ママにとって、異性である男の子の赤ちゃんを育てていると、わからないことや不安なことがたくさんありますよね。特に、おむつを替えているときにおちんちんや袋(陰嚢)に違和感を持っても、それが正常なことなのか、病院に行くべきなのか判断に迷うこともあるのではないでしょうか。
今回は、生まれてすぐの赤ちゃんに多く見られる「陰嚢水腫」という病気について、原因と症状、治療方法についてご紹介します。
陰嚢水腫とは?
陰嚢水腫とは、男の子特有の疾患で、精巣(睾丸)が入っている袋状の陰嚢に水がたまり、大きくふくらむのが特徴です。
通常は1歳ごろまでに自然治癒しますが、2~3歳になっても治らない場合には、手術をすることもあります。
生まれてすぐの赤ちゃんに陰嚢水腫が見られた場合、その後の自治体での4ヶ月健診や、個別で行われる健診(6ヶ月・1歳健診など)のときに、陰嚢水腫が消失したかどうかチェックされます。
陰嚢水腫の症状は?
精巣を包んでいる「精巣鞘膜」に水がたまることで陰嚢が大きくふくらみ、さわるとぷよぷよと柔らかい状態です。男の子には精巣が2個ありますが、陰嚢水腫の症状が見られるのは通常、片側の陰嚢だけなので、左右の大きさの違いから気づくことが多いようです。手で押しても特に痛みがあるわけではありません。
陰嚢水腫と間違えられやすい病気に、「小児鼠径ヘルニア」があります。これは、主に小腸や大腸など臓器の一部が飛び出す病気で、足の付け根にポッコリとした膨らみがあり、触ると「グジュ」という腸管の感触があります。一方で、陰嚢水腫は中にたまっているのが水なので、暗い所で陰嚢に懐中電灯の光を当てると、赤く透けて見えるのが特徴です(※1)。
そうは言っても、ママにとっては判断がつきにくいので、少しでも違和感があれば早めに小児科を受診し、陰嚢水腫なのか鼠径ヘルニアなのかを確かめることが大切です。
陰嚢水腫の原因は?
ママのお腹にいる赤ちゃんの精巣は、妊娠7~8週目に作られ、妊娠30~32週くらいまでに腹部から陰嚢の中へと下りてきます。精巣が通った道は自然に閉じるのが普通ですが、うまく閉じられなかった場合に陰嚢水腫が起こります(※2)。
また、赤ちゃんは精巣と腹腔膜がつながっているので、そこに腹水が移動してしまうことで水がたまる、ともいわれています(※1)。
陰嚢水腫は治療が必要?
陰嚢にたまった水は、1歳ごろまでに自然に体内に吸収されることがほとんどなので、特に治療をせず、しばらく経過観察をするのが一般的です。
しかし、2歳を過ぎても水がたまった状態が続いたり、陰嚢のふくらみが極端に大きかったり、時間が経つにつれてだんだん大きくなっていったりする場合には、手術を行います。足の付け根にある鼠径部を約2cm切開し、腹膜のしっぽである「腹膜鞘状突起」のつけ根を切り離して糸で縛ります(※3)。
20~30分で済む手術ですが、安全のため全身麻酔で実施します。術後の経過を見て発熱がなく、水を飲んだり排尿したりするのに問題がなければ、日帰り、もしくは翌日には退院できることが多いでしょう。
陰嚢水腫の手術後、注意するべきことは?
手術を終えて帰宅後、1~2度吐いたり、38度程度の熱が出たりすることもありますが、翌日にはおさまります。もし高熱や嘔吐が続くようであれば、担当医に連絡を取りましょう。
手術そのものは短時間で済みますが、保育園や幼稚園への登園は、念のため3~4日子供の様子を見てからにすると安心です。運動制限は基本的にありませんが、三輪車などの乗り物にまたがる遊びや、激しく体を動かす体操のクラスなどは術後2週間は参加しないよう指示される場合もあります(※3)。
陰嚢水腫は、将来不妊の原因になるの?
自分の子供に生殖器の病気が見つかると、「将来、この子が男性不妊になるのでは」と不安を覚えるパパやママも少なくないと思います。陰嚢水腫は悪性の腫瘍ではなく、精巣に水がたまった状態なので、医師の判断により経過観察を続けるとしても、精巣の成長を妨げることはありません(※3)。
しかし、陰嚢が腫れている原因が陰嚢水腫ではなく、精巣捻転や精巣上体炎である場合、発見・治療が遅れると精巣へのダメージが大きくなり、精子をつくる能力が減少するために不妊の原因の一つにもなります。
どちらも陰嚢水腫とは異なり、痛みを伴いますが、乳児の場合は自分で痛みを訴えるのが難しいものです。精巣捻転や精巣上体炎では顔色が悪くなる、股の部分が明らかに腫れて赤くなる、嘔吐するなどいつもとは違う様子が見らますので、すみやかに小児科で受診しましょう。
陰嚢水腫に気づいたら、焦らず小児科へ
赤ちゃんのお世話をしていると、どんな小さな体の変化でも心配になるものですよね。特に男の子の生殖器に異常が見つかると、「大事な部分なのに、大丈夫かしら」とママは焦ってしまうかもしれません。
しかし、今回ご紹介したとおり、陰嚢水腫は1歳ごろまでに自然治癒することがほとんどであり、もし治らなくても短時間の手術で治すことができます。
赤ちゃんのおむつを替えているときなどに、陰嚢の大きさが左右で違うことに気づいたら、まずは小児科に連れて行ってあげましょう。担当の医師と、治療方法などについて相談してみることが最良の道ですよ。