歯が生える時期には個人差がありますが、なかなか生え揃わず、本数が少ないと不安になってしまいますよね。単に生えてくるペースが遅いだけという可能性もありますが、生まれつき歯の本数が少ない「先天性欠如歯」かもしれません。今回は、先天性欠如歯について原因や治療方法、矯正にかかる費用などをご説明します。
先天性欠如歯とは?
歯は本来、乳歯は20本、永久歯は親知らずを除いて28本生えてきます。しかしまれに、生まれつき歯の本数が足りない子がいます。この状態を「先天性欠如歯」といいます。
先天性欠如歯は、歯が1〜2本だけ欠如することが多いものですが、なかには10本以上欠如することもあります(※1)。
日本小児歯科学会が7歳以上の子供を対象に行った全国調査によると、乳歯の先天性欠如があったのは0.5%、永久歯の先天性欠如があったのは10.1%となっています(※1)。
永久歯の先天性欠如は、男の子より女の子のほうがわずかに多く発症し、前から2番目と5番目の歯に欠如が多く見られます(※1)。
先天性欠如歯の原因は?
先天性欠如歯は、歯のもとになる「歯胚(しはい)」が何らかの理由で作られないことで起こります。その理由はよく分かっていませんが、遺伝や薬の副作用などが影響していると考えられています。
まれに、外胚葉異形成症などの全身疾患との関連が疑われることもあります。その場合、専門医による詳細な検査が必要です。
先天性欠如歯の治療法は?矯正できるの?
先天性欠如歯が分かったら、年齢や状況に応じて治療が行われます。
乳歯の先天性欠如歯
乳歯の先天性欠如歯の場合、乳歯の本数が足りないからといって、必ずしも永久歯の本数が足りなくなるわけではないので、ほとんどが経過観察になります(※2)。
永久歯に生え変わる7歳頃までに歯科医院を受診し、口の中全体を見ることができる「パノラマエックス線写真」を撮影して、永久歯に先天性欠如歯がないかを確認しましょう。
永久歯の先天性欠如歯
乳歯に先天性欠如歯がなかった場合でも、永久歯に先天性欠如歯が見られることがあります。
永久歯の先天性欠如歯を放置すると、歯並びが崩れ、顎関節症などにつながる恐れもあるため、治療が必要です。
永久歯に先天性欠如歯が見つかった場合、まずは、歯科医院で治療計画を立ててもらいましょう。一般的に下記のような治療が行われます。
乳歯をできるだけ長持ちさせる
永久歯が欠如していると、その生えるべき場所に乳歯が抜けずに残ったままになります。しかし、乳歯はエナメル質や象牙質が薄く、歯根も短いので、多くは20歳前後で抜けてしまいます。
まずは、歯並びや咬み合わせに問題が起きないよう、今ある乳歯をできるだけ長持ちさせ、永久歯の代わりの歯として使うことが優先されます。乳歯は永久歯より小さくて弱いうえに、虫歯になると進行しやすいので、できるだけ優しくしっかりと歯磨きを行い、虫歯の予防をすることが大切です。
永久歯の先天性欠如歯が見つかった場合は、家庭での予防に努めながら、歯科医院で定期的にケアを受けるようにしましょう(※1)。
矯正歯科治療を行う
乳歯が抜けてしまったら、顎のバランスや咬み合わせなどを見ながら、矯正歯科治療を行います。歯と歯の間のスペースを閉じたり、残った乳歯をあえて抜いてそのスペースを閉じたりすることで、咬み合わせを安定させます。
インプラントやブリッジを使う
乳歯が抜けてしまったり、足りない歯の本数が多かったりする場合は、インプラントやブリッジで歯を補うこともあります。
成長期であれば、足りない部分に部分入れ歯を使用することもあります。
先天性欠如歯の治療には保険が適用される?矯正の費用は?
先天性欠如歯の治療には、保険が適用される場合と、適用されない場合があります。
歯の矯正治療は、一般的に健康保険が適用されない自由診療です。そのため、かかる費用は歯科医院によって様々です。
一般的に乳歯のみの矯正費用は3~20万円、乳歯と永久歯が混ざった場合の矯正費用は、15~60万円、永久歯の矯正費用は、50~130万円が相場です(※2)。歯科医院によって費用に幅があるので、契約時にしっかり確認するようにしましょう。
また、先天性欠如歯が6本以上ある場合は、「指定自立支援医療機関(育成・更生医療)」の指定を受けた病院での治療に限って、健康保険が適用されます(※1)。市町村に申請を行う必要があるので、住んでいる地域に確認をしてみましょう。
先天性欠如歯の治療は家族みんなで取り組もう
歯が足りないことを一番気にしているのは本人です。歯を見せるのが嫌で、自分の笑顔に自信を持てなくなることがあるかもしれません。家族で協力して、心のケアもしてあげたいですね。
また先天性欠如歯の治療は、長期的になることがほとんどですが、治療を行えば少しずつ歯並びや咬み合わせが改善されます。通いやすく、信頼できる歯科医院を見つけることも大切ですよ。
※1 日本臨床矯正歯科医会