プレパパの皆さん、パパninaru・育休の教科書へようこそ!
2022年10月から「産後パパ育休」という新しい制度がはじまりました。ニュース等では、別名「男性版産休」とも呼ばれており、パパの育休取得に追い風が吹いています。
一方で、
● 制度が複雑でわからない
● 育休の取得期間はどうやって決める?
● お金はどうなる?
● 相談する人がいなくて不安…
など、様々な疑問や不安を持つパパの声を聞くこともあります。
そこで「育休の教科書」では、「何から検討したらいいかわからない!」というプレパパのために、制度・お金・仕事という観点からパパ育休をわかりやすく解説していきます。
パパが「育休を取得する・取得しない」は、各家庭の事情に合わせて検討すべきことです。しかしその一方で「パパがはじめから育休を検討しない」ことは避けるべきだと考えています。
「育休取得率」ではなく、「育休検討率を100%に!」というのがパパninaruの願いです。
少しでも皆さんのお役に立てれば嬉しいです。それでは、ご覧ください!
● 育休を考える3つのポイント!
①:取得期間を検討しよう
②:育休中のお金の仕組みを知ろう
③:職場・上司と仕事を調整しよう
パパが取得できる育休制度は3つあります。まずは自分にあった取得パターンを検討するところからはじめましょう!
制度①「産後パパ育休」
「産後パパ育休(出生時育児休業)」とは、通常の育児休業とは別に、パパが赤ちゃんの出生日から8週間以内に4週間の育児休業を取得できる制度です。
柔軟性が高く、産後のダメージが大きいママを集中的にサポートできますよ。
産後パパ育休の特徴は、主に以下の4点です。
● 取得の申請期限は原則2週間前
● 2回に分割して取得できる
● 休業中も一定量働いてOK
▼産後パパ育休の詳細はこちら
制度②「育児休業(育休)」
育児休業とは、原則として1歳に満たない子どもを養育するために、労働者が取得できる休業のこと。
育児・介護休業法という法律に基づいて定められており、職場へ申告することで取得できます。
育児休業の特徴は、主に以下の4点です。
● 取得の申請期限は原則4週間前
● 2回に分割して取得できる
● 例外的(保育園入園希望を出したが入れない場合など)に、1歳6ヶ月または2歳まで延長ができる
▼育児休業の詳細はこちら
制度③「パパ・ママ育休プラス」
パパ・ママ育休プラスとは、パパとママの二人の育児休業期間を足して、子どもが1歳2ヶ月になるまで延長できる制度です。
ただしパパ、ママ共に、合計して取得できる育児休業期間は1年以内です。
パパ・ママ育休プラスの特徴は、主に以下の3点です。
● どちらかが育休を取らない(取れない)場合は利用できない
● 途中、パパ・ママが共に育休を取っていない期間があってもOK
▼パパ・ママ育休プラスの詳細はこちら
3つの制度を使うと、どんなパターンで育休を取れる?
産後パパ育休、育児休業、パパ・ママ育休プラスという3つの制度の概要を知っても、「要するに、どういうパターンで育休を取ることができるの?」と疑問を持った方は多いのではないでしょうか。
それぞれ利便性が考慮された制度ですが、一方でわかりにくくなってしまっているのも事実。
そこで以下では、いくつか具体的な育休取得のパターンをご紹介します。
①出産直前に育休を取る必要性が生じた場合
パパは当初は育休を取る予定がなかったものの、出産直前に育休を取らなければいけなくなった場合は、取得申請期限が2週間前と最も短い「産後パパ育休」を活用するのがおすすめ。
産後パパ育休は出産後8週間以内に4週間のみですが、その後に育児休業を取ることもできます。また産後パパ育休は休業中も一定量働きやすいのもメリット。緊急かつ一時的に育休を取りたいときに便利な仕組みです。
②仕事が忙しくまとめて休めない場合
仕事が忙しくてまとまった休みが取れない場合は、仕事をしながらでも取得できる「産後パパ育休」を活用しましょう。
産後パパ育休は、労使協定を締結していれば一定の条件内で就業が可能なため、「週5日のうち2日間は午前中働いて、残りは休む」のような柔軟な取り方ができます。
