川崎病は心臓に病気が起きるの?合併症には心筋梗塞もある?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

あまり聞きなれないかもしれませんが、「川崎病」という、子供を中心に発症する病気があります。発症する原因は不明で、突然高熱などの症状が出たり、心臓に合併症を起こしたりする厄介な病気です。今回は、川崎病によって心臓にどんな合併症が起きるのかをご紹介します。

川崎病とは?

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川崎病とは、年間1万人以上の子供がかかる病気です。特に4歳以下が、発症者の80~85%を占めています(※1)。

また、感染件数は春から夏の季節的に多く、女の子より男の子の方が1.3倍ほど発症しやすい傾向にあります(※2)。

発症の原因として、過去にはコロナウイルス、EBウイルス、リケッチア、溶連菌、エンドトキシン、スーパー抗原などが疑われていましたが、いまだにわかっていません(※2)。

川崎病には、診断の基準にもされる、下記6つの特徴的な症状があります。

● 39~40度の高熱が5日以上続く
● 目が充血する
● 唇が腫れ、舌がいちごのようにブツブツと腫れる
● 発熱後2~3日で全身に発疹が出る
● 手足が赤く腫れ、10日後くらいに指先の皮がむける
● 発症してすぐにリンパ腺が腫れる

これらの症状のうち、5つ以上が見られる場合か、4つが見られるうえ心エコー検査で冠動脈にも異常が確認できると、川崎病と診断されます(※1)。

川崎病で心臓に合併症が起きる理由は?

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川崎病は、全身の血管に炎症が起きる病気です。血管の炎症は、体内に入ったウイルスや細菌を倒そうと血液中の白血球が増え、それらが血管の壁に集まることで起こります。

川崎病によって血管に炎症が起きるのも、このような原因のためだと考えられていますが、詳しいことはわかっていません(※3)。

このように炎症を起こすのは、心臓に栄養を送る冠動脈も例外ではありません。冠動脈に炎症が起きると、心臓にさまざまな合併症を引き起こします。

川崎病の心臓の合併症にはどんなものがある?心筋梗塞も起きる?

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川崎病で血管に炎症が起きると、心臓に、下記のような合併症が起こることがあります。

冠動脈瘤・巨大瘤

心臓に栄養や酸素を送る「冠動脈」という血管に炎症が起きると、炎症によって弱くなった血管の壁が、「冠動脈瘤」と呼ばれるこぶになります。また、その冠動脈瘤が8mm以上の大きさになると巨大瘤と呼ばれます。

冠動脈瘤ができると血液が通る道が狭くなるため、心臓に十分な血液が行き渡らなくなることもあります。

この冠動脈瘤は、数ヶ月で無くなる場合もあれば、川崎病の症状が消えた後まで残ることもあります(※3)。

心筋梗塞

川崎病による心筋梗塞は、冠動脈が詰まり、心臓の筋肉に酸素が供給されなくなることで起こります。心臓の細胞が死んで動かなくなり、場合によっては、死に至る危険性もあります。

救命処置が行われるまでの時間が短いほど、生存の可能性は高くなります。この心筋梗塞が起こる際には、冠動脈瘤がかなりの大きさになっている可能性があります。

冠動脈拡張

冠動脈拡張とは、血の流れが悪くなった血管を補うために、冠動脈が広がった状態です。

冠動脈拡張が悪化すると、冠動脈瘤ができやすくなります。

狭心症

狭心症は、冠動脈が狭くなり、心臓を動かす血液が不足した状態のことをいいます。

狭心症になると、胸に痛みや圧迫を感じることがあります。抗血小板薬などを投与することで治療を行います。

弁膜症

弁膜症とは、心臓が血液を全身に送るとき、逆流を防ぐために開いたり閉じたりする弁の動きが悪くなり、血液が逆流する病気です。川崎病による炎症で弁膜症になっても多くの場合は症状もなく、1ヶ月以内に治ります(※4)。

しかし、まれに弁が切れて後遺症として残ることもあります。

心筋炎

心筋炎とは、心臓の筋肉が炎症を起こす病気です。心臓の筋肉に炎症が起きると、心臓の血を送り出す機能が弱くなったり、リズムが乱れたりすることがあります。まれにですが、死に至る場合もあります(※5)。

心筋炎によって心臓の機能が低下しても、人工心肺装置をつける手術を行うことで、心臓の機能をサポートすることができます。

川崎病で心臓に合併症を起こさないためにはどうする?

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川崎病と診断されたら、原則として、入院して点滴による治療を行います。入院中は、合併症の予防のため、アスピリンと免疫グロブリンが使用される例が多くみられます(※2)。

川崎病にかかってから10日以内に治療を始め、症状を改善させることが、心臓に合併症を起こさないために効果が高いと考えられています。川崎病のような症状が現れたら、早めに病院を受診することが大切です。

川崎病で心臓の合併症が出たら早めの治療を

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心臓の病気と聞いて、悲観的になってしまう人は少なくないでしょう。川崎病の合併症によって死に至るケースがあるのは事実ですが、入院治療や手術によって治療できるものがあるのもまた、事実です。

最近では、血栓をできにくくする薬や血液が固まりにくくする薬なども、大人用のものは開発されており、今後、川崎病の子供に対する治療薬が作られることも期待されています(※2)。

川崎病にかかったら、心臓の合併症が出る、出ないに関わらず、早めに治療を行うことが何よりも大切です。医師としっかり相談し、前向きに治療に取り組めるといいですね。

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