激しい運動をしたわけではないのに、急に胸の鼓動が速くなると驚いてしまいますよね。動悸は更年期障害で見られる症状のひとつですが、不整脈などの病気が隠れていることもあり、注意が必要です。そこで今回は、更年期に動悸が起きる原因と対策についてご説明します。
更年期に起きる動悸とは?原因は?
動悸とは、運動をしたり緊張していたりするわけでもないのに心臓の鼓動が強くなる状態をいい、更年期障害の症状のひとつです。
更年期の動悸は、ホルモンバランスの大きな変化が原因とされています(※1)。
女性の月経周期は、脳の視床下部・下垂体、卵巣が複雑に連携し合うことで維持されています(※2)。
しかし、40代になって卵巣の機能が低下し始めると、「エストロゲン(卵胞ホルモン)」の分泌量が減少し、反対に「卵胞刺激ホルモン」と「黄体形成ホルモン」が過剰に分泌されるようになります。
過剰に分泌された2種類のホルモンが「自律神経中枢」に影響を及ぼすため、脈拍や呼吸、体温を自分でコントロールすることができなくなり、予期しないタイミングで動悸がしてしまうのです(※1)。
更年期に起きる動悸の症状とは?不整脈の可能性もある?
動悸といってもいろいろな症状があり、鼓動の打ち方で大きく3つに分けられます(※3)。いずれも、更年期によく見られる症状です。
1. 「ドカンドカン」と、鼓動がいつもより大きく打っているように感じる状態。
2. 「ドキドキ」と、脈拍が速くなっている状態。めまいや息切れが起きることもある。
3. 「ンッ」と、脈が飛ぶように感じる状態。
病院を受診した際、鼓動の打ち方を医師に尋ねられるので、動悸がしたら冷静に確認するようにしましょう。
更年期障害の主な動悸はドカンドカン
更年期障害の動悸の大半は、ドカンドカンという大きな鼓動と考えられています。
緊張しているときにも見られますが、そのほか、「1人でいるとき」「静かな場所にいるとき」「夜間」にもよく見られます(※3)。
ナイーブになりやすい状況にいるときに、普通に打っているはずの心臓の鼓動を大きく感じてしまう精神的な作用が原因と考えられています(※3)。
更年期に起きるドキドキは不整脈が原因のことも
ドキドキする動悸には、不整脈などの別の病気が隠れていることがあります。
不整脈は、30歳を越えると多くの人に軽いものが見られるため、更年期障害によって引き起こされる動悸と混同されることがあります(※4)。
脈が速くなるタイプの不整脈は、発作が起こると1分間に140〜150回も脈を打つことがありますが、フラついたり失神したりしなければ、あわてなくても大丈夫です(※3)。
ただし、脈と脈の感覚が不規則になったり、呼吸困難が見られたりしたら、心臓や血栓症などの病気が疑われることもあります(※3)。
ンッは不整脈の一種、期外収縮のことが大半
期外収縮とは、規則的に鼓動を打っている心臓が、突然、少しだけ速く脈を打つことをいいます。次の脈まで少し間が空くため、「ンッ」と詰まったように感じることが多いようです(※3)。
期外収縮は不整脈の一種で、多くの人に見られます。何度も頻繁に起こり、症状が気になる場合は治療を行います(※3)。
更年期障害の動悸の対策は?薬を使う?
更年期障害の動悸の治療には、欠乏しているホルモンを薬で補う「ホルモン補充療法」がよく取られます。
しかし、ホルモン補充療法は、乳がん(過去にかかった経験も含む)や子宮内膜がんの患者さんや、妊娠が疑われる人は行うことができません(※1)。
「漢方療法」もよく取られ、更年期障害の動悸には「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」「女神散(にょしんさん)」「柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」がよく処方されます(※2)。
更年期障害の動悸は予防できる?
更年期障害では、ホルモンバランスの変化に社会的なストレスや不安が合わさり、動悸などの症状を重くしていると考えられています(※1)。
そのため、日頃からストレスや疲れを溜めないようにすることが、動悸の予防につながります。ゆっくりお風呂に浸かったり、軽い運動をしたりと、自分なりのストレス解消法を持っておきましょう。
また、動悸が始まったら、心を落ち着けて腹式呼吸をしましょう。ゆっくりと息を吸い込んでお腹を膨らませ、時間をかけて吸い込んだ空気を吐き出します。
腹式呼吸には自律神経を整えてリラックスする働きがあるとされていて、症状が悪化するのを防ぐ効果が期待できますよ。
更年期障害の動悸は適切な治療で改善しよう
運動をしたわけでもないのに突然動悸がすると、驚いてしまいますよね。
動悸は更年期障害でよく見られる症状ですが、ときに、心臓の病気などが隠れていることもあります。
「最近、なんだか動悸がする」と思ったら、放っておかず、婦人科や更年期外来を受診して、適切な治療を受けるようにしてくださいね。