妊娠しやすい体づくりのひとつとして、「気」や「血」のめぐりを良くして子宮の冷えを取り除く「子宮温活」が注目されています。子宮が冷えてしまうと、なぜ良くないのでしょうか?また、子宮を温めることがなぜ妊娠しやすさにつながると考えられているのでしょうか?今回は、子宮を冷やしてしまう生活習慣やその影響、子宮温活の方法や効果などをご説明します。
妊娠しやすい子宮の状態とは?
子宮の内側を覆う子宮内膜は、「卵胞ホルモン(エストロゲン)」と「黄体ホルモン(プロゲステロン)」という2つの女性ホルモンの作用によって、厚くなったり剥がれ落ちたりを繰り返しています。
妊娠しなかった場合に、不要になった子宮内膜が剥がれ、血液と一緒に体外に排出されるのが、「生理(月経)」です。
子宮内膜に受精卵が着床してはじめて「妊娠」が成立しますが、子宮内膜の厚さが十分でないと、受精卵を受け止めておくことができず、妊娠しづらくなってしまいます。
このことから、妊娠しやすい子宮の状態とは「子宮内膜の厚さが十分で、受精卵の着床に適している」ことといえます。
しかし、黄体機能不全などが起こっていると、エストロゲンとプロゲステロンが十分に作用せず、子宮内膜が十分に厚くならなかったり、生理でもないのに剥がれ落ちてしまったりして、受精卵がうまく着床できない、つまり妊娠が成立しない可能性が高まります(※1)。
そのほか、子宮奇形や子宮筋腫、子宮内膜炎なども、受精卵が子宮内膜に着床しにくい原因となります(※1)。
子宮温活が注目されている理由は?
前述のとおり、黄体機能不全は妊娠しづらい要因のひとつですが、黄体機能不全が起きる理由ははっきりとわかっていません。
しかし、あくまでも仮説ではありますが、西洋医学の分野では、冷え性や運動不足により血行不良になると、黄体がうまく機能しにくくなるのではないか、という可能性も指摘されています。
また東洋医学の見方では、「気」「血」「水」という3つの要素のバランスが崩れ、特に「気」と「血」が不足することで冷えが生じると、不妊につながることもあると考えられています。
こうした背景から、「気」や「血」のめぐりを良くし、子宮の冷えを取り除くことで妊娠しやすさを高める「子宮温活」が注目されているというわけです。
なお、子宮奇形や子宮筋腫、子宮内膜炎などに冷えが関係している、とは特に考えられておらず、もしこれらが不妊につながっている場合、医学的な治療を受ける必要があります(※1)。
子宮温活とは?体を冷やさない方法は?
日常生活のなかでできる「子宮温活」として、次のことを意識してみましょう。
体を温める
薄着や丈の短いスカートを避け、なるべく足首まで丈のあるズボンをはき、クーラーの効いた室内ではカーディガンなどの羽織もの、寒い季節は腹巻きなどを身につけることで、体を冷やさないようにしましょう。
また、下半身が特に冷えやすいという人には、半身浴がおすすめです。ストレスも冷えの原因となるので、お気に入りの入浴剤を入れるなどしてリラックスし、日頃の疲れを癒やしましょう。
ほどよく筋力をつける
筋肉は、体温を維持するために熱を生み出す役割を持っています。筋肉があまりついておらず、筋力が足りないとなかなか体温が上がりません。
ほどよく筋力をつけることで、基礎代謝がアップし、体温も高くなります。運動不足解消も兼ねて、軽く体を動かす習慣をつけられるといいですね。
毎日ウォーキングなどができれば理想ではありますが、忙しくてなかなか時間が取れないという人は、夜寝る前にスクワットをする、椅子に座っているときにかかとを上げたり下ろしたりするなど、すきま時間で筋力を鍛えましょう。
体を温める食材を摂る
食事にも気を配り、体を温めてくれる食材を積極的に摂りましょう。体を芯から温めてくれる生姜や火を通したにんにく、温かい料理や飲み物などを摂ると効果的です。
生野菜や冷たい飲み物を摂りすぎると体が冷えやすくなるので、ほどほどにしてくださいね。
漢方薬を飲む
もともと冷え性の人は、適切な漢方薬を飲むことで体質が改善されることがあります。
たとえば、八味地黄丸、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、加味逍遥散、桃核承気湯、温経湯、真武湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯といった漢方薬が、冷え性改善に効果的とされます(※2)。
漢方薬は、その人の体質や症状に合ったものを使うことが大切なので、はじめての人は漢方内科などで処方してもらうと安心です。
子宮温活のほかに大切な生活習慣は?
妊娠しやすい体づくりには、「子宮温活」で体を温めるだけでなく、生活習慣を整えることも大切です。
睡眠や体重管理
睡眠不足や過度のストレス、無理なダイエットなどによって脳の視床下部がダメージを受けると、ホルモンバランスが崩れ、排卵障害が起きてしまう恐れがあります(※1)。
そのうえ、ストレスや不規則な生活によって自律神経が乱れると、全身の筋肉が無意識にこわばってしまい、血行不良による冷えにもつながるので、「子宮温活」の効果が十分に得られなくなってしまいます。
基本的なことではありますが、妊活中は特に、十分な睡眠と適度なストレス発散、適切な体重管理を心がけましょう。
禁煙
タバコは体内に有害物質を取り込むだけでなく、血管の収縮を促します。血管が収縮すると子宮や卵巣のまわりに血液が巡りにくくなってしまいます。
妊娠後は、お腹の赤ちゃんへの影響を考えると禁煙するべきなので、妊活中からタバコはやめておくことをおすすめします。
子宮温活は自分の体と向き合うきっかけに
「子宮温活」によって冷えが改善されると、妊娠しやすい体づくりにつながると考えられているだけでなく、自分の体とじっくり向き合い、生活習慣を見直すきっかけにもなるかもしれません。
「気」や「血」のめぐりが悪いと、頭痛や肩こり、むくみなどを引き起こすこともあります。体を温める生活習慣を心がけることでこれらのマイナートラブルも少しずつ解消され、より前向きな気持ちで妊活に臨めるといいですね。