乳歯が抜けたのに、いつまでたっても永久歯が生えてこない。あるいは、いつまでも乳歯が生え変わらない。子供の歯にそんな異常が見られたら心配になってしまいますよね。歯が生え変わる時期は個人差があるため、単に生えてくるのが遅いだけということもありますが、場合によっては治療が必要になることもあります。そこで今回は、永久歯が生えてこないときに慌てないために、永久歯が生えてこない原因と治療法、生えないままにしておくとどうなるのかを説明します。
永久歯の本数は?生え変わりの時期は?
永久歯とは、乳歯が抜けた後に生えてくる大人の歯のことです。乳歯の本数が20本に対し、永久歯は28本、親知らずも含めると32本あります。乳歯との違いは、歯の表面の白い部分である「エナメル質」やその内側にある「象牙質」が厚く、頑丈にできていることです。
永久歯が生え始めるのは一般的には6歳前後です。13歳くらいまでにはおおよそ生え揃うことが多いものの、親知らずも含めると17歳くらいまでかかる場合があります。
ただし、歯の生え変わりは個人差が大きく、生え変わる時期や順番は一人ひとり違います(※1)。そのため、人より1〜2年遅くても心配する必要はありません(※2)。
永久歯が生えてこない原因は?
乳歯が抜けたのになかなか永久歯が生えてこないと心配ですよね。
永久歯が生えてこない原因はいろいろあります。主な原因を以下で紹介します。
永久歯が生えてくるのが遅い
永久歯が歯茎の下で形作られ、生えてくる時期は、様々な理由によって遅くなってしまうことがあります。主な要因は以下の通りです(※3)。
● 歯の生える位置や方向の異常
● 歯が作られるときの異常
● 歯茎が厚すぎる
● 歯が生えてくる力が弱い
● 乳歯の抜ける時期が早すぎる
● 鎖骨頭蓋異骨症
● カルシウム代謝障害
● ビタミン欠乏症による障害
永久歯が隠れている
歯の形成はすでに完了しているにもかかわらず、生えてこずに歯茎の中にとどまっている場合があり、その状態を「歯の埋伏」と呼びます。
永久歯の埋伏が起きる一番の原因は、永久歯が生えてくるスペースが不足していることです。現代人はあごが小さくなってきているため、後から生えてくる永久歯ほど生える場所がないということが起こりやすくなります(※3,4)。
永久歯が生まれつき生えてこない
いつまでも乳歯が抜け落ちずに残っている場合は、生まれながらに乳歯が残っている部分の永久歯がない可能性があります。
生まれつき永久歯が生えてこない子供は近年増加傾向にあります。日本小児歯科学会の調査によると、生まれつき永久歯が生えてこない子供が約1割いるとされ、とくに前から2番目の側切歯と5番目の第2小臼歯が欠如している場合が多いことがわかっています。
生まれつきの場合、生えてこない永久歯は1〜2本であることが多いものの、まれに10本以上生えてこない場合もあります。原因は遺伝や全身疾患、薬の副作用などが考えられますが、今のところはっきりしたことはわかっていません(※2,3)。
永久歯が生えてこないと病気になる?
永久歯が埋伏している場合、嚢胞や腫瘍ができることがあり、それらが大きくなるとあごの骨を溶かしたり、神経を圧迫したりします(※4)。
もし生まれつき永久歯が生えてこないのであれば、大人になっても永久歯が生えるべき場所に乳歯が生えていることになります。その場合、噛み合わせには問題ありません。
ただし、乳歯は永久歯よりもエナメル質や象牙質が薄く、歯の根も短いため、あまり長持ちはせず、20歳前後で抜けてしまうことが多くあります。
抜けたままにしておくと、まわりの歯が動き、歯並びや噛み合わせが悪くなります。あごの成長に悪影響を与えたり、顎関節症になる可能性も否定できません。見た目も悪くなるので、心理的な影響をおよぼすこともあります(※2)。
永久歯が生えてこないのは治療できる?矯正が必要?
永久歯が生えてこないときの治療方法は、生えてこない原因や状況により異なります。
永久歯が生えてくるのが遅いとき
永久歯が歯茎の中で形作られるのが遅かったり、なかなか生えてこないときは、その永久歯を残したままでも問題ないかを判断します。
問題なさそうであれば、歯茎の下にある骨を削って穴を開けたり、歯茎を切除したり、永久歯を引っ張ったりして強制的に生えてくるようにします。
しかし、永久歯を残したままにしておくことができず、周囲の組織に障害を与える可能性があるときは抜いてしまいます(※3)。
永久歯が埋伏しているとき
埋伏している永久歯が隣の歯に悪影響を及ぼす恐れがあるときは抜いてしまいます。しかし、埋伏している永久歯を残しておいた方がいいと判断されたら、矯正治療によって生える位置を誘導したり、外科的に歯の移植を行ったりします(※3)。
永久歯が生まれつき生えてこないとき
パノラマエックス線写真を撮り、これから生える永久歯の数や生える方向などを確認します。その後、生えるべき永久歯がすべて生えた後、矯正治療により歯と歯の間のスペースを閉じ、よく噛める安定した噛み合わせを作ります。
また、乳歯が残っている場合はそれを抜いて空いたスペースを閉じてしまうこともあります。あるいは残っている乳歯をできるだけ長持ちさせるようにしたり、人口の歯などを入れる場合もあります(※2)。
永久歯が生えてこないときは医師に相談を
子供の永久歯が生えてこないと心配になりますよね。しかしこれまで述べてきたとおり、永久歯の生える時期には個人差があるため、人より1〜2年遅いからといってそれほど心配する必要はありません。
ただし1〜2年待っても永久歯が生えてこなかったり、どうしても心配だったりする場合は、まずは口腔外科のある病院や歯科医院で診察してもらいましょう。永久歯が生えてこない原因を調べ、治療方針を立ててもらえます。
歯は健康に欠かせません。永久歯がちゃんと生えてきているか、子供本人に聞いたり、歯を見せてもらったりしながら、定期的にチェックすることが大切ですよ。