子宮筋腫が不妊の原因?治療や手術で妊娠の可能性は高まる?

監修医師 産婦人科医 間瀬 徳光
間瀬 徳光 2005年 山梨医科大学(現 山梨大学)医学部卒。板橋中央総合病院、沖縄県立中部病院などを経て、現在は医療法人工藤医院院長。産婦人科専門医、周産期専門医として、産科・婦人科のいずれも幅広く診療を行って... 監修記事一覧へ

子宮筋腫は基本的に良性の腫瘍なので、経過観察になることが多いのですが、不妊の原因になる可能性もある、ということを知っていますか?今回は、子宮筋腫と妊娠の関係について、不妊になる理由や妊娠の可否、妊娠中の影響などをご説明します。

子宮筋腫と妊娠の関係は?

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子宮筋腫とは、子宮を形成する筋肉の細胞が増えてできる良性腫瘍のことです。子宮内に腫瘍ができると聞くとぞっとするかもしれませんが、30歳以上の女性の約20〜30%に見られる、珍しくない病気です(※1)。

子宮筋腫が悪性腫瘍に変わる可能性はほとんどないので、過度に心配する必要はありません。ただ、子宮筋腫が大きくなってしまうと妊娠しづらくなったり、出産時のリスクが高まったりする可能性があるのも事実です。

子宮筋腫が不妊の原因になる?

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前提として、子宮筋腫があっても自然妊娠・出産はできます。不妊の原因になるかどうかは、子宮筋腫の大きさや発生場所によって異なります。

子宮筋腫は子宮の様々な場所にできますが、主に精子や受精卵の通り道となる「卵管」や、卵管口を圧迫する位置に腫瘍ができてしまうと、不妊の原因になります。

また、子宮筋腫ができて子宮の形がでこぼこになったりすると受精卵が着床しにくくなってしまいます。着床できたとしても、子宮が硬いことで初期流産になるリスクも出てきます。

不妊につながる子宮筋腫は、どうしてできるの?

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そもそも子宮筋腫の原因は、まだはっきりと解明されていません。ただ、初潮前の女性には見られないこと、閉経後には小さくなることから、エストロゲンという女性ホルモンが原因に関係しているのでは、と考えられています(※1)。

子宮筋腫の約95%が「子宮体部」から、約5%が「子宮頸部」から発生し、ごく稀に「子宮膣部」から発生します(※2)。

2つ以上の筋腫が同時発生することも珍しくなく、筋腫の位置や個数、大きさによって妊娠に影響が出てしまうこともあるのです。

子宮筋腫の不妊解消は、手術か薬物治療が必要?

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子宮筋腫は良性の腫瘍なので、経過観察が基本です。ただし、明らかに子宮筋腫が不妊の原因になっていたり、過多月経や貧血などの症状が重かったりする場合には、治療が必要になります。妊娠の可能性を高めるためにも、できるだけ早く対処するようにしましょう。

主な治療方法には、薬を投与して筋腫の肥大化を防ぐ「薬物療法」と、手術によって腫瘍や子宮を摘出する「手術療法」の2つがあります。

薬物療法

先ほどもご説明したとおり、子宮筋腫の発生・発育には女性ホルモンの「エストロゲン」が関係しているのではないか、と考えられています。そこで、「GnRHアゴニスト」などの薬剤によって、卵巣からのエストロゲン分泌量を抑え、子宮筋腫の発育を抑える方法を取ることもあります。

薬物治療だけで子宮筋腫を完治することは難しく、薬の投与を中止すると子宮筋腫が元の大きさに戻ってしまうこともあります。また、半年以上の投与で骨密度が低下するというデメリットもあるため、長期治療には向いていません。

また、漢方薬によってホルモンバランスを整え、根本的な体質改善を目指すのも薬物療法のひとつです。いずれにしても、筋腫の状態や体質によって服用する薬を判断する必要があるため、必ず医師や薬剤師に相談のうえ処方してもらいましょう。

手術療法

子宮そのものを摘出する「子宮全摘術」と、子宮を温存して筋腫を取り除く「筋腫核出術」があります。一般的に、妊娠を希望する場合は筋腫核出術が選択されます。

また、筋腫への栄養を断つ「子宮動脈塞栓術(UAE)」や、超音波の力で筋腫を小さくする「集束超音波治療(FUS)」、マイクロ波で子宮内膜を熱し、筋腫による影響を少なくする「子宮内膜アブレーション(MAE)」など、体にメスを入れずに筋腫を小さくする方法もあります。

しかし、これらはまだ実施件数が少なく、妊娠の可能性を下げるリスクもあるため、発展途上の治療法といえます。

子宮筋腫の不妊への治療は、どう選択するの?

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単純に子宮筋腫の大きさだけで治療方針を決定するのは難しいですが、日本産科婦人科学会のガイドラインによると、ひとつの目安として「直径が約5~6cm」ある場合、治療の対象となります(※3)。それまでは経過観察になることが多いですが、筋腫の数や場所によっては、小さくても治療を開始することもあります。

どの手術法を選択するかは、妊娠を希望するかどうかに関わります。一般的に、妊娠を希望していて、筋腫を取り除いた方が良いと判断された場合には、「筋腫核出術」が採用されます。

しかし、術後の再発率が15〜30%あることを考えると、治療方法やタイミングについて担当の医師とよく相談することが望ましいでしょう(※3)。

不妊治療中の子宮筋腫の治療は、医師とよく相談しよう

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子宮筋腫があっても妊娠できないわけではありませんが、不妊の原因になることがあるために無視できない症状です。

ただ、摘出手術となるとどの方法でも少なからず体に負担があるため、気軽に手術を選択するのは難しいですよね。不妊治療中に子宮筋腫が見つかった場合には、手術する必要があるのか、経過観察だけでも問題ないかなどを医師と相談しましょう。

子宮筋腫でも自然妊娠した、手術後に妊娠できた、という女性も多くいるので、心配しすぎず、落ち着いて対処法を検討してくださいね。

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