子供が間もなく中学校入学となると、勉強についていけるか、友達や先生とうまくやっていけるか、など不安になる保護者も多いようです。実際、小学生から中学生へとなったときに「中1ギャップ」という現象が起きることも。今回は、中1ギャップとは何か、その原因や対策についてご説明します。
中1ギャップとは?
中1ギャップとは、小学校を卒業して中学1年生になったときに新しい環境に馴染めないことから、不登校やいじめが起こったり、授業についていけなくなったりする現象のことです。常に不安を感じる、何事に対してもネガティブに考えてしまう、といった症状が出る子供もいます。
ただし、そもそも中1ギャップには明確な定義がなく、中学校入学をきっかけに急に不登校やいじめが増えるかどうかについても、はっきりとしたデータはないといわれています(※1)。
また、小中一貫校や小中高一貫校では、中学生になっても大きな環境の変化がないため、中1ギャップに陥る子供は少ないと考えられます。
このように、中1ギャップは必ずしも起きるものではなく、子供や保護者によって、その程度や捉え方も異なります。
中1ギャップの原因は?
中1ギャップの原因は、小学生から中学生になったときの、下記のような環境の変化が大きいと考えられています。
学習内容についていけない
小学校での学習は、できるだけ児童全員が身につくように復習をしながら授業が進んでいきます。しかし、中学校では学習内容の範囲が広くなるため、スピードが早くなります。復習を自分で行わなければ授業についていくのが難しくなり、自主学習の習慣も求められます。
学力差が出てくる
小学校でも小さなテストは行われますが、中学校になると学期毎に定期テストが実施され、学力が数字で評価されるようになります。学校によっては校内での順位を公表するところもあり、評価が明確になることでショックを受ける子供も少なくありません。
先生との距離が遠くなる
小学校では担任の先生が常に教室にいて、ほとんどの教科を指導しますが、中学校では教科ごとに先生が変わり、担任の先生と接する時間が少なくなります。そのため、悩みや不安があっても、担任の先生に相談しにくいことがあります。
上下関係に馴染めない
小学校では上の学年の子とも仲良く楽しく遊んでいたのに、中学校に上がると先輩・後輩という関係になって戸惑う子供もいます。
縦社会を経験することは社会に出たときに役立つともいわれますが、部活などで先輩・後輩の関係に理不尽なルールがあると、ストレスを感じてしまうこともあります。
友人関係のトラブル
中学校に入ると、他の小学校を卒業した生徒と一緒のクラスになります。新しい友人関係を築くのに苦労する子供も多く、ささいなことで仲間外れやいじめに発展するケースもあります。
最近では、スマートフォンや携帯電話を持っている中学生も多く、メールやSNSでのトラブルも発生しています。
生活の変化による体調不良
中学校生活が始まって、体力面で苦労する子供も少なくありません。これまでより登下校に時間がかかったり、部活の練習に追われたりして疲れが溜まり、体調不良に陥ることもあります。
また、環境の変化によるストレスで腹痛や頭痛を訴える子供もいます。
中1ギャップを防ぐための対策は?
中1ギャップは、家庭でのちょっとしたケアで事前に対策できることもあります。
子供が話しやすい環境を作る
中学生になると、小学生の頃に比べて子供自身も悩みを親に相談しにくくなり、一人で悩む傾向にあるため、これまで以上に親子のコミュニケーションが重要となります。
まずは、家庭内で子供が話しやすい環境を作ってあげることが大切です。子供が何かを話したそうにしているときは、耳を傾けて話を聞いてあげましょう。
つい何かを言いたくなってしまうかもしれませんが、親からのアドバイスは、ときに否定のように感じてしまうことがあります。最後まで子供の話を聞くことも大切なポイントです。
学習習慣をつける
できれば中学に入学する前から学習習慣をつけるようにしましょう。小学校から帰宅後、食事前の1時間はリビングで宿題をやる、テストが返ってきたら間違えた部分を復習するなど、時間を決めてルールに慣れさせると、習慣がつきやすくなります。
長時間続けることが難しい場合は、15分、30分、45分と徐々に伸ばしていくといいですよ。
親の実体験を話す
子供が不安を抱いているときは、パパやママの実体験を話すと気持ちが和らぐこともあります。成功体験ではなく、困ったこと、失敗したこと、それでも学校が楽しかったことなどを話してあげるといいでしょう。
中1ギャップに陥ったときはどうする?
子供が中1ギャップに陥ったと感じたときは、まず子供の様子をよく観察しましょう。むやみに「どうしたの?」「勉強についていけないの?」などと聞くのではなく、子供が自分から話すタイミングを待ったり、話したくなるような状況を作ったりしてください。
家庭内で解決できないときは、学校に相談しましょう。保護者と教員が連携し、学校ではどのような様子だったか、家庭ではどんな声かけをしたのか、それぞれが情報交換をしながら、子供をサポートしていく必要があります。
様々な要因が重なって、中学入学後しばらくして不登校になってしまう子供もいます。そのときは、ぐれぐれも子供を責めるような言葉は言わずに、ときには休むことも必要だということを落ち着いて理解してあげましょう。
中1ギャップを理解して子供にとって安心できる家庭作りを
小学校時代に優等生だった子供こそ、中学校に入ったときに変化に戸惑い、中1ギャップに陥りやすいといわれています。
中学生になると中1ギャップという現象が起きる可能性があること、また、その原因や対処法を事前に理解して、小学校高学年頃から親子で中学生活に向けた準備に取りかかれるといいですね。
一方で、中1ギャップを意識しすぎると、親が過干渉になったり子供が周りを気にしすぎたりしてしまうこともあります。
中学入学時に限らず、いつでも子供の気持ちを受け止められるようにして、安心できる家庭作りを心がけていけるといいですね。