出産後のママは、体の疲れと共に、精神的にも不安定になりがち。ひどい場合、産後うつ病に陥ってしまうケースも少なくありません。予防するには、どのようなことに心がけたら良いのでしょう。
産後うつに早めに気づくポイント、対処法などについて、産婦人科医の天神尚子先生に教えていただきました。
天神尚子先生
三鷹レディースクリニック院長(東京都三鷹市)。日本医科大学医学部卒業、日本産科婦人科学会認定専門医。妊娠中から産後の不調、生理不順、更年期障害など、女性のあらゆる不安や悩みに対応している。
マタニティブルーズが長引くと
産後うつ病へ発展
妊娠中から出産後にかけて、精神的な不調をマタニティブルーズといいます。
特に産後はホルモン分泌の急激な変化に伴い、気持ちが落ち込む、涙もろくなる、やる気が出ないなど、軽度のうつ症状を多くの人が経験します。
出産5日以内に発症し、2週間程度で自然に症状が消えていく人がほとんどで、心配いりません。
産後2週間以後も症状が解消されず続く場合には、「産後うつ病」の可能性が高まります。家事や育児に対する意欲や集中力が低下し、食欲不振、不眠、頭痛などの症状が現れてきます。
生活が一変することは、産後うつを招く一因です。体力が回復しないうちに、3時間おきの授乳、おむつ替え、入浴など、24時間体制のお世話に追われ、気分転換や十分な休養が取れず、一気に心身が疲弊します。
里帰り出産した人は、実家で過ごす間は問題なくても、自宅に戻って1ヶ月以内にうつ症状が現れることがあります。
睡眠不足が続いてストレスフルになると、脳内ホルモン(セロトニン、ノルアドレナリン)が減少し、ますます睡眠や精神面のコントロールがきかなくなります。悪循環に陥り、うつ病に発展することも。
赤ちゃんの眠りに合わせて睡眠をとり、無理をしないことが一番の対策です。
性格的に真面目で完璧主義の人、上手にストレスを発散できない人は、産後うつになりやすい傾向がありますので注意しましょう。
気分のアップダウンありませんか?
自分を客観視してみよう
この1週間を振り返り、以下の項目にイエスorノーで答えてみましょう。イエスが多いときは、うつの兆候が見られます。
一人で頑張らないで、早めに家族の助けを求め、産婦人科を受診しましょう。
周囲のパパや家族が、ママのいつもと違う様子(無口になる、部屋の中が片付いていない、笑顔が見られないなど)にいち早く気づいてあげることが大切です。
産後うつセルフチェック
- 笑うことやおもしろいと感じることが減った
- 物事を楽しみに待つことがなくなった
- 物事がうまくいかなくて、自分を不必要に責めた
- 理由もなく不安になったり心配になったりした
- 理由もなく恐怖に襲われた
- やるべきことが多くて、うまく対処できなかった
- 不幸な気分になり、よく眠れなかった
- 悲しくなったり、惨めな気持ちになった
- 自分が不幸だと感じて、泣けてきた
- 自分自身を傷つけるという考えが浮かんだ
家族の理解とサポートは必須
ひとりで育児をしないことが大事
新生児のお世話を産後体調が戻っていないママ一人でするのは大変。パートナーや家族がサポートするのが大前提です。
妊娠中から家族に産後うつについて知ってもらい、育児・家事分担を相談する、産褥シッターや一時保育・ベビーシッターなどの情報を調べたり登録するなど、サポート体制を準備しておきましょう。
家族が理解して育児と精神面のサポートをすること、ママの話を聞いてあげて寄り添うことが、産後うつ病の予防になります。
もし産後2週間を過ぎても精神的に不安定な状態が続くときは、早めに産婦人科医や保険師に相談しましょう。自治体の子育て支援センターなどが電話で相談に応じてくれますし、昼間、保育園や一時保育を利用することもできます。
生後1ヶ月を過ぎたら、赤ちゃんを抱っこしたりベビーカーに乗せて少しずつ近所をお散歩したり、子育てひろばに出向くのもいいでしょう。
子育てを一人で抱えこまず、声をあげて周囲に助けを求めることが大切です。
出典:miku42号 2015年秋号
※掲載されている情報は2015年9月25日当時のものです。一部加筆修正しています。
絵本ナビ編集部