妊娠・出産体験は、十人十色。奇跡の出産には、それぞれ違ったドラマがあります。今回は、31歳で第一子である男の子を出産したSさんの体験談です。
ものすごくお腹が空く、生理が遅れてる……もしかして?
妊娠に気がついたのは、「いつもより頻繁にお腹が空く」「いますぐ何か食べないと我慢できない」という症状が4~5日続いたとき。生理も遅れていたので、妊娠検査薬を購入しました。
それまで妊娠や出産についてほとんど考えていなかったのに、妊娠検査薬を使う時点では、「もしかしてママになるのかも」と期待している自分がいました。だから、陽性のラインを見たときの気持ちは、安心したというのが一番。
一方で、夫は、突然のことにびっくりするばかり。彼がすぐにパソコンを開き「妊娠」と検索していたことは、今でも印象的です。
すぐにやってきた「地獄のつわり」
翌日、さっそく婦人科を受診。でも、まだ胎嚢が見えず、数日後に再受診することに。「胎嚢」という言葉を知ったのも、そのときが初めてでした。
1週間ほど経って胎嚢が確認でき、ひと安心。でも、その頃から「朝起きると胃がムカムカして気持ち悪い」「あらゆるにおいがダメ」「ずっと船酔いしている気分」といった症状が出てきました。
この症状を感じるようになったのは、7月の中旬頃。もともと暑さに弱い私にとっては地獄のような毎日です。
仕事を休む日が増え、妊娠判明から2週間後には職場の上司に妊娠したこと、つわりが重いことを伝え、しばらく休職することになりました。
つわり中でも食べられたもの
食欲はないけど、食べないとお腹が空いて余計に気持ち悪くなるという悪循環。
どうにか食べられたものは、
- そうめん
- 海苔巻き
- ヨーグルト
- アイスクリーム
一時期、なぜかバウムクーヘンが無性に食べたくなって夫に買ってきてもらったことも。
8月に入ると、ますます症状が重くなり体力も落ちていくばかり。妊婦健診で赤ちゃんの姿を見るときだけが喜びの時間で、あとは何に対しても気力がなく、何もできない自分にイライラして精神的にも参っていました。
ようやく終わったつわり…待望の安定期!
朝夕に少しずつ秋の風を感じるようになってきた頃、「つわりが落ち着いてきたかも」と思えるようになりました。妊娠13〜14週のことです。
つわり中は受けつけなかった揚げ物を美味しいと感じたときは、涙が出そうでした。
安定期は、身体面でも精神面でも穏やかに過ごしていましたが、それでも心配事は尽きませんでした。
たとえば、ちょっとおりものの量が増えると「破水してたらどうしよう」、段ボールの角にお尻をぶつけただけで「赤ちゃんに影響があるかも」などなど…。
食べ物に対しても敏感になり、あれは食べてよかったのだろうか、ちゃんと火が通っていただろうか、と食べた後に心配になることもありました。
妊娠20週頃に胎動を感じ始め、赤ちゃんの元気な動きがわかるようになってから、ようやく心配事が減っていった気がします。
出産予定日におしるし…と思ったら破水!
出産予定日5日前の健診では「まだしばらく生まれる気配はない」といわれました。
そして迎えた予定日当日。朝起きると生理痛のような痛みを感じ、「ついに来たかも!」と思ったものの痛みは遠のいていき、なんだか拍子抜け。
その日は3月だというのに日中は半袖で過ごせるくらい気温が上がった日でした。汗ばむので昼食後にシャワーを浴び、体力温存のために昼寝。
ふと、ショーツにシュワーっと温かいものを感じて目が覚め、「おしるしだ」と思いました。生理用ナプキンをあてたものの、しばらくするとまたシュワーっと出てくるので、「破水しちゃったかも」と慌てて病院へ連絡。
状況を伝えると、「おしるしのはずなのでしばらく様子を見てください」とのこと。でも、やっぱりどんどん出てくる。再び病院に電話をし、「破水みたいなので向かいます」と伝え、陣痛タクシーを呼び、夫と一緒に病院へ。
16時過ぎ、産婦人科病棟に到着。内診をすると、やはり破水でした。赤ちゃんにも母体にも影響はないとのことで、自然に陣痛が強まるのを待つことに。
急激に強くなる陣痛!予想してたのと違う…
18時になって夕食が出され、ほぼ完食。そのあと少しずつ痛みが強くなってきて、四つん這いの体勢をとって耐えました。それでも、まだまだ序の口。親や友人にメールを送ったり、夫と楽しくしゃべったりする余裕がありました。
20時で面会時間が終わるので、夫が付き添う場合は陣痛室へ移動するようにといわれ、「まだそれほど痛くないけど…」と思いながら陣痛室へ。
急にやってきた痛み
ところが、1時間ほどすると、みるみると痛みが強くなってきました。ジェットコースターのように急に強い痛みの波がやってきて、思わずナースコールを押して助産師さんに助けを求めました。子宮口の開き具合をチェックするも、まだ5cmくらい。
四つん這いになって、夫にテニスボールをお尻にあててもらうと少し楽になるものの、とにかく痛い。もっと落ち着いていられると思っていたのに、パニック状態になっていました。
トイレが辛い
一番辛かったのは、痛みがどんどん強くなるなかで排尿を済ませるようにといわれ、陣痛室の中にあるトイレに行ったとき。トイレの中で痛みの波が来て、うずくまりながら耐えました。
夢を見た
痛みと痛みの間に寝てしまい、夢を見たときは急に違う世界に飛んでしまったような不思議な気分でした。一瞬の夢から覚めて、また痛みとの戦い。
こんなに痛いのだから、もうさすがに分娩室に行けるだろうと思っても、なかなか子宮口が10cmにならず。「24時になったら分娩室へ移動しましょう」という助産師さんの言葉に少しほっとしたのが23時半頃でした。
振り返ればスピード安産!最後は吸引で
分娩室に移動して、いざ、いきんでみたものの、赤ちゃんが出てくる気配が全くない。「足をもっと開いて」「視線はおへその方に」と指導してもらっても、うまくできない。
陣痛室で痛みに耐えているときよりは辛くなかったものの、疲れが出てきて意識が朦朧としてきました。
気づけば分娩台に乗ってから2時間が経過。酸素マスクをつけられ、力を出せない私に、先生が「吸引にします?」と一言。「赤ちゃんに問題がないのであればお願いします」と即答。
2回ほど、いきみ逃しをしてから、「次で引っ張りますね」と助産師さんの声。最後の力を振り絞って「んーっ」といきんだと同時に、赤ちゃんが引っ張られてスルっと出ました。
大きな泣き声が聞こえたけど赤ちゃんの顔が見えないので、「どう?大丈夫?」と夫に何度も確認。私の体は、いきんだときの状態のまま固まって、足がガクガク震えていました。
のちに母子手帳を見ると、陣痛開始から出産まで6時間半と書かれていて、初産にしては早いほうで安産でしたが、痛みの苦しさは想像をはるかに越えていました。
生まれてきてくれてありがとう
誕生したての我が子を胸の上で抱っこしたとき、本当に生まれたんだなと実感。息子の顔を見て「ありがとう」と伝えました。
つわりの時期は本当に出産までたどり着くのだろうかと毎日思っていたものです。安定期も心配事が尽きなかったし、そして分娩台に上がってからも無事に生まれてくるのか不安でした。
そんな十月十日だったからこそ、生まれたときの喜びはそれまでの人生で一番のもの。あのときの気持ちを忘れずに、これからも息子の成長を見守っていきたいです。
▼先輩ママたちの出産体験談まとめ