ホットフラッシュとは?更年期のほてり・のぼせ対策は?

監修医師 産婦人科医 城 伶史
城 伶史 日本産婦人科専門医。2008年東北大学医学部卒。初期臨床研修を終了後は、東北地方の中核病院で産婦人科専門研修を積み、専門医の取得後は大学病院で婦人科腫瘍部門での臨床試験に参加した経験もあります。現在は... 監修記事一覧へ

「ホットフラッシュ」というと聞き慣れないかもしれませんが、「ほてり、のぼせ、発汗」というとピンとくる人も多いかもしれませんね。ホットフラッシュは、更年期障害の症状のひとつです。今回は、ホットフラッシュとはどんな状態のことなのか、対策方法とあわせてご説明します。

更年期のホットフラッシュとは?

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ホットフラッシュは更年期障害の症状のひとつで、気温や運動量に関係なく顔がカーッと熱くなり、大量の汗をかいてのぼせたような状態になる、血管運動神経症状をいいます。

熱くなるのは顔や上半身だけで、足腰や手足は冷えに悩まされる人も少なくありません(※1)。

更年期障害には様々な症状がありますが、ホットフラッシュはとりわけよく見られる症状です(※2)。

更年期のホットフラッシュはなぜ起こるの?

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性成熟期(19歳頃〜45歳頃)にみられる月経周期は、脳の視床下部と下垂体、卵巣の複雑な連携によって維持されています。

しかし、40歳代になると卵巣の機能が次第に低下していくため、下垂体から「卵胞刺激ホルモン」がどんどん分泌されるようになります(※3)。これは、卵巣の機能が低下するのにともなって減少する「エストロゲン」の分泌を促すためです。

また、「プロゲステロン」を作る「黄体形成ホルモン」の分泌も増えるため、ホルモンのバランスが大きく変わってしまうことになります。

更年期障害のホットフラッシュは、過剰に分泌された黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモンg、自律神経の中枢に影響を及ぼすために起こるとされています(※1,2)。

更年期のホットフラッシュの対策法は?

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更年期障害のホットフラッシュは自律神経失調症状のひとつと定義され、ホルモン異常の影響が大きいとされています。

そのため、治療には不足しているエストロゲンを補う「ホルモン補充療法」がとられます(※2,3)。ホットフラッシュの症状の改善に、ホルモン補充療法は高い効き目があることが報告されています(※1)。

更年期障害のホットフラッシュの対策には、不足しているエストロゲンを補う目的で「エストロゲン・プロゲストーゲン合剤」を投与します。「エストロゲン単剤」と「プロゲストーゲン単剤」を併用することもあります。

子宮を摘出した人には「エストロゲン単剤」を投与します。

しかし、エストロゲンには子宮内膜を厚くする働きがあるため、乳がん(過去にかかったことがある場合も含む)や子宮内膜がんの人、妊娠が疑われる人には投与できません(※1)。

ホットフラッシュを改善するホルモン剤とは?

更年期障害のホットフラッシュに処方されるエストロゲン剤には、錠剤、貼り薬、ゲル状の塗り薬の3タイプがあります。

このエストロゲン剤には、乳房痛や不正性器出血といった副作用が見られる可能性があります。そのほか、乳がんや静脈血栓塞栓症、虚血性脳卒中が発生するリスクが高まります。

そのため、投与中〜中止後5年までは、婦人科検診や乳房検査を行うこと推奨されています(※2)。

手軽にできるホットフラッシュの対策とは?

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ホットフラッシュ対策にはホルモン補充療法だけでなく、手軽に自宅でできるものもあります。

大豆イソフラボンを摂る

更年期障害のホットフラッシュの対策には、植物エストロゲンとして知られる大豆イソフラボンが有効です。大豆イソフラボンを摂取することで、ホットフラッシュの頻度を減少させられることが報告されています(※1)。

しかし、1日あたり150mgの摂取を5年間続けると、子宮内膜増殖症の発症が増えることが確認されています。

そのため、内閣府食品安全委員会から「食品からの摂取に上乗せする安全な大豆イソフラボン摂取量を、アグリコン(非配糖体)型換算で、1日あたり30mgまで」との発表が出されています(※1)。

イソフラボンは、豆腐や納豆、きな粉、豆乳などに多く含まれています。豆腐は、絹ごし豆腐より木綿豆腐のほうが、イソフラボンを多く含んでいます。

豆腐を購入するときは木綿豆腐を選んだり、牛乳を豆乳に置き換えるなど、無理のない範囲で大豆イソフラボンを多く含む食材を取り入れてみましょう。

ポリフェノールを摂る

ブドウ種子ポリフェノールにも、ホットフラッシュを含む更年期障害の症状を改善させる効果があることが報告されています(※1)。

ポリフェノールが赤ワインに多く含まれていることはよく知られていますが、ぶどうやいちご、りんご、クランベリーなどの果物、黒豆や小豆などにも含まれていることが報告されています(※4)。

漢方薬を服用する

漢方薬は患者さんひとりひとりの症状に合わせて処方できるので、更年期障害の治療に適しているとされています(※1)。

更年期障害には「当帰芍薬散」「加味逍遙散」「桂枝茯苓丸」がよく処方されます。なかでも、「桂枝茯苓丸」は、ホットフラッシュに見られるのぼせを訴える人によく処方されます。

更年期障害のホットフラッシュは、適切な対策で軽減しよう

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暑くもない場所で、突然顔がほてり、汗をかくと焦ってしまいますよね。更年期障害を体験した人で、「ホットフラッシュがいちばん辛かった」と答えた人は少なくないそうです。

更年期障害が広く知られてきた現在では、ホルモン補充療法や漢方薬の服用など、ホットフラッシュの対策方法はたくさんあります。

更年期障害のホットフラッシュがつらいなと感じたら、婦人科や更年期外来を受診して、自分にあった対策法を探してみてくださいね。

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