女性にとって健康のバロメーターでもある「おりもの」。体に異常があると、おりものの色や臭いに変化が現れることがあります。特に黄緑色のおりものが出たときは、病気の可能性もあるので注意が必要です。今回は、おりものが黄緑色になる原因や、病気だったときの治療法、不妊との関係性についてご紹介します。
おりものの役割とは？
おりものとは、子宮内膜や子宮頸管、腟などからの分泌物や、古い細胞が混ざり合った粘液のことを指します。健康的な女性であれば、おりものが分泌されるのは普通のことです。
おりものには、以下のような役割があります。
雑菌やウイルスから子宮や卵巣を守る
子宮や卵巣へとつながる腟は、肛門や尿道の近くにあり、大腸菌やブドウ球菌といった雑菌が入りやすい構造になっています。これらの侵入を防いでいるのが、おりものです。
腟内に細菌が入ってしまったときにも、おりものが繁殖を防ぐ働きをしています。
受精しやすい環境をつくる
排卵日前後はおりものの量が増えますが、これは、精子が腟から子宮へと進みやすくするためです。
また普段の腟内は、菌の侵入を防ぐために酸性に保たれていますが、精子は酸性の環境が苦手で、長く生きることができません。そのため排卵日の前後は、おりものがアルカリ性に傾くことで精子を守り、受精のサポートをしています。
おりものが黄緑色だと病気なの？
正常なおりものは、生理周期に合わせて量が増えたり減ったり、ネバネバしたり水っぽくなったりと、状態が変化します。
ただし色に関しては、どの時期でも、無色透明か白っぽい色をしているのが基本です。そのため、黄緑色のおりものが出たときは、体に異変が起きている可能性があります。
黄緑色のおりものが出たときに疑われる病気に関しては、このあと詳しくご説明します。
黄緑色のおりもので疑われる病気の種類は？無臭のときは？
黄緑色のおりものが見られるときは、下記のような病気の可能性があります（※1,2）。
腟トリコモナス症
黄緑色や黄色、淡い灰色っぽい泡状のおりものが出てきたときには、腟トリコモナス症の疑いがあります。
腟トリコモナス症は、「トリコモナス原虫」という微生物に感染することで発症する性感染症です。性交以外にも、タオルや下着、浴槽などから感染します。
腟トリコモナス症になると、おりものが黄緑色っぽくなるだけでなく、分泌量が増え、においがきつく感じることが多くあります。かゆみが強く、腟の周りが赤くなるのも、一般的な症状です。
淋菌感染症
黄色や黄緑色の膿っぽいおりものが出ていて、悪臭を伴う場合は、淋菌感染症の疑いがあります。
おりものの症状の他に、不正出血、外陰部のかゆみ、発熱、下腹部痛などがみられることもありますが、女性は比較的症状が軽く、放置されやすい性感染症です。
細菌性腟炎
黄色から黄緑色で、膿っぽいおりものが大量に出るときは、細菌性腟炎の可能性があります。細菌性腟炎にかかっても、おりものの臭いは特に気にならないことが多いです。
細菌性腟炎は、ブドウ球菌や大腸菌などの細菌が腟内で増殖し、炎症を起こした状態です。思春期や初潮の前、閉経後にもみられることがあり、性交とは関係なく発症します。
黄緑色のおりものの治療法は？
黄緑色のおりものがみられたときには、どのような細菌に感染しているのかを診断し、原因に合わせた治療を行います。ただし、複数の菌が原因になっていることもあるため、治療を進めながら、方法を調整していくこともあります。
原因別の代表的な治療方法は、以下のとおりです（※1,2）。
腟トリコモナス症
腟トリコモナス症の治療には、「メトロニダゾール」や「チニダゾール」という経口薬が使用されます。
腟トリコモナス症の原因となるトリコモナス原虫は、パートナーの尿路系、直腸内などにも生息している可能性が高いので、原則として、発症した女性だけでなく、パートナーも一緒に治療を行います。
淋菌感染症
淋菌感染症の治療には、「セフォジジム」、「セフトリアキソン」、「スペクチノマイシン」という注射薬が使用されます。
以前は主に経口薬が使用されていましたが、近年、経口薬が効かない菌が増えてきています。そのため現在は、経口薬が使用されることもありますが、基本的には抗菌薬の注射で治療を行います。
細菌性腟炎
細菌性腟炎の治療では、腟内を洗浄したあと、「クロラムフェニコール」や「メトロニダゾール」などの抗菌薬を、腟内に7～10日間投与します。
黄緑色のおりものは不妊につながるの？
黄緑色のおりものが出たからといって、すぐに不妊につながるわけではありません。しかし原因である性感染症を放っておくと、子宮や卵巣の炎症につながり、不妊を引き起こす可能性もあります（※1）。
そうならないためにも、早めに治療を行うことが大切です。黄緑色のおりものが続くようであれば、一度婦人科を受診しましょう。
また、性感染症はパートナーも感染していることが多いので、どちらか一方が治療を行えば済むという問題ではありません。パートナーが治療をしないでいると、感染を繰り返し、不妊につながる恐れもあります。
黄緑色のおりものから性感染症がわかった場合、パートナーときちんと話し合い、一緒に治療することをおすすめします。
黄緑色のおりものは早めに対処しよう
おりものに対する悩みは、多くの女性が経験しているといわれています。しかし人と比べられないものなので、何が普通かわかりにくく、1人で悩んでいる人も少なくありません。
黄緑色のおりものが出るとびっくりするかもしれませんが、決して珍しい症状ではありません。恥ずかしがらず、早めに婦人科で相談してくださいね。早めに治療を行えば、不快な症状も軽くて済みますよ。
