産後は赤ちゃんのお世話で疲れがたまりやすくなるだけでなく、ホルモンバランスの変化などにより、さまざまなトラブルが起こることがあります。産後のママが陥りやすいトラブルの原因と対処法について、産婦人科医の東哲徳先生に伺いました。
東 哲徳先生
東クリニック院長(東京都渋谷区)。東京医科大学卒業、日本産婦人科学会専門医、渋谷区産婦人科医会会長。東京思春期保健研究会会長もつとめ、「性の健康教育」をテーマに中学校や高校での講演活動も行う。
産後の体のトラブルの原因はホルモンバランスの変化
出産という大仕事が終わり、赤ちゃんとの生活がいよいよスタートとなりますが、産後の体のトラブルに悩むママも少なくありません。その原因のひとつとしてあげられるのが、ホルモンバランスの変化です。
妊娠中さかんに分泌されるのが、黄体ホルモン(プロゲステロン)と卵胞ホルモン(エストロゲン)。これらのホルモンには赤ちゃんに栄養を送るために必要な胎盤を完成させたり、子宮を大きくしたりなどの役割がありますが、産後は分泌量が急激に減少します。
このホルモン量の変化により、体にいろいろな変化がおこり、肌が敏感になってかゆみや湿疹、かさつきなどが起こる、シミができる、毛が抜けやすくなるなどのトラブルがあわられます。
産後に尿もれや腰痛などに悩まされるママも
また、妊娠中は大きくなった子宮の重みで膀胱が圧迫されて頻尿や尿もれが起きますが、産後もしばらくは子宮が大きいままで膀胱が圧迫され続けているため、頻尿や尿もれが起きやすくなります。
妊娠中の血行不良やお産のいきみで痔になったり、出産後、骨盤がやわらかくなっているため、腰痛に悩むママも。
さまざまな症状が出ると心配になりますが、これらのトラブルは、産後特有の症状で一時的なもの。子宮が回復し、体力が戻ると回復するケースがほとんどなので、それほど心配する必要はありません。
良質のタンパク質を取り入れバランスのとれた食生活と休養を心がけましょう。
ママの健診は、産後1ヶ月後の健診のみ。気になる場合は健診を待たずに、早めに婦人科を受診しましょう。
産後2ヶ月以内の発熱に注意しよう
注意したいのが、産後の発熱です。原因として考えられるのは、以下の3つ。
①母乳がたまり、つまった状態になる「うつ乳」
②会陰切開の後の縫合不全による感染
③子宮の中に胎盤等の組織の一部が残っていることによるもの
産後1〜2ヶ月くらいの間に熱が出た場合はこれらを疑い、早めに医療機関を受診しましょう。
産後の母乳トラブルで多いのが、乳腺炎。授乳中、乳腺が炎症を起こし、胸がはる、しこりができる、胸のあたりが痛む、発熱などの症状があらわれることがあります。
おっぱいは欲しがるだけ与え、赤ちゃんといっしょに授乳のリズムをつかんでいく、食生活を整えるなどで解消されることも多くあります。乳腺炎になると辛いので、助産師さんや母乳外来で相談し、おっぱいのケアを受けましょう。
今までに味わったことのない、さまざまな産後のトラブルを経験すると不安になりますが、ずっと続くものではありません。「いつかは治まる」とゆったりと構え、医師や看護師、助産師のアドバイスを受けながら、赤ちゃんと共にすこやかな毎日を過ごしてくださいね。
産後うつや育児ノイローゼにならないために
産後は、ホルモンバランスや環境の変化から、家事や育児に対する意欲や集中力が低下し、「産後うつ」や「育児ノイローゼ」になることも。
「気持ちが落ち込んだり涙もろくなる」、「子どもとの接し方がわからない」など精神的に不安定な状態が続く場合は、早めに産婦人科、小児科医、保健師に相談しましょう。
母親学級のママ同士連絡を取ったり、産後1ヶ月くらいになったら、自治体の子育てひろばなどに足を運び、ママ同士で情報交換したりするのもおすすめです。
産後のサポート体制を確認しておこう
産後体調が整っていないママ一人で赤ちゃんのお世話を担うのは大変。育児・家事など産後最低1ヶ月間(できれば3ヶ月間)のサポート体制を夫婦で考えておきましょう。
パパは育休を取るのか、祖父母や親戚のサポートを頼めるかを確認。行政の産褥シッターや産後ケア、産後サポートなどについても調べて、必要なものは登録などしておくのがおすすめです。
出典:miku 49号 2017年夏号
※掲載されている情報は2017年7月25日当時のものです。一部加筆修正しています。
絵本ナビ編集部