「不妊」は女性側の問題、というイメージがある人もいるかもしれませんが、不妊の原因の約半数は男性側にあるといわれます。男性不妊の中でも「ED(勃起不全、勃起障害)」が有名ですが、ストレスやプレッシャーで「心因性ED」になる可能性があることをご存じですか?今回は、心因性EDの原因や症状のほか、治療法や改善方法などについてご紹介します。
心因性EDとは?症状は?
ED(勃起不全、勃起障害)とは、性交時に十分な勃起が得られなかったり、勃起を維持できなかったりすることで、満足な性交が行えない状態のことです。
男性器の血管は、心臓や脳の血管と比べると細くてデリケートなので、加齢や糖尿病や高血圧などの病気、喫煙や飲酒といった生活習慣、手術や薬などの影響で血管が不調をきたすと、EDを引き起こす可能性があります。
EDのなかでも、精神的なストレスやプレッシャー、トラウマなどによって起こるものを「心因性ED」と呼びます。一般的に、朝起きたときや睡眠中には勃起がある場合は、心因性EDだと考えられます(※1)。
体や生殖機能そのものに問題はなくても、他のEDと同じく性交に十分な勃起が得られません。しかし、障害となっている心理的要因を取り除くことで、回復が期待できます。
心因性EDの原因は?ストレス?
心因性EDを引き起こす主な心理的・精神的な要因には、「精神疾患」「現実心因」「深層心因」の3つがあります。
精神疾患
うつ病や躁(そう)病、不安神経症や統合失調症などの精神疾患が原因で、心因性EDになることがあります。広い意味では、アルコールや薬物への依存症も含みます。また、うつ病に使用する薬の副作用でEDになることもあります。
そもそも精神疾患も強いストレスによって引き起こされることがあり、EDをきっかけに病院を受診し、うつ病などと診断されるケースもあります。
現実心因
うつ病などの精神疾患がなくても、日常生活におけるストレスが原因でEDになることもあります。ずっと頭から離れない心配事があったりすると、脳が性的興奮を覚えなくなり、勃起障害が起こってしまいます。
たとえば、夫婦の不仲、男性器へのコンプレックス、性交が上手くできるかどうかの不安などを「現実心因」といいます。そのほか、人間関係の悩みや仕事のストレスといった、性行為とは直接関係のないことも、心因性EDを引き起こす可能性があります。
また最近では、不妊治療中のタイミング法によって妊娠を目指しているカップルで、「排卵日だから性交をしなければならない」という医師や妻からのプレッシャーを感じてEDになるケースも。
深層心因
日常生活から来るストレスではなく、心の奥に秘めた怒りや不安、トラウマといったものを「深層心因」と呼びます。
深層心因には、幼少期からのコンプレックスや同性愛、パートナーへの愛憎など様々なものがあります。本人が気づかないうちに無意識に抱えているケースも多く、一般的に現実心因よりも複雑とされます。
心因性EDの治療法は?薬で改善・克服できる?
心因性EDの治療法には、主に薬物療法と心理療法の2種類があります。心因性EDを引き起こしている原因に合わせて治療法を選び、改善・克服を目指します。
薬物療法(ED治療薬)
心因性EDに限らず、EDの治療薬として有名なものに「クエン酸シルデナフィル(商品名:バイアグラ)」があります。バイアグラは精力剤ではなく、平滑筋という筋肉を緩めて勃起しやすくする作用があるPDE5阻害薬の1種です。
また、「バルデナフィル(レビトラ)」にもバイアグラと同じような効果があり、服用後30分~4時間程度効果が続きます。
比較的新しく開発された「タダラフィル(シアリス)」は、作用時間が36時間と長いのが特長です。これは、服用してから36時間ずっと勃起するものではなく、性交に備えて36時間スタンバイしておける薬です(※2)。
これらのED治療薬の効果で性交が上手くいくと、その後は自信を取り戻して心因性EDを克服できる場合もあります。
心理療法
強い不安やトラウマ、性行為への嫌悪感などがあり、ED治療薬では十分な効果が出ないこともあります。その場合は、専門家によるカウンセリングや行動療法など、心理療法を行うことで心因性EDの克服を目指します。
心理療法は、じっくりと時間をかけて繰り返し行うのが基本なので、定期的に通院する必要があるケースも。パートナーとの関係性や夫婦生活に問題がある場合には、EDが見られる男性だけでなく、女性パートナーも一緒にカウンセリングなどを受けることもあります。
心因性EDはパートナーと二人三脚で克服を
男性の十分な勃起が起こるためには、身体的に健康であるだけでなく、精神的にもストレスがなく、女性パートナーとの信頼関係のもと性行為に臨める状態であることが不可欠です。
不妊治療中は特に、「早く子供が欲しい」と気が焦ってプレッシャーを感じてしまうことがあるかもしれませんが、まずは二人三脚でストレスを克服し、心の健康を取り戻すことが大切です。
「心因性EDかも…」と悩んだら、病院の泌尿器科や不妊専門のクリニックで相談してみましょう。