また分割して取得ができるので、仕事が休めない期間は一度復帰して、再度休むこともできます。産後パパ育休中の就業や分割のプランは、事前に勤務先と相談しましょう。
③ママが早めに仕事復帰を希望していて、育休をバトンタッチしたい場合
例えば、ママは産休育休で仕事を休む期間をできるだけ短くしたいけれど、保育園入園のタイミングと合わせられそうにない…というときが、このパターンに該当します。
パパ・ママ育休プラスを利用すれば、ママの育休復帰のタイミングでパパに育休をバトンタッチして、1歳2ヶ月まで延長して取得することができます。
また、夫婦の育休の時期を重ねたり、間を空けてその期間は子どもを祖父母に預けたりなど、柔軟な取り方ができます。
④祖父母のサポートとパパの育休を交互に行いたい場合
例えば「祖父母のサポートとパパ(&ママ)の育休を交互に行って、0歳の育児を乗り切ろう」という場合がこちらに該当するパターン。
産後パパ育休と通常の育児休業は、どちらも2回に分割して取得できるので、これを活用すればOK。両方分割して取得すれば、パパは最大4回に分けて育休を取ることができます。
祖父母がサポートできる時期や、仕事の繁忙期にあわせ、かなり柔軟に育休のプランを組むことができるのです。
⑤パパとママの2人体制でできるだけ長く育休を取りたい場合
「ママもパパも育休をしっかり取って、子どもや家族と向き合う時間をつくりたい」という場合は、パパは産後パパ育休を使う必要はなく、出産予定日から通常の育児休業を使えばいいでしょう。
通常はママ・パパ共に最長1歳までですが、子どもが1歳になる時点で、保育園に入れない、パートナーが病気などで養育が困難な場合は、例外的に1歳6ヶ月または2歳まで延長ができます。
次からは、具体的に育休について検討する際に最初に考えるべき3つのポイントを解説します!
まずは「どのくらいの期間、育休を取るか」という問題です。育児休業は、最短1日から、最長で1年(条件が揃えば2年)取得できます。
しかし取得期間の目安がないと、「どれくらい取るのがいいんだろう」と悩む方も多いですよね。
そこで、育休を取得した先輩パパ・ママの満足度から考えてみましょう。
育休取得期間の目安を「満足度」から調査!
ninaruシリーズユーザーを対象に、先輩ママには「パパに取ってほしい理想の育休取得期間」を、先輩パパには「実際に取得した育休期間と満足度」を聞いてみました。
ママがパパに望む育休は「1ヶ月以上」
先輩ママに「パパに取ってほしい理想の育休取得期間」を聞いた結果、1ヶ月以上が94%と、ほとんどのママが最低1ヶ月は取得してほしいと思っていることが分かりました。
「産褥期」と呼ばれる産後6〜8週間は、「出産してから体が完全に回復するまで」の期間。体も心もまだまだ回復の途中で休む間もなく怒涛の育児が始まるため、「しっかりサポートしてほしい」と望むママが多いようです。
先輩ママA
取得希望期間:1ヶ月〜3ヶ月未満
体調が回復するのに2週間以上かかったし、1ヶ月健診が終わるまではバタバタだったので、1ヶ月以上育休をとってもらえたら安心できると思います。
先輩
ママB
取得希望期間:3ヶ月〜6ヶ月未満
子どもの夜泣きも多く、睡眠時間が取りづらかったので半年くらいは休んで欲しいです。離乳食が始まる時期なのでできれば一緒にやって欲しいですね。
育休が1ヶ月未満のパパは満足度が低い
では次に、実際に育休を取得した先輩パパの満足度の結果です。
平均点は10点中7.5点で、平均を唯一下回っていたのが、取得期間が「1ヶ月未満」の場合。1ヶ月未満の育休では、パパの満足度も低いことがわかりました。
先輩
パパA
取得期間:2週間未満
お金の心配や仕事の忙しさもあり、取った育休は2週間ほどでした。今となっては子どもとの時間やママの負担も考えてもう少し長く取得したかったと後悔しています。
先輩
パパB
取得期間:半年
約半年取得しました。産まれてすぐの子どもと接する機会はとても貴重な時間でした。もちろん大変ではありましたが、その苦労をママと共有できたことで夫婦の絆も強くなった気がします。
育休取得期間:パパの育休は1ヶ月以上を基準に検討しよう!
