婦人科検診などで「子宮筋腫」と診断されると不安になりますよね。子宮筋腫は女性特有の病気で、成人女性の3〜4人に1人の割合で発見されるといわれています(※1)。基本的には良性の腫瘍なので、命に関わることはほとんどありませんが、手術が必要になるケースもあります。今回は、子宮筋腫の手術について、方法の違いや費用、入院期間、手術後のスケジュールや妊娠ができるのかなどをまとめました。
そもそも子宮筋腫ってどんな病気?
子宮筋腫とは、子宮を形成している筋肉の一部が増殖してできる良性の腫瘍です。腫瘍ができる原因ははっきり分かっていませんが、その発生と発育には、女性ホルモンの「エストロゲン」が関わっているのではないか、と考えられています(※2)。
子宮筋腫には、子宮内膜のすぐ下にできて子宮の内側に向かって大きくなる「粘膜下筋腫」、子宮内膜の外側にある筋肉の層内で大きくなる「筋層内筋腫」、子宮の外側を覆う「子宮漿膜」のすぐ下で発生・発育する「漿膜下筋腫」という3つのタイプがあります。
良性の腫瘍とはいえ、放置すると大きく成長し、過多月経やそれに伴う貧血、月経困難症といった症状が現れることもあります。また、不妊症の原因にもなることがあるので、妊娠を希望している人は特に注意が必要です。
子宮筋腫の大きさやできる場所、症状の重さ、発育の早さなどによって、治療法を検討することになります。
子宮筋腫の手術をするかどうかは大きさ次第?
筋腫が小さく、痛みなどの症状もなければ、手術は行わず経過観察となることもあります。その場合、3~6ヶ月ごとに病院へ通い、検診を受けるのが一般的です。
しかし、筋腫がある程度大きく、過多月経やそれに伴う貧血などの症状が重く、日常生活に支障をきたすほどであれば、薬物療法や手術療法を検討します。
一つの目安として、日本産科婦人科学会のガイドラインでは「5~6cmを超える筋腫の場合に、治療対象とする」とされており、治療のために筋腫核出術が行われることもあります(※3)。
筋腫核出術は子宮を温存し、筋腫のみを取り除く手術法なので、一般的に妊娠を希望している場合に選択されます。
また、「筋腫が8cm以上で、急速に大きくなっており、MRI検査で悪性の疑いがある」と判断された場合、子宮そのものを取り除く「単純子宮全摘術」を行うこともあります(※2)。
このように、子宮筋腫が見つかった場合、大きさだけでなく、症状の重さや発育のスピード、悪性化するリスク、妊娠希望の有無などを総合的に考えて手術をするかどうかが決まります(※4)。
子宮筋腫の手術法は?術後に妊娠できるの?
子宮筋腫の手術方法は大きく分けて3つあり、それぞれにメリット・デメリットがあります。筋腫の状態や女性の妊娠希望によって、選択される手術法が異なります。
1. 単純子宮全摘術
子宮頸部の付近で靭帯を切断し、子宮を全て取り除く手術法です。子宮筋腫の再発や子宮がんになる可能性はゼロになり、子宮筋腫に伴う様々な症状に悩まされなくなるというメリットがあります。
子宮を摘出しても、卵巣を切除せずに温存しておけば、卵巣の機能が残っているうちは更年期障害になる心配もありません。また、腟は残るので性交渉も可能です。
ただし、デメリットとして、術後に自然妊娠はできなくなります。将来的に妊娠を希望する場合には、医師やパートナーと事前によく話し合ったうえで手術を検討することが大切です。
2. 筋腫核出術
子宮を体内に残して、筋腫だけを取り除きます。筋腫による症状が軽快するうえに、手術後の妊娠も可能であることがメリットです。最近では、開腹手術と比べて術後の痛みが軽く、回復も早い腹腔鏡下手術が主流となりつつあります。
しかし、筋腫核出術は、子宮筋腫が再発する確率が20%前後であったり、手術時の出血量が多くなる傾向があるので輸血などによるリスクが増えたりするなど、デメリットがあるのも事実です(※4)。
なお、粘膜下筋腫の場合、子宮口から切除用の内視鏡(レゼクトスコープ)を挿入して、筋腫を取り除く手術(Transcervical resection=TCR)が行われます。術後の痛みもほとんどなく、回復も早いため入院期間が短いというメリットがあります(※2,4)。
3. 非観血的手術
比較的新しい治療法で、体にメスを入れずに筋腫を小さくする方法です。たとえば、子宮に栄養を供給する血管を薬などで閉じて、筋腫への栄養を断つ「子宮動脈塞栓術(UAE)」、超音波の力で筋腫を小さくする「集束超音波療法(FUS)」などがあります。
どちらも、腹部に傷を残さずに子宮筋腫を小さくすることができますが、日本産科婦人科学会は「妊娠を希望する患者には推奨できない」としています(※1)。また、UAEは再発の確率が比較的少ない一方で、感染などの合併症を起こす可能性があります。FUSは安全性が高いものの、残った筋腫が再び大きくなることもあります。
これらの新しい治療法は保険適応外のため、治療費は全額自己負担です。メリット・デメリットの両方を考慮したうえで、慎重に実施を検討する必要があります。
子宮筋腫の手術費用は?入院期間はどれくらい?
