天気がいい日が多く、水遊びや公園遊びなどで子供たちが活発に遊ぶ夏。そんな夏の時期に流行するウイルス性感染症があります。
そこで今回は、衛生のエキスパート村松寿代先生に夏に流行る感染症とその対策について伺いました。
正しい情報を知って、ウイルスや細菌から家族を守りましょう。
監修 村松寿代先生
サラヤ株式会社サニテーション事業本部食品衛生サポート部食品衛生学術室室長。管理栄養士の資格も有し、スーパーや食品工場などで食品衛生や感染症予防の助言を行う。
夏の3大感染症って?流行する時期は?
子供たちがアクティブに動き回る夏。楽しい季節を元気に過ごすためにも、感染症から守ってあげたいですね。
プール熱とも呼ばれている咽頭結膜熱、ヘルパンギーナ、手足口病は、例年夏を中心として乳幼児に大きく流行する病気です。
これらの病気は一般的に夏風邪の一種とされていて、いずれもウイルスの感染が原因で発症するもの。特に例年、手足口病の患者数が多く報告されています。
家庭でできる予防を徹底して、子供の健康を守っていきましょう。
夏の主なウイルス感染症の流行時期
咽頭結膜熱(プール熱)
7~9月(ピーク:7月・8月)
ヘルパンギーナ
7~8月(ピーク:7月)
手足口病
7~8月(ピーク:7月)
夏の3大感染症の症状を知っておこう
それでは、この3大感染症はどのような症状がみられるのでしょうか。まずは症状について知っておきましょう。
咽頭結膜熱(プール熱)
咽頭結膜熱の原因はアデノウイルスです。感染者は5歳以下に多くみられます。
発症すると38~39度の発熱、咽頭炎(のどの腫れ、痛み)、結膜炎(結膜充血、目やにや痛み)などが、3~5日間程度続きます。特別な治療法がないので、症状を和らげる対症療法が中心になります。
ヘルパンギーナ
ヘルパンギーナを引き起こす主な原因は、コクサッキーウイルスA群です。ほかにコクサッキーウイルスB群、エコーウイルスなどのエンテロウイルスなども原因になります。感染者は4歳以下が多く1歳代が最も多いです。
突然の発熱(38~40度)に続き、のどが腫れ、上あごの奥に赤い水疱ができます。水疱が破れて、潰瘍になり痛みを伴うので、食事しにくくなったり機嫌が悪くなります。
脱水症状を起こすこともあります。全身のだるさや頭痛なども起こります。発熱は2~4日間で程度で解熱し、やや遅れて発疹も自然に消えます。通常は対症療法で、治れば元気になります。
手足口病
原因は主にコクサッキーウイルスA群16型やエンテロウイルス71型などのエンテロウイルスです。5歳以下が患者の9割程度を占め、特に3歳以下に多く見られます。
主に口の粘膜や手のひら、足の裏を中心に2~3mmの水疱ができますが、通常は3~7日で消えます。水疱はひじやひざ、おしりに出現することも。
口の中の水疱は、ヘルパンギーナより前側に現れることが多く、痛みを伴うこともあります。子供がかかると3分の1くらいが発熱しますが、ほとんどが38度以下です。特別な治療法がないので、対症療法が中心になります。
夏の3大感染症の予防対策!
ここでは、夏の3大感染症の予防対策と、ママたちが感じやすいウイルス対策のギモンについて、村松先生の回答をご紹介します。
予防対策
- 手洗いとうがいをしっかり行いましょう
- 指で目をこすったり、指をなめないように注意しましょう
- ドアノブや手すりなど、人の手がよく触れる場所をこまめに拭きましょう
- タオルやハンカチの共有は避けましょう
教えて! 村松先生
ウイルス対策のギモンQ&A
Q:タオルを共用するのはダメですか?
A:個人用のタオルがあると安心!
手を洗って清潔なつもりでも、正しい手洗いができていないとウイルスや細菌が残っています。誰かが使ったタオルを使うと、手や口にウイルスが付着して感染してしまうこともあるので、特に家族が感染症にかかっているときはタオルの共用はやめましょう。
Q:手洗いで注意すべきことは?
A:汚れが残りやすい利き手の洗い残し
手洗いが不十分になりやすいのは利き手の親指全体と、指の間、手の甲など。特にトイレの後などは親指の付け根部分などをていねいに洗いましょう。ママ・パパは子供にアドバイスを。
ハンドソープとアルコール消毒剤を使おう
家族を菌の感染から守るためにも、玄関で外から持ち込んだ菌を「アルコール消毒剤」でブロックしましょう。
そのあとに、ハンドソープでしっかり手洗いすることが肝心です。ママ・パパ自身がお手本になるように、家族の除菌と手洗いを習慣にしましょう。
アルコール消毒剤の選び方
アルコール消毒剤を選ぶ際は、「酸性アルコール消毒剤」を選ぶと効果的です。
この「酸性アルコール消毒剤」はアルコール製剤が効きづらいとされてきたノンエンベロープウイルス(※)を含む、幅広いウイルス・細菌に有効です。
アルコールの有効濃度は60~80%であること。目安は、ボトルに「火気厳禁」の表示があるものです。
ワクチンがないので手洗いと除菌が重要
咽頭結膜熱やヘルパンギーナ、手足口病には有効なワクチンはありません。そのため感染予防には、日常の衛生管理がとても重要になってきます。
ウイルスは感染者の便や水疱、のどの分泌物や、鼻水、目の分泌物などに含まれています。これらを触った手を介してウイルスが口や結膜に入ることで、感染していくのです。
症状が消失した後でも2週間~1カ月間は便の中にウイルスが排出されています。感染しても症状が出ないこともあるので、症状がないからといって、気がつかないうちに周囲に感染を拡大させてしまう可能性があるのです。
また、この3大感染症(咽頭結膜熱、ヘルパンギーナ、手足口病)の原因は一種類のウイルスではないため、一度かかってもまたかかってしまうことがあります。
感染症が流行しているときには、よく触れる所にウイルスが付いている可能性があるので、感染予防のためにもしっかり手洗いすることが最も重要なんです。
この記事で紹介した感染症は子供がかかりやすい病気ですが、大人でもかかることがあります。また、大人の手を介して子供に感染させることもあるため、家族みんなで手洗い・除菌を心がけてくださいね。
絵本ナビ編集部
※掲載されている情報は2018年7月24日当時のものです。一部加筆修正しています。