「クラミジア」と聞くと性病のイメージが強いかもしれませんが、いくつか種類があり、肺炎の原因になるものもあります。熱はそれほど高くなくても持続して、コンコンという咳や鼻水、喉の痛みなどが長く続く場合にはクラミジア肺炎も疑われます。今回はクラミジア肺炎について、原因や症状、検査・治療方法などをご説明します。
クラミジア肺炎とは?原因や症状は?
クラミジア肺炎とは、クラミジア属の微生物が肺などの呼吸器官に感染して起きる病気です。原因となるクラミジアによって、次のとおり2種類に分けられます(※1)。
クラミジア・トラコマティス
妊娠中にクラミジアに感染している母親から産道感染する肺炎で、新生児や生後3ヶ月くらいまでの赤ちゃんがほとんど。発熱はほとんどありませんが、結膜炎や鼻炎などから始まって、咳や多呼吸・全身を使う呼吸など、呼吸困難が起こることがあります。
大人の場合、性行為を通じてクラミジア・トラコマティスに感染すると、性器クラミジア感染症にかかることがありますが、免疫がよほど低下していない限り、肺炎になることはありません。
クラミジア・ニューモニアエ(肺炎クラミジア)
クラミジア・ニューモニアエは、乳幼児から高齢者まで幅広い年代の人に感染の恐れがあります。
感染して肺炎を発症しても38度以上の高熱が出ることは少なく、喉の痛みや長く続く乾いた咳、鼻水や鼻づまりなどが現れるのが特徴です。
子供は軽症ですむ場合がほとんどですが、体力や免疫力が落ちている人や、高齢者だと重症化する危険性もあります。
クラミジア肺炎の感染経路は?
クラミジア肺炎の感染経路は、原因となる病原体によって異なります(※1)。
クラミジア・トラコマティス
妊娠中にクラミジア・トラコマティスに感染すると、産道を通って生まれてくる赤ちゃんに約10%の確率で感染します。母子感染が起こった場合、約10~20%の確率で新生児肺炎を発症します(※2)。
そのため、妊婦はなるべく早く性器クラミジア感染症の検査を受け、感染が判明した場合は抗菌薬で治療を行うことが大切です。
クラミジア・ニューモニアエ(肺炎クラミジア)
クラミジア・ニューモニアエによるクラミジア肺炎は、感染者の咳や鼻水、唾液などで飛沫感染します。感染力はそれほど強くありませんが、感染してから発症までの潜伏期間が3~4週間と長いため、知らないうちに接触して感染が広がる傾向があります(※1)。
特に幼稚園や保育園、小学校など、集団行動をする場や、家庭内での感染には注意が必要です。一度感染してできた抗体には、次の感染を防ぐ効果はほとんどないため、何度も繰り返し感染する可能性があります。
クラミジア肺炎の検査・診断方法は?
クラミジア肺炎が疑われる症状が見られる場合、血液検査・胸部エックス線により肺の炎症状態を評価し、原因を調べます。
肺炎がある場合、血液検査で抗体を検出したり、咽頭のぬぐい液などから原因微生物の有無を評価する検査(PCR法など)で病原体のDNAを診断し、最終的に確定診断をします(※1)。
症状を見ただけでは、マイコプラズマ感染症(肺炎)に似ているため、病院できちんと検査を受け、適切な治療をすることが大切です。
クラミジア肺炎の治療法は?
クラミジアの増殖を抑えるために、患者や症状に合った抗菌薬が処方されます(※1)。
クラミジア・トラコマティスによる新生児肺炎の場合、赤ちゃんに副作用が少ないマクロライド系の抗菌薬で治療します。肺炎クラミジアが原因の場合は、マクロライド系のほか、大人にはテトラサイクリン系やニューキノロン系の抗菌薬が使われます。
クラミジアの悪化や再発を防ぐため、10日~1週間は服用を継続する必要があります。また、喉の痛みや鼻水、咳などがひどい場合は、対症療法として咳止めの薬などが処方されることもあります。
ほとんどの場合、飲み薬による治療で改善しますが、肺炎の程度がやや重い場合は、入院して点滴治療を行うケースもあります。
手洗いとうがいでクラミジア肺炎を予防しよう
クラミジア肺炎の主な原因は、「クラミジア・トラコマティス」と「クラミジア・ニューモニアエ(肺炎クラミジア)」の2つです。
クラミジア・トラコマティスによる肺炎は、母子感染によるものなので、生まれてくる赤ちゃんが発症しないよう、妊娠中に必ず検査と治療を受けましょう。クラミジア・ニューモニアエは、年齢に関係なく飛沫感染してしまうので、日頃から手洗い・うがいを徹底することが大切です。
病原体が口や鼻から体内に入り込まないようにしておけば、クラミジア肺炎以外の予防にもつながります。