妊婦はチーズを食べて良い?ナチュラル・クリーム・プロセス…種類別に解説

監修専門家 助産師 佐藤 裕子
佐藤 裕子 日本赤十字社助産師学校卒業後、大学病院総合周産期母子医療センターにて9年勤務。現在は神奈川県横浜市の助産院マタニティハウスSATOにて勤務しております。妊娠から出産、産後までトータルサポートのできる助... 監修記事一覧へ

妊娠中はお腹の赤ちゃんに悪影響を与えないように、日々の生活にも神経を使いますよね。特に食べ物は、ちょっとしたものでも「これは食べてもいいのかな?」と心配になるもの。そんな注意が必要な食べ物の一つに「チーズ」があります。実は、厚生労働省からは妊娠中に「ナチュラルチーズ」を食べることは控えるようにと指導が入っているのですが、意外と知らない人が多い食べ物なんです。そこで今回は妊婦さんがナチュラルチーズを避けた方がよい理由と、食べられるチーズと食べられないチーズの違いなどをご説明します。

妊婦はチーズを食べてはいけないの?

チーズ

妊娠中だからといって、すべてのチーズが禁止されているわけではありません。ただ、チーズのなかでも「ナチュラルチーズ」については、厚生労働省から「気をつけたほうが良い」と注意喚起されています(※1)

妊娠中にナチュラルチーズを避けた方が良い理由は、「リステリア菌」に感染する危険があるからです。

リステリア菌とは大腸菌などと同じように食中毒を引き起こすものとして知られています。リステリア菌はそれほど強い菌ではなく、感染しても重症化することは稀です。しかし、妊娠中は免疫力が低下しているため、健康な人なら問題ないリステリア菌であっても感染・重症化する恐れがあります。

日本での感染は年間200人ほどと多くありませんが、万が一のことを考えて妊娠中はナチュラルチーズを控えたほうがよいとされています。

妊娠中にリステリア菌に感染したときの胎児への影響は?

妊婦 お腹

リステリア菌に感染すると、ほかの食中毒と同じように発熱や筋肉痛、吐き気、下痢などが起こります。熱も上がりやすいので、インフルエンザなどの感染症と間違われることもあります。リステリア菌による食中毒がさらに悪化すると、頭痛や髄膜炎、敗血症、意識障害、痙攣などを起こし命に関わります。

妊娠中にリステリア菌に感染すると怖いのが、胎児への影響です。リステリア菌は胎盤を通じて胎児に感染することがわかっており、その結果、妊娠初期であれば流産、それ以降でも早産や死産を引き起こす可能性が高まります。

新生児が髄膜脳炎を発症することもあります。感染した場合の胎児や新生児の致死率は20〜30%とされています(※2)。

妊娠中に控える方がいいナチュラルチーズってどんなもの?

チーズ

妊娠中に食べてはいけないナチュラルチーズとはどういうものでしょうか?一般的には以下のものがナチュラルチーズと考えられています。

● モッツァレラチーズ
● カマンベールチーズ
● フロマージュブランチーズ
● リコッタチーズ
● ブリ・ド・モーチーズ
● ロックフォールチーズ
● ゴルゴンゾーラチーズ
● ブルーチーズ全般
● チェダーチーズ
● ゴーダチーズ
● パルミジャーノ・レジャーノチーズ(パルメザン)

ここで注意してほしいのが、輸入品のナチュラルチーズかどうかです。

実は日本で製造されているナチュラルチーズは、加熱殺菌が義務付けられています。リステリア菌は加熱により死滅することがわかっているので、日本で製造されたナチュラルチーズであれば生で食べても感染する可能性は基本的にありません。

そのため、ナチュラルチーズでも特に輸入品を避けてください。ナチュラルチーズを食べるときだけでなく、レアチーズケーキやベイクドチーズケーキ、ティラミス、ムースなどを食べるときにも注意が必要です。

使用されているチーズが国産品か輸入品かを常にチェックしてください。

また、ナチュラルチーズの他にも生ハムや馬刺し、スモークサーモン、パテなどにもリステリア菌が潜んでいる可能性があります。こちらもナチュラルチーズ同様に注意してくださいね(※1)。

妊娠中のナチュラルチーズでリステリア菌の感染を防ぐには?

リステリア菌は低温の環境でも、塩漬けにされた環境でも増殖する力があります。そのため、リステリア菌を予防するには加熱殺菌が一番です。

国産のナチュラルチーズはリステリア菌の危険性はほぼありませんが、万が一のことを考えて妊娠中は生でナチュラルチーズを食べるのは控えましょう。どうしても食べたいときには加熱したものを食べるようにしてくださいね。

妊娠中に食べられるチーズの種類は?プロセスやクリームは?

妊婦 食事 妊娠

前述の通り、ナチュラルチーズでも、加熱されていれば妊娠中に食べて問題ありません。75度で数分間加熱すればリステリア菌は完全に死滅するので、ピザやグラタン、ベイクドチーズケーキなどに入っているナチュラルチーズであれば輸入品でも安全です。

ただし、火がしっかりと通っていないケースも考えられるので、食べるときは十分に注意してください。

また、一般的に市販されているプロセスチーズは、ナチュラルチーズを加熱して溶かして作られたものなので、リステリア菌のことは気にせずに食べられます。

カッテージチーズやクリームチーズなども加熱処理されていれば大丈夫ですが、輸入品の場合は加熱処理されていないものもあるので、ナチュラルチーズ同様に注意しましょう。

妊娠中にナチュラルチーズを生で食べてしまったら?

妊娠中にナチュラルチーズを食べてしまったとしても、国内で製造されたものなら過度な心配はいりません。また、輸入品のナチュラルチーズを食べたからといって全員がリステリア菌に感染するというわけではありません。

ただし、万が一の可能性も考えられるので、輸入品のナチュラルチーズを食べてしまったときには、妊婦健診などでかかりつけの産婦人科医に相談してください。症状が見られたときに素早く対処することで重症化するのを防げるかもしれませんよ。

「ナチュラルチーズが好き」という人は多いと思いますが、妊娠中の間だけはグッと堪えましょう。どうしても食べたいときは加熱されたものを食べるようにして、マタニティライフを乗り切ってくださいね。

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