採れ、さらには受精卵(胚)がいくつかできた場合、それらを子宮に移植すれば多胎妊娠の可能性が上がります。実際に、以前にはそうした方法が実施されることも多くありました。
しかし、2008年に日本産婦人科学会が、多胎妊娠を防止する目的で「子宮に移植する受精卵(胚)は原則として1個」とする見解を発表したということもあり(※4)、双子や三つ子を妊娠する確率は減少してきています。
体外受精や顕微授精で双子はリスクがある?
「双子を授かった」と聞くと、1人よりもさらにおめでたいと感じる人も多いと思いますが、日本産科婦人科学会ではなぜ、体外受精・顕微授精による多胎妊娠を防止するための見解を発表しているのでしょうか?
それは、双子などの多胎妊娠の場合、早産・低出生体重児で生まれる赤ちゃんが多く、母体にも胎児にも様々な合併症が起こるリスクが高いためです(※5)。
さらに、体外受精や顕微授精を受ける夫婦は年齢が高いことが多く、高齢妊娠による合併症リスクも考えられるので、より慎重な妊娠経過管理が必要となります。
既出の日本産科婦人科学会による見解では、「35歳以上の女性、または2回以上続けて妊娠しなかった女性など」は2個以上の胚移植が認められているため(※4)、「双子が欲しいから2個以上移植したい」と思う人もいるかもしれませんが、多胎妊娠によるリスクも踏まえたうえで検討したいですね。
体外受精・顕微授精でも双子は奇跡的なこと
体外受精・顕微授精で双子が生まれる確率は、自然妊娠と比べて若干高いですが、「双子が生まれやすい」とまでは言えません。双子を妊娠することを目的とするのではなく、結果的に双子だったら幸運だな、と捉える程度がいいかもしれませんね。
授かる赤ちゃんが何人であっても、妊娠・出産するというのはそれだけで奇跡的なこと。双子ならではのリスクもあれば、双子だからこそ味わえる喜びもあります。不妊治療を頑張った先に、もし双子を妊娠したときは、出産のときを迎えるまで体調管理に気をつけながら過ごしてくださいね。