これらの調査から「パパが育休を取るなら、1ヶ月以上取ったほうがママもパパ自身も満足できる」ということがわかりました。
取得期間の目安がわからず迷っているパパは、「1ヶ月以上」を目安にしながら、各家庭や職場の状況にあわせて具体的な体制を検討すると良さそうですね。
次に、育休中のお金の仕組みについてです。育児休業中は会社から給料が支払われないため、お金のことが心配で育児休業の取得をためらってしまう人もいるかもしれませんね。
パパninaruユーザーでも、約7割の方が収入の減少に不安を抱えていました。
しかし、育休中のお金に関する制度や損しないコツを知り、きちんと対策することで、漠然とした不安を払拭することができますよ。
ここからは、育休の専門家である社労士の先生のアドバイスを交えながら、育休中のお金の仕組みについて解説していきます。
小橋 海生(社会保険労務士)
かもめ社会保険労務士事務所 代表。一児のパパとして、長期の男性育児休業を経験したことをきっかけに、一般や企業に向けた男性の育児休業取得を後押しするセミナーを多数行う。
法令・制度の情報のみならず、家事育児の心構えや実践的両立ノウハウの提供を重視しており、パパの育休を通じ、少しでも多くの家庭が充実した育児・職業人生を送れることが目標。
育休中のお金の制度は大きく2つ!
まずは、育休に関するお金の制度をしっかり知っておきましょう。
1. 育児休業給付金
育児休業給付金とは、原則として1歳未満の子どもを育てるために育児休業を取得する人に対して、雇用保険から支給される給付金のことです。
一般的には職場が給付金の手続きを行ってくれるため、指示された書類を提出すればよいですが、個人で申請が必要な場合もあるため、職場に確認しておきましょう。
金額は、育休前の手取りの8割前後
小橋
先生
給付金は、育休開始時の賃金の67%(育休開始から181日目以降は50%)が支給されます。
ただし後ほど説明しますが、育休中は社会保険料が免除されるほか、育児休業給付金が非課税であることから、実際に受け取れる給付金は手取りの月例給与の8割前後(取得期間が180日目までの場合)となります。
給付金が振り込まれる時期に注意!
小橋
先生
育児休業給付金は、育休開始日から約3ヶ月後を目安に、2ヶ月分の給付金が振り込まれます。
つまり約3ヶ月間は収入が途絶えるので、余裕を持った貯蓄が必要になります。
給付金の追加申請を忘れずに!
小橋
先生
継続して給付金をもらうには、2ヶ月ごとの追加申請が必要です。
2回目以降の申請も職場を通して手続きをすることが多いですが、会社によって異なるため、事前に職場に確認しておくようにしましょう。
給付金の上限額に注意!
小橋
先生
育児休業給付金は、給与によって上限額が決まっています。
給与月額が約45万円を超える人は、67%の場合は最大約30万円、50%の場合は最大約22万円(※)までしかもらえないので注意しましょう。
※育児休業給付金の上限額は毎年8月に改定されるので、厚生労働省のホームページをチェックしてください。
▼育児休業給付金の詳細はこちら
▼育児休業給付金のシミュレーターはこちら
育休でもらえる金額を計算しよう!!
2. 社会保険料の免除
育休中は、社会保険料(厚生年金保険料・健康保険料・介護保険料)が全額免除されます。
ご自身の給与明細書を見て毎月天引きされている保険料が、育休中は全額免除されると考えると大きなメリットですね。
勤務先を通じた手続きが必要なので、勤務先の指示には早めに対応しましょう。
その月の末日が育休中である場合
例)4月4日〜7月4日の3ヶ月間、育休を取得
→4・5・6月分の保険料が免除となる
【保険料が免除される条件②】
同一月内で育休を開始・終了し、その日数が14日以上の場合
例)5月2日〜5月15日の14日間、育休を取得
→月の末日を含んでいなくても、5月分の保険料が免除となる
知らないと損!保険料免除を賢く受けるには?