手術方法によって入院期間や費用も大きく変わります。以下の表はあくまでも目安ですが、ここに記載したのは入院期間のみで、職場復帰するにはさらに1~2週間程度長くかかると考えてください。
症状や手術方法によって回復までの時間は異なるので、いつ頃から普段通りの生活ができるのかは、担当の医師と相談しましょう。
1. 単純子宮全摘術の場合
項目 | 入院期間 | 費用 |
---|---|---|
開腹手術 | 7~14日間 | 20~25万円 |
腟式手術 | 5~8日間 | 20万円前後 |
腹腔鏡下手術 | 5~8日間 | 20~25万円 |
2.筋腫核手術の場合
項目 | 入院期間 | 費用 |
---|---|---|
開腹手術 | 7~10日間 | 15~20万円 |
腹腔鏡下手術 | 5~8日間 | 20万円前後 |
子宮鏡下手術 | 1~3日間 | 8~10万円 |
3.非観血的手術
項目 | 入院期間 | 費用 |
---|---|---|
子宮動脈塞栓 | 3~4日 | 20万円前後 |
集束超音波 | 日帰り | 55~85万円(保険適用外) |
子宮筋腫の手術後はどうなる?痛みや出血は?
子宮筋腫で開腹手術や腹腔鏡下手術を行う際には、麻酔を使用してから実施するため、手術自体はあっという間に終わったと感じる女性が多いようです。その代わり、「手術後の方が大変だった」という声もあります。
出血
手術中にも出血は起こりますが、手術後の傷口からもしばらくの間出血があり、腟を通して外に少量流れることがあります。基本的には数日間で止血されますが、出血が止まらない時には再手術が必要になることも。
痛み
個人差はありますが、手術後に強い痛みと吐き気を感じる女性は多いようです。傷口が大きいほど痛みも強く、長引く傾向にあります。
時間の経過とともに痛みを感じなくなるのが一般的ですが、しばらく痛みが続くようであれば感染が起こっていたり、切除した部分が他の臓器へ癒着していたりするなどの可能性もあるため、担当医に相談しましょう。
時間の経過とともに痛みを感じなくなるのが一般的ですが、しばらく痛みが続くようであれば切除した部分が他の臓器へ癒着してしまった可能性もあるため、担当医に相談しましょう。
再発の可能性
筋腫核手術の場合は、全摘出ではないため、子宮筋腫の再発率は約20%あるといわれています。経過観察を行い、腫瘍が大きく成長しているようだと、再手術が必要になります。
子宮筋腫の手術後に、再発を防ぐには?
子宮筋腫を確実に予防する、という方法はありませんが、定期的に検診を受け、子宮筋腫が大きくなる前に検診に訪れることは非常に重要です。下記のような症状に気づいたら、早めに婦人科で検査を受けましょう。
- 生理の出血量が多い
- 生理痛が重い
- 頻尿
- 不妊期間が長い
- 下腹部にしこり
子宮筋腫で手術するかどうか医師と相談しましょう
子宮筋腫は成人女性の中でも罹患率が高い病気です。基本的には経過観察ですむ場合が多いですが、手術が必要になる人も少なからずいます。
誰もがかかる可能性があるので、もしものときに慌てずに手術法が選択できるよう、知識を備えておきましょう。手術が必要かどうかは医師としっかり話し合ってください。