妊婦健診の血液検査で何がわかる?妊娠初期と妊娠後期で項目が違う?

監修医師 産婦人科医 藤東 淳也
藤東 淳也 日本産科婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医、がん治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医で、現在は藤東クリニック院長... 監修記事一覧へ

妊婦健診ではたくさんの検査が行われますよね。その中に血液検査がありますが、いったい何を見ているのかご存じでしょうか。注射が苦手な人は憂鬱だと思いますが、血液検査は妊娠中の状態を知るための大切な検査です。

そこで今回は、妊婦健診の血液検査の目的や、妊娠初期・妊娠中期・妊娠後期で項目や検査内容が変わるのかなどをご説明します。

妊婦の血液は赤ちゃんの成長に欠かせないもの

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体中を巡って酸素や栄養を届け、一方で老廃物を運び出す役割を果たしているのが血液です。妊娠中は自分の体だけではなく、お腹の赤ちゃんにとっても同じ役割を果たしており、ママの血液は胎盤を通じて赤ちゃんの成長をサポートしているのです。

血液にトラブルがあれば、赤ちゃんにも直接影響を及ぼすということでもあるので、その状態をしっかりと管理する必要があります。

妊婦健診の血液検査の目的は?

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妊婦健診の血液検査では、血液を通じてママや赤ちゃんの状態を調べます。血液にはトラブルの兆候が現れやすいので、検査をしておけば何かあったときにすぐ対処でき、トラブルの予防に努めることもできるメリットがあります。

また、妊娠中に気をつけるべき病気や感染症にかかっていないかどうかもわかります。検査項目にはさまざまなものがあり、それぞれを細かくチェックして妊娠中の体調を管理しています。

妊婦健診の血液検査の項目は妊娠初期と妊娠後期で違う?

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妊婦健診の血液検査は、基本的に3回行われます。「妊娠初期」と「妊娠中期・妊娠後期」「臨月(妊娠36週〜)」に大きく分かれ、検査項目が変化します(※1)。

妊娠初期には、妊娠生活を送る上でママや胎児にリスクがないかを調べます。血液型を調べておいて、緊急の輸血が必要になった場合にも対処できるようにする目的もあります。

妊娠中期・後期と臨月の血液検査はほぼ同じで、妊娠糖尿病や貧血、HELLP症候群など、母体に起こるトラブルの可能性がないかを調べます。

そのほか、妊婦さんの状態によって臨時で血液検査が入ることがあります。

ちなみに、妊娠初期と妊娠中期・後期の血液検査を比較すると、妊娠初期のほうが検査項目が多いので検査費用が高くなります。

妊婦健診の補助券があっても、自己負担額で1万円以上となることも多いです。費用の面で不安があれば一度かかりつけの産婦人科に確認してください。

妊娠初期の血液検査では何がわかるの?

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妊娠初期の血液検査は、母子手帳が交付されてから初めての妊婦健診時に行われます。基本的な検査項目と任意で受けられる項目がありますが、住んでいる地域や病院によっても異なりますので、事前に確認してください。

ここでは、基本の検査項目を中心にご紹介します。

血液型検査

分娩時や手術が必要になった場合の緊急な輸血に備え、ABO式とRh式の血液型を調べます。

貧血検査

妊娠中は貧血になりやすくなるため、貧血の確認をします。貧血がある場合は、程度によっては食事指導を受けたり、鉄剤が処方されたりすることがあります。

梅毒血清反応検査

性感染症の梅毒に感染していると胎盤を通して赤ちゃんに感染し、流産や早産の危険性が高くなるので早期発見のために検査します。

HBs抗原検査

B型肝炎ウイルスに感染していないか調べ、分娩時や出産後に母子感染するのを予防します。

HCV抗体検査

C型肝炎ウイルスに感染していないかを調べます。陽性の場合の母子感染の確率は約10%といわれます(※2)。

風疹抗体検査

妊娠初期に風疹を発症すると、赤ちゃんが先天性の病気をもって産まれてくるリスクがあるため、風疹に対する免疫をもっているかを調べます。

不規則抗体検査

赤ちゃんと妊婦さんのABO血液型やRh血液型が異なる場合、「血液型不適合妊娠」になることがあります。 その場合、赤ちゃんに黄疸や貧血などを引き起こす「胎児新生児性溶血性疾患」が発症するリスクがあるため、事前に調べておきます。

血糖値検査

妊娠糖尿病になりやすいかどうかを確認するために、血糖値が正常値より高いかどうかを確認します。

トキソプラズマ抗体検査

生肉から感染する寄生虫の一種で、トキソプラズマ症に感染していないかを調べる検査です。妊娠初期の感染は先天異常や流産を起こす可能性が高くなります。

任意検査となりますが、実施しているところが多いようです。

HIV抗体検査

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染していないか調べます。感染していると分娩時に母子感染の可能性があります。

任意検査ですが実施しているところがほとんどです。

HTLV-I検査

ATL(成人T細胞白血病)のウイルスに感染していないか調べます。分娩時には問題ありませんが、母乳を通して赤ちゃんに感染する可能性があります。

任意検査ですが実施される場合が多いようです。

妊娠中期・後期、臨月の血液検査では何がわかるの?

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妊娠中期・妊娠後期、臨月の血液検査は、ママが安全に赤ちゃんを産むために必要な内容のものばかりです。赤ちゃんに感染するような病気があった場合は、予防や治療をすることもできます。

特に、貧血は血液検査をすることですぐにわかります。貧血は分娩時の出血量の増加や早産、産後の回復の遅れの原因となることもあります。

また、血液検査では血糖値もわかります。高いと妊娠糖尿病になる可能性があり、妊娠糖尿病になると赤ちゃんが大きくなりすぎて難産になるなどの出産時のリスクも高まります。

分娩や産後のことも考えて、しっかりと血液検査を受けて予防に努めたいですね。

妊婦健診の血液検査を受けるときに気をつけることは?

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妊婦健診で血液検査を受けるときは、医師からの指示に従うことが大切です。指示に沿わないと正しい数値が出ず、体の状態を正確に把握できなくなります。特に当日の朝食は食べてもよいかどうかは病院によって違うので、きちんと指示に従ってくださいね。

朝食を抜くように言われたのに食べてしまうと血糖値が高く出てしまいかねません。間違って食べてしまったときは検査を受ける前に、何時間前に食事をしたのかを報告するようにしてくださいね。

また、特に指示がなかったとしても前日に極端に食べ過ぎたり、控え過ぎたりするのもやめましょう。できれば21時以降の遅い時間の飲食は避け、いつも通りの生活をして検査してもらうことが大切です。

妊婦健診の血液検査で自分と赤ちゃんを守ろう

注射が苦手で血液検査が好きではないという人も多いと思いますが、自分の体とお腹の赤ちゃんの状態を知るためにはとても大切なものです。

早期に発見できればすぐに治療ができるので、トラブルが起きるのを予防したり、悪化を防いだりすることができますよ。

妊婦健診の重要性を理解した上で、安全なマタニティライフを過ごすための指針と考えて定期的に受けてくださいね。

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