「子どもの歯をむし歯から守ってあげたい」というのが、ママパパの思いですよね。しかし、乳幼児期に「歯みがきをしてくれない」「仕上げみがきに苦戦している」という話をよく聞きます。
どうしたら子どもが進んで歯みがきをする習慣をつけることができるのでしょうか。
歯みがき習慣や、仕上げみがきについて、小児歯科医の田中英一先生に伺いました。
田中 英一先生
田中歯科クリニック小児歯科(東京都中野区)院長。日本小児歯科学会副理事長、日本保育保健協議会理事、保育園や幼稚園の園医をつとめる。子どもの歯と心を考えることで定評がある。共著に『子どもの食の育て方』『にこたえるすこやかな口 元気な子ども』(医歯薬出版)ほか。
家族みんなで歯みがき習慣を身につけよう
子どもに歯みがき習慣を身につけさせるためにはまず、ママやパパからが毎日規則正しく歯みがきをしている様子を見せることはとても重要です。
その姿を見ることで、子どもも興味を持って「歯みがきしたい」と思うようになるでしょう。
朝起きたら歯みがきをする、夕食後に歯みがきをして眠るというように、1日の中で歯みがきをするタイミングを決めることは、規則的な生活リズムの形成にもつながります。
また、歯みがきができたら「歯みがきできたね。歯がピカピカになってよかったね」と褒めてあげるといいでしょう。
褒められることは子どもの自己肯定感を育みます。ぜひ明るく声がけをしながら、毎日の歯みがきをしてみてくださいね。
仕上げ磨きのコツをつかもう
「仕上げみがきを嫌がって困る」というママやパパが少なくありません。子どもを押さえつけて仕上げみがきしては、子どもも怖いでしょう。
また、親が強くみがきすぎて歯ぐきに痛みを感じれば、子どもは口を開けてくれなくなってしまいます。それでも無理矢理仕上げみがきしていたら、親子共に苦痛な時間になってしまいますよね。
仕上げみがきタイムは、親子のスキンシップの時間と捉えましょう。
まずは安心してリラックスできるように子どもを膝に寝かせ、ほっぺやくちびるを優しくマッサージします。
ママの笑顔も大切です。くちびるは敏感な部分。イヤだと思えば口を結んで開けてくれませんが、そっとなでて気持ちよくなると、口元もゆるんできます。優しく触られることで、口の緊張や過敏が取り除かれます。
歯は2本ずつブラッシングします。強くみがくことなく、毛先が当たる程度で十分です。それぞれ10回程度歯ブラシを左右に動かして、ブラッシングしていきます。
① スキンシップ
ほっぺやくちびるをなでて、子どもをリラックスさせましょう。
やさしくブラッシング
2本ずつ、歯ぐきに歯ブラシの毛先を当て、やさしく左右に10回程度みがきます。
ほっぺの内側に指を入れて
みがきにくいところは、ほっぺの内側から指を入れてふくらませてみがきましょう。横に引っ張ってしまうと痛いので、注意しましょう。
歯みがき時の事故に注意しよう
家庭内の事故で意外と多いのが歯ブラシによるもので、救急搬送されるのは1,2歳児が大半を占めます。
歯ブラシには鋭利な部分がないので安心しがちですが、口にくわえて歩き回っているうちに転んだり、ソファーから転落するなどして全身の体重が加われば簡単に喉に刺さってしまいます。ひどい場合には脳に達してしまう可能性も。
以下のようなことに注意しながら、安全に歯みがき習慣を身につけさせましょう。
●本人みがきのときは、目を離さない
●歯ブラシを口に入れたまま歩き回らせない
●歯みがき時以外は歯ブラシを持たせないよう、子どもの手の届かないところに置く
歯みがき習慣は子どもの成長に大切
歯みがきを習慣にすることは、むし歯や歯ぐきの病気を防ぐことにつながるのはもちろん、手指の細かな動作を学んだり、歯ブラシを口の中に入れることで、手と口との協調性や体感感覚を学ぶことができます。
また、鏡に映った自分の顔、目、口の位置を覚え、ボディーイメージを育むことにもつながっていきます。
お子さんの心身の健やかな成長のためにも、親子の歯みがきタイムを楽しく安全に習慣化していってくださいね。
出典:miku 48号 2017年春号
記事提供:絵本ナビ編集部
※掲載されている情報は2017年3月25日当時のものです。一部加筆修正しています。