アナフィラクトイド紫斑病は、子供の血管に炎症を起こす病気のなかでは、一番発症頻度が高い病気と言われています(※1)。しかし、この病名を聞いたことないという人も少なくないでしょう。そこで今回は、アナフィラクトイド紫斑病とはどんな病気なのか、発症の原因や症状、治療法などをご紹介します。
アナフィラクトイド紫斑病とは?
アナフィラクトイド紫斑病とは、アレルギー性紫斑病やヘノッホ・シェーンライン紫斑病ともよばれる、血管に炎症が起こる病気です。年間で10万人あたり10~20人の子供が発症しており、血管炎としてはもっとも発症者が多い病気です(※1)。
アナフィラクトイド紫斑病は、3~10歳の年代で発症することが多く、女の子に比べ、男の子のほうが発症しやすい傾向があります(※1)。
紫斑病には、アナフィラクトイド紫斑病の他にも血小板減少性紫斑病などがありますが、アナフィラクトイド紫斑病は、特にアレルギー反応によって血管が炎症を起こす病気のことを指します。
アナフィラクトイド紫斑病の原因は?
アナフィラクトイド紫斑病の原因は、未だに明らかになっていません。しかし、発症した子供の約半分は、アナフィラクトイド紫斑病を発症する前に、扁桃炎などの上気道炎や、副鼻腔炎などの病気に感染しているとされています(※1)。
そのため、それらの原因となる溶連菌やマイコプラズマ、アデノウイルス、パルボウイルスB19といった菌やウイルス類が原因の可能性があるとして、研究が行われています。
アナフィラクトイド紫斑病の症状は?
アナフィラクトイド紫斑病の症状には次のようなものがあります。
アナフィラクトイド紫斑病の症状1:紫斑
アナフィラクトイド紫斑病で最も多く見られる症状に、「紫斑」と呼ばれる発疹があります。紫斑は皮膚内で出血が起こることで現れ、皮膚の一部が赤紫色になって、わずかに盛り上がります。
かゆみを伴うこの紫斑は、足の甲やすねなどの前面に現れるケースが多いですが、症状が重いときは、腕や胸、背中、顔などにも現れます。
まれに、紫斑のできている部分が、水ぶくれになったり、ただれたりすることもあります。
アナフィラクトイド紫斑病の症状2:部分的なむくみ
アナフィラクトイド紫斑病を発症すると、その約20%に部分的なむくみが現れます(※1)。
むくみは足首周辺やふくらはぎに痛みを伴う形で出ることが多いですが、まれに頭や顔、背中などにも同じ症状が現れることがあります。
アナフィラクトイド紫斑病の症状3:関節痛・関節炎
アナフィラクトイド紫斑病患者の約60~70%に、関節痛や関節炎の症状が現れます(※1)。
症状は左右対称に現れることが多く、場所は、ひざや足首の関節、手首の関節がほとんどです。歩けなくなるほどの痛みが出ることもあります。
アナフィラクトイド紫斑病の症状4:お腹の症状
患者の約50%に、腹痛、血便、陰嚢の腫れや痛み、おへその周辺の痛みなどの症状が現れます(※1)。
痛みは繰り返し起こり、合わせて嘔吐の症状が出ることもあります。また、腹痛は紫斑が出る前に現れる場合もあります。
アナフィラクトイド紫斑病の症状5:腎炎
アナフィラクトイド紫斑病の発症者のうち、約30~50%に血尿・蛋白尿などの尿の異常が現れ、腎炎と診断されることがあります(※1)。腎炎の症状は、紫斑病を発症してから3ヶ月以内に出ることが多いですが、なかには1年ほど経ってから現れる場合もあります。
紫斑病がもとで血尿・蛋白尿などが1年以上持続するなど腎炎を発症した場合、条件によっては「小児慢性特定疾患」と認められ、医療費助成の対象となる場合があります(※2)。
アナフィラクトイド紫斑病の症状6:頻度の低い症状
上記の症状の他にも、頭蓋骨の内側の出血や意識障害、けいれん、頭痛、半身麻痺、肺出血なども見られることがあります。
アナフィラクトイド紫斑病の治療法は?
アナフィラクトイド紫斑病は、原因がはっきりわかっていないため、根本原因を絶つような治療は行えません。そのため、基本的には症状を和らげる治療が中心になります。
一般的な関節痛に対してはアセトアミノフェンといった薬が使われることが多く、特に重い関節痛や腹痛の症状には、飲み薬や注射によってステロイドでの治療が行われる場合もあります。
また、嘔吐の症状がひどく、食事を摂れない場合などは、点滴を行うことが多くあります。
アナフィラクトイド紫斑病の発症前から溶連菌などに感染していた場合は、それらの菌に効果が高い、ペニシリン系の抗菌薬が使われる場合もあります。
アナフィラクトイド紫斑病は予後良好な病気
アナフィラクトイド紫斑病は、いまだに原因がはっきりしておらず、予防が難しい病気のひとつです。
条件によっては難病認定される腎炎を引き起こす可能性も高いものの、発症したとしても命に関わるほど悪化することはなく、完治することがほとんどです(※3)。
また、アナフィラクトイド紫斑病自体も治療によって症状を和らげることはできるため、突然発症したからといって悲観する必要はありません。
早めに治療を始めてあげれば、その分子供の負担も減ります。アナフィラクトイド紫斑病のような症状が現れた場合は、なるべく早く病院を受診しましょう。