精子の量は人それぞれ違いますが、量が少ないと、不妊に繋がってしまうのではないか…と心配になる人も多いのではないでしょうか。そもそも、「精子の量が少ない」とはどのような状態で、どのような検査でわかるのでしょうか?量が少ないとわかったら、増やすことができるかどうかも気になりますよね。今回は精子の量についての様々な疑問についてお答えします。
精子の量とは?検査でわかるの?
男性が射精する際に見える白い液体は、精液といいます。精液は約7割が精嚢からの分泌液、約3割が前立腺からの分泌液で、残りの数%が精子です(※1)。つまり「精子の量=精液の量」ではありません。
また精子は0.06mmの長さしかないため、精子を肉眼で確認することはできません(※1)。そのため精子の量を計測するには、精液検査を受ける必要があります。
精液検査を受けることができるのは、泌尿器科や産婦人科です。産婦人科では、妊娠を望んで、パートナーと共に訪れた際に受けることができます。
精液検査を受けるときは、病院で精液を採取するのが一般的です。20~30度に保ちながら、2時間以内に病院に持っていくことができれば、自宅で採取することも可能です(※2)。
精子の量の平均は?少ないと病気なの?
精液の成分に関しては、下記の値以上であれば自然妊娠する可能性があるとされています(※2)。
● 精液量:1.5ml以上
● 精子濃度:1500万/ml以上
● 総精子数:3900万/射精以上
● 前進運動率:32%以上
● 総運動率:40%以上
● 正常精子形態率(厳密な検査法で):4%以上
● 白血球数:100万/ml未満
精子の量は「精子濃度」と関係しています。精子濃度が低い、つまり精子の量が少なければ「乏精子症」、精子が全く存在しなければ「無精子症」と診断されます。
ただし、検査当日の体調などにより数値にばらつきがあるため、1回目の検査で数値が良くなかった場合は、複数回検査を行います。2回目や3回目で数値が良くなることもあります。
精子の量が少ない原因は?年齢と関係がある?
精液の状態は個人差が大きく、もともと精子の量が多い人もいれば、少ない人もいます。もし精子が少なくても、原因がわからないことも多いのが実情です。
ただし、精子の量が少なくなる要因はいくつかあります(※1)。
陰嚢の温度が高い状態にあること
精巣が精子を作るのに最も適した温度は、体温より2~3度低い33~35度といわれており、これより高い温度になると、精子を作る機能が低下してしまいます。適温を保つために、陰嚢は体から離れた場所にあるというわけです。
ノートパソコンを膝の上に置いて作業をしたり、長湯をしたり、体に密着するブリーフを履いたりすると、精巣の温度が上がってしまい、精子にとっていい状態ではありません。
また長時間自転車に乗り続けると、サドルに擦れ続けている陰嚢付近の温度が上がったり、会陰部の微小血管に損傷を受けるなどして、精子の量が減るという研究結果もあります。
陰嚢の近くに電磁波を発する機器があること
まだしっかりと検証されているわけではありませんが、携帯電話やノートパソコンが発する電磁波は、精子に良くないとする学説もあります。
ズボンのポケットに携帯電話を収めている男性は、できればバッグや胸ポケットに収納場所を変えた方がいいでしょう。
加齢による精子の老化
女性の卵子は、年齢とともに機能が低下することがよく知られていますよね。それと同様に、男性の精子も老化します。
精子の数、正常形態精子率(奇形ではない精子の比率)、精液量は、年齢とともに機能が低下することが明らかになっています。
精子の量が少ないと妊娠しにくくなる?
前述した乏精子症や無精子症であれば、残念ながら自然妊娠の可能性は低くなってしまいます。
ただしその原因が明らかになれば、手術などで精子の量を増やせる可能性があります。治療が可能な原因としては、下記のようなものがあります(※3)。
精索静脈瘤がある
本来であれば精巣から心臓に戻るはずの血液が逆流して、精巣や周りの静脈に瘤(こぶ)をつくってしまうことを「精索静脈瘤」といいます。この瘤のせいで精巣の温度が上昇し、精巣中の酸化物が増えることで、精子を作る機能が下がってしまうことがあります。
泌尿器科で、陰嚢の触診や超音波検査などを受けることで、精索静脈瘤をみつけられることがあります。
精索静脈瘤がみつかったら、逆流している精巣性脈の血流を遮断する手術を行うことで、精子の濃度や運動率を上げられる可能性があります。
精管に閉塞がある
精子の通り道である精管が詰まっていると、精液のなかに精子が入り込むことができません。そのため、射精はできても、射精された精液のなかに精子が含まれない状態になります。
閉塞した部分を手術で取り除けば、精子の通り道を再建することができます。
精子の量を増やす方法は?
精子の量を増やし、より妊娠の可能性を高めるには、どうすればいいのでしょうか?
実はこの問いに対し、「これが絶対に効く!」という決定打はありませんが、一般的にいわれる老化対策と同様のことを施すと、精子の状態が改善されることもあります(※1)。
肌の老化を防ぐために使われる化粧品の成分には「抗酸化」の効果がある物質が使われています。
ビタミンCやビタミンE、ポリフェノール類、カロテン類、コエンザイムQ10などの抗酸化物質が入った食品や、サプリメントを摂ることにより、精子の量や運動率が向上することもあります。
またタバコの活性酸素は精子を減らしてしまうため、妊娠を望む期間は禁煙した方がいいでしょう。禁煙とあわせて、栄養バランスの優れた食事をとったり、規則正しい生活を送ったりと、健康的な生活を送ることも大切です。
なお、バイアグラに代表されるED治療薬は、あくまで勃起機能改善のための薬なので、精子の量を増やすなどの効果はありません。
精子の量が気になったら、まずは検査してみましょう
前述した通り、精子の量を肉眼で調べることはできませんし、それが多いか少ないかを判断するには検査が必要です。
精液の量と精子の量は比例しないので、自分の精液が少ないからといって悲観しすぎる必要はありませんが、精液が多くても精子が少なかったり、運動力が低かったりすることもあります。
実は不妊の原因の約半分は男性にもあります(※4)。赤ちゃんを望んでもなかなか授からないのであれば、精液検査を受け、自分の精子の状態を確認してはいかがでしょうか?