子供の体に突然あざのようなものが現れる紫斑病。紫斑病にはさまざまな種類があり、そのなかにはアレルギー性紫斑病や血管性紫斑病と呼ばれるものもあります。今回は、紫斑病とはどんな病気なのか、紫斑病の原因や症状、治療法などをご紹介します。
紫斑病とは?腎炎を引き起こすの?
紫斑病とは、血管炎を引き起こす病気の総称です。発症者の約9割が3~10歳で、子供を中心に発症します(※1)。
1年間の発症率は子供10万人あたり14~20人となっていて、男の子のほうが女の子よりも1.2~1.8倍ほどかかりやすい傾向があります(※1)。
大人がかかることは少ないですが、発症した場合、腎炎などの合併症を発症することが多く見られます。
また、発症者は秋から春に多くみられ、夏は少ない傾向があります。
血管炎が起こるメカニズムによって、「アレルギー性紫斑病(アナフィラクトイド紫斑病)」や「血管性紫斑病」、「血小板減少性紫斑病」などに分類されます。ここからは、それぞれの特徴をご説明します。
アレルギー性紫斑病とは?
アレルギー性紫斑病とは、紫斑病のうち、アレルギーによって血管に炎症ができるもののことを指します。別名として、「アナフィラクトイド紫斑病」や「ヘノッホ・シェーンライン紫斑病」とも呼ばれています。
腎炎や腸重積といった合併症を引き起こすこともあります(※2)。
血管性紫斑病とは?
血管性紫斑病とは、紫斑病のうち、血管から血がにじみ出ることによって紫斑ができるもののことを言います。
血管性紫斑病を発症した場合、約半数が合併症として紫斑病性腎炎を起こします(※2)。
血小板減少性紫斑病とは
血小板減少性紫斑病とは、紫斑病のうち、血を止める働きをする血小板が減ることで、粘膜や皮膚から出血する病気です。
血小板減少性紫斑病にもいくつか種類がありますが、自分の体内の抗体によって血小板が破壊される特発性血小板減少性紫斑病や、血小板が血管のなかで固まってしまう、血栓性血小板減少性紫斑病などがあります(※2)。
特発性血小板減少性紫斑病は、難病に指定されています。
紫斑病の原因は?
紫斑病が発症する原因は明らかになっていませんが、溶連菌や風邪のウイルスなどの感染に続いて発症することが多いため、これらの菌やウイルスへの感染が原因ではないかと疑われています。
また、家族によってかかりやすい、かかりにくいという傾向があるため、遺伝的な要素もあると考えられています。
紫斑病の症状は?
紫斑病の特徴的な症状として、皮膚内で出血が起こることで現れる、「紫斑」があります。紫斑とは、紫色の発疹のことです。
現れる紫斑は、「触知性紫斑」という触ると軽いしこりを感じるものがほとんどで、子供の場合にはおしり、太もも、ひざ、腕などに見られることが多いです。乳児の場合は顔に紫斑が出ることもあります。
触知性紫斑以外の皮膚の症状としては、点状やまだら状の紫斑、水ぶくれ、血まめ、ただれ、手足の甲や目の周りのむくみなどがあります。
発症した子供の最大75%に、ひざや足首の関節炎や関節痛などが起こり、筋肉や骨などに影響が出ることがありますが、多くは2週間以内に治まります(※1)。
また、発症した子供の80%に、腹痛や嘔吐、下痢など、消化管の症状が現れることもあります(※1)。
腎臓に合併症が起こる例も約半数あり、血尿やタンパク尿、高血圧、腎炎などの症状が出る場合もあります(※1)。
さらに、高血圧や中枢神経の血管炎によって、脳内出血やけいれん、頭痛などが起こることもあります。
紫斑病の治療法は?
紫斑病の治療法は、紫斑病の分類ごとに異なります。
アレルギー性紫斑病の治療法
アレルギー性紫斑病は、特別な治療を行わなくても、安静にしていれば1ヶ月ほどで治ることがほとんどです。重症化を防ぐために免疫抑制薬が使われることもあります。
血管性紫斑病の治療法
血管性紫斑病は、安静にしていれば症状が治まることが多いですが、医師によっては入院を勧める場合もあるようです。腹痛や関節痛などがひどい場合は、痛み止めなどの対症療法が行われることもあります。
また、溶連菌に感染している場合は、抗菌薬が処方されることがあります。
血小板減少性紫斑病の治療法
血小板減少性紫斑病のうち、特発性血小板減少性紫斑病では、血液製剤であるガンマグロブリンやステロイド薬の服用、脾臓の摘出などによって治療が行われます。また、命に関わる状況の場合は、血小板の成分を輸血によって補うこともあります。
血栓性血小板減少性紫斑病の場合は、血液に含まれる血漿を分離させて入れ替える、血漿交換療法が高い効果があります。
紫斑病が疑われたら早めに病院へ
紫斑病は、アレルギー性のものや血小板の減少によるものなど、さまざまなメカニズムで血管に炎症が起こる病気です。しかし、それらの根本原因がウイルスや菌などの感染によるものなのか、遺伝によるものなのかは、はっきりわかっていないため、予防がしにくい病気です。
子供が紫斑病を発症した場合、ママ・パパとしては、特徴的なあざのような発疹もさることながら、合併症も心配なところでしょう。
起こりやすい合併症のひとつである紫斑病性腎炎を発症しても、条件によっては「小児慢性特定疾患」として医療費の補助を受けることができます(※4)。もし紫斑病のような症状が子供に現れたら、できるだけ早く病院を受診することをおすすめします。