「メッケル憩室」という言葉をご存じでしょうか?もしかすると、聞いたことがないという人のほうが多いかもしれませんね。メッケル憩室による症状が実際にあらわれやすいのは、1~2歳頃なので、ママやパパは知っておくと安心です。今回はメッケル憩室の原因や症状、治療法についてお伝えします。
メッケル憩室とは?
憩室とは、血管や腸といった管上の臓器、もしくは膀胱や胆のうといった袋状の臓器の壁の一部が、焼いたお餅が膨れるように、外にピョコンと飛び出た突起物のことです。
メッケル憩室は、19世紀にドイツの解剖学者であるMeckelが、その存在をはじめて明らかにしたものです。少し専門的になりますが、メッケル憩室は以下のようなものです(※1)。
妊娠初期に、受精卵は赤ちゃんの元となる細胞と卵黄嚢(らんおうのう)に分かれます。卵黄嚢とは、胎盤ができる以前にママからの栄養を赤ちゃんに送るためのもので、胎盤が成長するにしたがって小さくなり、やがて消失します。
その卵黄嚢と小腸をつないでいる管を、卵黄管と呼びます。卵黄管も卵黄嚢と同様、自然になくなって体内に吸収されていきます。
しかし、このときに卵黄管がなくならず、部分的、もしくは完全に残ってしまうことがあります。この残存物が小腸の末端にくっついてできるのが、メッケル憩室です。
メッケル憩室は腸粘膜で覆われることが多いのですが、胃粘膜の成分が一部に含まれることもあります。
メッケル憩室の症状は?腸閉塞になることも?
メッケル憩室は、全人口のなかで2%くらいの割合であるとされていますが、実際に症状が出るのはそのうちの約20%で、多くの場合は無症状のまま一生を終えます(※1)。
実際に症状となってあらわれるのは1、2歳の子供に多く、10歳くらいまでに何らかの症状が起こる場合が多いとされています。ただし大人になって症状が出ることもあります(※2)。
メッケル憩室に起因する具体的な症状は、主に以下のようなものがあります。
肛門からの出血
うんちに血が混ざったり、うんちとは別に大量に血が出たりします。ただし、痛みが排便時や出血時にないので、子供が泣いたりすることはありません。
この症状は、メッケル憩室の一部に胃粘膜が含まれることがあり、そこから分泌された胃酸が小腸に潰瘍(傷)をつくることで起こります。
2歳未満の子供で痛みがなく肛門から出血する場合は、約50%がメッケル憩室によるものとされています(※2)。
腸閉塞
腸閉塞とは、腸の中が部分的、もしくは完全にふさがってしまう病気です。嘔吐や腹痛、発熱などの症状が起こります。
メッケル憩室炎
メッケル憩室そのものが炎症を起こすことで、激しい腹痛や発熱といった症状が起こります。虫垂炎と同じようにお腹の右下が痛むため、間違われることも多いようです。
この症状が出る子供の平均年齢は8歳で、腹膜炎につながることもあります(※2)。
子供にとってはお腹のどこが痛いかをきちんと説明するのは難しいこともあるので、子供が長い時間不機嫌だったり泣いていたら、どこか痛いところがないかを体に触りながら聞いてみましょう。診断は、医療機関でCTやエコーによって行われます。
メッケル憩室は手術が必要?
前述したとおり、メッケル憩室があること自体は病気ではありません。
ただしメッケル憩室による上記のような症状が出たときには、メッケル憩室と周囲の腸の一部を切除するための外科手術が必要になります。
最近はお腹を大きく開けることなく、内視鏡を使って小さく傷を入れるだけで切除する手術法もあります。
ただし、腹部単純X線検査やバリウム造影など通常の検査では見つけることが困難です。メッケル憩室に胃酸を分泌する細胞がある場合は、放射線を使った検査で見つかることもあります。
虫垂炎やほかの原因による腸閉塞の手術をする予定で開腹してみたらメッケル憩室を見つけた、ということも多くあります(※2)。
子供のために、メッケル憩室について知っておこう
血便が出る、腹痛、発熱など、さまざまな症状があらわれるメッケル憩室。あらかじめメッケル憩室を発見することは困難なので、症状が出る前から何かを準備しておくのは難しいのが実情です。
しかし、メッケル憩室というものがあり、それがどんな症状になって出るかどうかを知っておけば、いざというときに落ち着いて対処できます。
子供の病気のひとつとして、頭の片隅に置いておいてくださいね。