小橋
先生
無理のない範囲で取得期間をコントロールすることで、賢く社会保険料免除を受けることができます。
条件①の場合
例えば月初から復職予定の人が、挨拶回りや引継ぎなどのために1日だけ復職を早めて月末復職としてしまうと、1ヶ月分の社会保険料という大きな出費が発生してしまいます。
逆に、月初から休職に入る予定の人は、仕事上の無理が無い範囲で、1日前倒して前月末からの育休開始とすることで、1ヶ月分の社会保険料免除が受けられます。
条件②の場合
同一月内の短期の育休を取得する場合は、13日取得するよりも14日取得したほうが免除の対象となります。
▼社会保険料の免除について詳細はこちら
▼社労士へのQ&Aはこちら
どのタイミングで上司に伝えるべきか、どのように引き継ぎを進めるべきかなど、パパが持つ大きな不安の一つが「仕事」に関することですよね。
どうすれば自分も周りも気持ち良く育休が取れるのか、専門家である社労士の先生に聞いてみました。
育休は取る側の正当な権利である
小橋
先生
法律上、会社は育休の申出を拒むことはできません。
また、育休の取得期間を短くするように強いること、育休を理由に不利益な評価や取扱いをすることなども禁止されています。
そもそも会社は、育休制度の周知と、取得の意向確認をすることが義務付けられているので、説明を受けた時は確固たる意思を持って「取ります」と言ってほしいですね。
育休の希望は早めに伝えるべし
小橋
先生
育休を取るとき「周りに迷惑をかけてしまうのでは」と不安になる方は多いと思いますが、解決策はとてもシンプルです。
自分と周りの負担を減らすためには「早く言うこと」です。
法律で「1ヶ月前までに申出を行う」と書いてあるので、本当に1ヶ月前に言おうとする人もいますが、職場や上司の立場からすると慌ててしまうのは当然です。
「女性が産休育休で職場を抜けて決定的な悪影響が出てしまった」という話はほとんど聞いたことがありません。それは女性は出産の5〜6ヶ月前には伝えて、十分な期間の余裕を持ってしっかり引き継ぎを行っているからです。
「安定期に入ったら上司に伝えて引き継ぎを始める」というタイミングを夫婦であわせると、自分も周りも十分な準備ができますよ。
もっと言うと、「子どもが生まれたら取ります」と日頃の面談などで言っておくといいです。
早めにジャブを打って下地作りをしておくと、いざ育休の希望を伝えた時のクッションが全然違いますよ。
最後に、具体的なイメージができるよう、パパが育休中に体験できることを取得期間別にまとめました。取得期間を検討する際の参考にしてくださいね。
育休取得1ヶ月のイメージ
● 赤ちゃんは1日16時間程度寝ている
● へその緒が取れる
● 吸啜反射、把握反射などの原始反射が見られる
【赤ちゃんのお世話】
● 2〜3時間おきにミルクと授乳
● 1日に2〜10回排便をするので都度オムツ替え
● 沐浴
● 肌のケア
【TO DO・イベント】
● 出生届、健康保険への加入など各種手続き
● お七夜
● お宮参り
● 1ヶ月健診
● 内祝いを送る
先輩
パパA
育休中はパパが沐浴の担当で、最初はギャン泣きされて挫けそうになりましたが、慣れてくると気持ち良さそうな顔をしてくれるので嬉しくなりました。
ゲップがうまくいかず、うんちもして、上からも下からも大変な事態になったのは良い思い出です(笑)。
育休取得3ヶ月のイメージ
● 日中に起きている時間が長くなる
● 体重は出産時の約2倍に
● 首がすわり始める
● 軽いおもちゃを少し握れるように
● 自分の手の存在に気づく
● あやされると声を出して笑う
【赤ちゃんのお世話】
● 1日6~8回ほどの授乳とオムツ替え
● 寝かしつけ
● 次の季節の服装を考える
【TO DO・イベント】
● 3ヶ月健診
● 予防接種
● お散歩
先輩
パパB
ママに定期的に一人の時間をプレゼントしていると、自分だけで赤ちゃんの面倒が見れるようになりました。お世話は大変ですが、子どもに合ったやり方を見つけたり、甘えてくれるようになったり、子どもの成長や変化を見るのが楽しかったです。
育休取得6ヶ月のイメージ
● 乳歯が生えはじめる
● 寝返りが上手にできるようになる
● 両手でおもちゃを持つことができる
● 人見知りがはじまる
● 感情のこもった声を発するようになる
【赤ちゃんのお世話】
● 1日5〜6回ほどの授乳とオムツ替え
● お出かけが増えるため、病気や怪我に気をつける
● 赤ちゃんの気持ちをくみとる
● 離乳食がはじまる
● 次の季節の服装を考える
【TO DO・イベント】
● お食い初め
● ハーフバースデー
先輩
パパC
とにかく、可愛い子どもと一緒にいるのが楽しくて、顔をずっと見ていられます。平日にお出かけしたり、のんびり公園を散歩したりするなどの平和な日常が愛おしく感じます。欲を言えば、離乳食のはじまりから終わりまで成長を見守りたかったですね。
育休取得1年のイメージ
● 伝い歩き→一人歩きができる子も
● 大人の言葉を理解できるようになる
● 一語文を話すようになる
● 大人のしぐさを真似する
【赤ちゃんのお世話】
● 離乳食を1日3食あげる
● 夜泣きの対処をする
● 公園で遊ぶ
● 予防接種
● 行動範囲が広がるのでケガや誤飲に気をつける
【TO DO・イベント】
● 初誕生
● 初節句
● ファーストシューズの準備
先輩
パパD
1年取得したことで、子どもとの絆は深まったと感じています。四季折々の移り変わりとともに、子どもも自分も成長できました。あとは、子どもの育て方やこれからの人生設計について、夫婦でゆっくり話し合うことができたのもよかったです。