子供は、風邪のウイルスや、細菌・マイコプラズマなどによる肺炎など、感染症にかかりやすいもの。それ自体は特に問題がないような感染症でも、こじらせてしまうと「無気肺」という合併症を引き起こすことがあります。無気肺を起こした場合は、どう対処すれば良いのでしょうか?今回は無気肺の原因や症状、治療法などをご説明します。
無気肺とは?
無気肺とは、肺のなかの空気量が減少し、容量が小さくなることで、肺がしぼんだ状態になってしまう病気です。しぼむ範囲が広がって重症化すると、肺全体がつぶれ、呼吸困難などを引き起こす危険性もあります。
肺がしぼむ原因は様々ですが、肺への気道がつまり、肺に空気が届かなくなることで起きるものが最も多くみられ、これは「閉塞性無気肺」と呼ばれます。肺全体ではなく、肺の先端部分に無気肺が生じることが特徴です。
無気肺の原因は?
無気肺は主に、下記のような原因によって引き起こされます。
肺炎や風邪などの感染症
肺炎や風邪が重症化すると、合併症として無気肺が引き起こされることがあります。大量の痰が気道を塞いでしまい、肺に空気が通らなくなるのです。
特に、6歳以上の子供がかかりやすいマイコプラズマ肺炎には注意が必要です。
気管支喘息
喘息によるひどい発作が起こると、気道が閉塞し、無気肺が起こることがあります。症状がひどいと、気圧が低下する深夜から午前8時頃の睡眠中に悪化することが多く、呼吸不全につながることもあります(※1)。
誤飲
小さな子供の場合、おもちゃなどの異物を誤飲することで気管支が詰まり、無気肺を発症することがあります。
腫瘍やリンパ節の腫れ
まれにではありますが、肺の周辺に腫瘍ができたり、リンパ節が腫れたりすることが原因となることもあります。気道を圧迫し、肺に空気が届かなくなることで、無気肺が起こります。
閉塞以外の原因
先に説明した原因は全て気道を閉塞するものですが、気胸や胸水などによって肺胞が圧迫される、肺胞を膨らませる働きがある「サーファクタント」という物質が減少するなど、気道の閉塞以外の原因で無気肺が起こることもあります。
これは、未熟児で生まれた場合に起こりやすいものです。
無気肺の症状は?
無気肺は自覚症状がないことが多く、特に子供は、無気肺になっていることに気づかない可能性もあります。
程度には個人差がありますが、無気肺が広範囲に広がると、呼吸困難や胸の痛み、咳、痰などの症状が現れます。人によっては、呼吸をしたときに「ヒューヒュー」といった喘鳴や、ひどい咳込み、発熱などがみられることもあります。
無気肺の診断方法は?レントゲンでわかるの?
無気肺は、症状の経過から、胸部X線写真やCTによって診断されます。肺が塞がれて無気肺になっていると、その部分が白い影になって現れます。
また、喘息による発作などで無気肺が起こった場合は、血液中に酸素が足りなくなる「低酸素血症」を併発することが多いため、指先などの酸素濃度をみることで無気肺を疑い、診断されることもあります。
無気肺の治療法は?
無気肺が見つかった場合、基本的にはその原因となっている病気の治療を優先的に行います。そして病気を治療しながら、気管支を塞いでいる異物や痰などを取り除きます。
異物を取り除く際は主に、背中や胸を手のひらでたたく「タッピング」や、去痰薬などを使って痰を切れやすくする方法が取られます。
無気肺は、きちんと治療しないと慢性化する恐れもある病気です。症状が緩和されても、病院から処方された薬は最後まで飲み切るようにしてください。
また、痰が絡みやすい場合は、水分を多く摂取して喉を潤すと楽になることもあるので、こまめに水分補給をさせてあげましょう。
治療を行っても症状が続く場合は、病院を受診し、医師に相談するようにしましょう。
無気肺は予防が大切
無気肺が起こる原因は様々ですが、予防のためには、感染症にかからないこと、かかっても重症化させないことが大切です。普段から手洗い・うがいを徹底し、風邪のような症状が現れたときは早めに治療を行いましょう。
また、小さな子供は家の中にある様々なものに興味をもって口に入れてしまうので、子供の手の届く範囲に小さいものは置かないようにして、誤飲防止にも努めたいですね。