「孤食」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。仕事などで忙しくしていると子供に1人で食事をしてもらう場面が出てくこともあると思いますが、そうした状況のことを指す言葉です。今、こうした子供の「孤食」が問題視されています。そこで今回は、孤食とはどのようなものなのか、問題点や原因は何なのか、「個食」とは何が違うのかについてご説明します。
孤食とは?
「孤食」とは、家族と一緒に暮らしているにもかかわらず、1人で食事をすることを指す言葉です(※1)。
平成24年の食育白書によると、朝食を1人で食べている小・中学生の割合は、小学5年生で約15%、中学2年生で約34%です。一方、夕食を1人で食べている割合は小学5年生で約2%、中学2年生で6%となっています(※2)。
つまり、少なくとも小学5年生は10人中1〜2人が、中学2年生は3人に1人が孤食を日常的に経験していることになります。小学校入学前の子供が孤食を経験する可能性は小学生よりも少ないでしょうが、ゼロではないかもしれませんね。
孤食の問題点は?
孤食の問題点としては、子供の心身の発達に何らかの影響が出る可能性が挙げられます。
食事はコミュニケーションの観点からもとても重要ですが、孤食の場合は1人っきりで食事を行うためコミュニケーションが図れません。また、「楽しくない」「つまらない」「さびいしい」といった気持ちを抱えながら食事をすることも多いでしょう。
そのため、孤食をしている子供は普段の生活でも疲れやすくなったり、イライラしたりすることが多い傾向にあるとされています(※2)。
さらに、コミュニケーションをせずに食事をすると、食べ物をよく噛まず早食いになりがちです。好きなものばかり食べて栄養が偏ってしまう可能性もあります。
その結果、子供の体に肥満などの異常が現れることもあります。
孤食の原因は?
孤食の原因はいくつかあると考えられます。以下にその一例をご紹介します。
家族の形の変化
2世帯や3世帯で同居することが多かった頃は、子供が一人っきりになることは少なく、誰かと一緒に食事をすることが当たり前でした。しかし、現代は核家族化が進んでいます。また、一人っ子の家庭やひとり親の家庭も増えているでしょう。
すると当然、子供が孤食をする機会が増えると考えられます。
共働き家庭の増加
夫婦共働きの家庭が増えたことも孤食が増えていることと関係していると考えられます。
仕事をしていると、どうしても平日の朝などは慌ただしくなりがちです。帰宅が夜遅くなってしまうこともあるでしょう。すると、パパとママが子供と一緒に食事をする時間を取れなくなってしまうことも多くなります。
孤食の対策は?
それでは、子供が孤食をせざるをえないときは、どうすればよいのでしょうか。いくつか対策がありますので、ご紹介します。これらを参考に、各家庭でできる範囲の対策を考えてみてください。
一緒に食事する曜日を決める
家族で一緒に食事をする曜日を決めてみてはどうでしょうか。毎日3食を一緒に食べることは難しいかもしれませんが、子供が1人きりで食事をせずにすむ状況を、少しでも多く作りたいですね。
子供と食事をするときのルールを決める
孤食によって、よく噛まずに食べる、好きなものばかり食べる、ということが問題視されているのはすでに述べた通りです。
そのため、10回以上噛んでから食べる、テレビを見ながら食事はしないなど、約束事を子供と一緒に考えて、1人で食事をするときもそれを守るように伝えてみてください。
実際にその約束を守っているか確かめることはできないかもしれませんが、子供も約束を意識して食事をするようになるかもしれませんよ。
ママ・パパの気持ちを伝える
孤食によって子供が「つまらない」「さびしい」という気持ちを抱えている可能性があるので、ママやパパの気持ちを子供に伝えることも重要でしょう。
例えば、料理と一緒に「1人にしてごめんね」といったようなメッセージをつけてみてはいかがでしょうか。ママやパパが自分のことを気にかけてくれている、ということがわかれば、子供の悲しい気持ちも和らぐかもしれません。
孤食と個食の違いは?
現代の食生活には、「孤食」以外にも、「個食」などの様々な「こしょく」が存在しており、問題視されています。以下にその一例をご紹介します(※1)。
個食
個食は、家族や友人と一緒に食事をしているけれど、それぞれ違う食べ物を食べていることを指す言葉です。食べているものが違うので、感想を言い合ったり、作った人の苦労を気遣ったりする心が育ちにくい可能性があります。
子食
子食とは、子供だけで食事をすることを指す言葉です。偏食になりやすいほか、親子の絆を深めにくいともされています。
粉食
粉食とは、パンや麺類など、小麦粉から作られたものばかり食べること指す言葉です。柔らかい食べ物が多いため、噛まずに飲み込む癖が身についてしまったり、食べ過ぎを招いたりする可能性もあります。
小食
小食とは、ダイエットのために必要以上に食事量を制限することを指す言葉です。小食の子供は体が丈夫になりにくく、無気力になる傾向があるとされています。
濃食
濃食とは、濃い味付けの食べ物ばかり食べることを指す言葉です。素材が持っている味や香りを感じることができないため、味覚が育ちにくくなる可能性があります。
固食
固食とは、同じものばかり食べることを指す言葉です。栄養バランスが偏るのはもちろんのこと、わがままで自己中心的な性格になる傾向があるとされています。
孤食にはできる範囲で対応しましょう
子供が1人で食事をする「孤食」は、子供の心と体に何らかの影響を与えると考えられています。しかし、その背景には家族の形や働き方の変化など、社会的な要因があるため、個人では解決できないケースもあります。
そのため、孤食は完全に解決することを目指すのではなく、家族で話し合い、自分たちでできる範囲で少しずつ改善していくことが大切です。すぐには解決できないかもしれませんが、家族にとって一番いい対策が見つかるといいですね。