たとえ視力が低くても、生まれてからずっとその状態の子どもにとっては、それが当たり前のこと。ケガの時のように子どもから訴えてくれることはありません。
それでは、大人はどうやって気付いてあげればいいのでしょうか。眼科医の富田香先生 にうかがいました。
富田 香先生
平和眼科(東京都豊島区)院長。慶應義塾大学医学部卒業。国立小児病院(現国立成育医療センター)に勤務、慶應義塾大学の非常勤講師として斜視・弱視外来を担当。斜視、弱視、先天異常、ロービジョンなどの小児眼科が専門。
弱視の発見に重要な3歳児健診
赤ちゃんの視力は、生後4週目ぐらいから急速に発達し、2歳ごろには0.5、5~6歳で1.0になり、6歳から8歳ぐらいにかけて大人と同じぐらいの視機能になるとされています。
一般的な近視などのトラブルは、一度発達した視力が低下するもので、小学入学以降になることが多く、その時期には個人差があります。
未就学時期に気を付けなくてはならないのは、視力が完成するまでの発達期に、正常に発達しない、いわゆる弱視といわれるトラブルです。
目の機能は、ピントを合わせたり、動くものを目で追うことで身体的感覚と結び付けたり、左右の映像を脳でひとつにまとめたりと、複合的に発達していきます。
8歳までにそれらが何らかの原因で発達せずに、見えにくい目の視力の発達が止まってしまうことを弱視といいます。
視力検査キットでまずはチェック!
弱視は、発見が早ければ治療していくことが可能なので、3歳児健診として市区町村から配布される眼科検査キットによる視力検査はとても重要な検査です。
就学前にも眼科の検査はありますが、5~6歳からでは弱視を改善し視力が出るようにすることが難しくなることが少なくありません。
眼科検査キットは、家庭で実施できるように、親子がゲーム感覚で進められる工夫が施されていていますが、ふざけてしまったり、見えていないのに記憶で伝えるなど正確な検査ができない場合は、眼科で検査をしてもらいましょう。
視力が0.2くらいあれば、見えてはいるので親は目のトラブルを気付かないこともあります。
絵本などに必要以上に目を近づける、左右の黒目のバランスが違うようだ、段差などで転びやすいといった様子がみられるときも、眼科を受診しましょう。
3歳以降の健診方法は?
3歳児以降になると「ランドルト環」という大人にはおなじみの「C」マークを使った健診ができますが、それ以前も「縞のうちわ」や「ドットカード」など、未就学児の視力検査には、年齢に応じてさまざまなものを使い、子どもの興味を示しながら検査します。
運動と視力の密接な関係
目にトラブルを抱えていると、ボールなど動いているものをうまくとらえることができなかったり、集中力が養われません。落ち着きがないなどの行動の原因が視力によるものだったというケースもあります。
逆にいえば、ボール遊びや体を動かす経験が、同時に視力の発達にも役立つのです。テレビやスマホの画面などは視力にもよい影響を与えないので、2歳までは控えましょう。
もしも弱視がみつかったら?
弱視の治療には、眼鏡を使うことが基本ですが、その様子を「小さいのにメガネなんてかわいそう」ととらえるのはNG。弱視は、3~4%の子どもにみつかる目のトラブルで、決して少ない数ではありません。
「えらいね、がんばっているね」と声かけし、改善を応援しましょう。
出典:miku 49号 2017年夏号
※掲載されている情報は2017年7月25日当時のものです。一部加筆修正しています。
絵本ナビ編集部