先天性胆道拡張症とは?原因や症状は?治療後の予後は良好?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

赤ちゃんには、食べたものを消化するための器官や仕組みが、生まれつき体に備わっています。しかし稀に、消化器官になんらかの異常を持って生まれることもあります。「先天性胆道拡張症」もその一つ。肝臓で作られた胆汁の通り道である「胆管」が拡張してしまう病気です。今回は先天性胆道拡張症について、原因や症状、治療法、手術後の予後についてご説明します。

先天性胆道拡張症とは?

疑問 クエスチョン

先天性胆道拡張症とは、本来は細い管状になっている「胆管」という器官が、生まれつき、広がって袋状や紡錘状になってしまっている疾患のことです。胆管は、肝臓から分泌された胆汁が、十二指腸へと送り出されるときの通り道の役割を持っています。

胆汁には、脂肪の消化・吸収を促す働きがありますが、胆管が拡張していると、胆汁の流れが悪くなり、腹痛や黄疸が起こったり、お腹にしこりができたりします。

先天性胆道拡張症は、小学生になる前に発見される場合がほとんどです。男の子よりも女の子の患者の方が約3~4倍多く、東洋人に発症しやすいという特徴があります(※1,2)。

逆に、胆道が何らかの原因で閉じていたり、詰まっていたりする「胆道閉鎖症」という病気もあります。こちらの病気については、下の関連記事を参考にしてください。

先天性胆道拡張症の原因は?

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先天性胆道拡張症の原因はまだはっきりと解明されていません。この病気を発症している赤ちゃんのほとんどに、胆管と膵管(膵臓で作られた膵液の通り道)が、十二指腸の手前で合わさって一つの管になってしまう奇形が見つかることから、ママのお腹にいたときの膵臓の形成異常が原因ではないか、という説もあります(※3)。

通常、胆管は十二指腸への出口のところで膵管と合流するしくみになっています。しかし、胆管と膵管がお互いの途中で合流してしまうと、胆管や膵管の中で膵液と胆汁が混じり合うため、消化酵素によって胆管の壁が傷つき、腹痛などの症状が現れます。

先天性胆道拡張症の症状は?

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下部の胆管が炎症によってむくむことで、胆汁が十二指腸へうまく流れず、黄疸が現れることがあります。また、白っぽい便が出たり出なかったりを繰り返すこともあります。

胆管が袋状に広がっている場合、お腹の右上のあたりを触るとしこりが見つかりますが、広がりが紡錘状だと、しこりを見つけにくくなります。

先ほども触れたとおり、胆管と膵管の合流異常があると、本来十二指腸の中で合わさるはずの膵液と胆汁が胆管や膵管の中で混ざり合ってしまい、そこで活性化された消化酵素で内部に炎症が起こります。この結果、腹痛が現れたり、吐き気や嘔吐を繰り返して自家中毒と診断されたりする子もいます。

先天性胆道拡張症の検査や診断方法は?

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先天性胆道拡張症の症状は個人差があるため、激しい腹痛や高熱で病院に駆け込んで判明することもあれば、ほとんど症状が現れずに健康診断の血液検査で肝機能の数値に異常が見つかって判明することもあります。

先天性胆道拡張症の疑いがある場合、超音波検査やCT検査、MRIなどによって胆管・膵管が拡張するなどの走行異常がないかを診断します。さらに、血液検査で肝臓や膵臓の機能を診ることも重要です。

先天性胆道拡張症の治療は手術が基本

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先天性胆道拡張症は、放っておくと症状を繰り返したり、将来的に癌や肝障害が起こるリスクが高まったりするので、根本的な治療には外科手術が必要です。

まず、広がった胆管を膵管との合流部近くで切除し、腸管を利用して新たな胆汁の通り道を作り、膵液と胆汁が混ざらないよう、2つの流れを分ける分流手術を行います。

しかし、胆管炎や膵炎などの炎症が起こっている場合は、手術を行う前に抗菌薬や消炎薬を投与し、炎症が治まるのを待つ方が良いとされます(※2)。

先天性胆道拡張症の予後は?

グラフ 低下 減少 はてな クエスチョン ?

先天性胆道拡張症の手術をした場合、一般的に予後は良好です。しかし、術後5~10年が経過してから、肝臓や膵臓に結石が見つかったり、胆管炎や膵炎などの合併症が起こったりすることもあります(※3)。

そのため、子供が先天性胆道拡張症と診断されたら、手術が終わって調子が良くなったとしても、病院で定期検診を受けることが大切です。

先天性胆道拡張症は予後も慎重に経過観察を

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先天性胆道拡張症の主な症状は、腹痛、黄疸、お腹の右上あたりのしこりですが、この3つが揃うことは症例のおよそ20~30%といわれます(※2)。いずれかの症状が現れたり、赤ちゃんの場合は不機嫌、食欲不振、嘔吐、白色の便(下痢)が見られたりした場合は、すぐに小児科を受診しましょう。

一般的に予後は良好とされていますが、数年たってから胆管炎などを起こすケースもあるため、手術後も慎重に子供の様子を見てあげてください。定期的に検査を受けていれば、合併症の早期発見・早期治療につながります。

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