0歳の赤ちゃんは、保育園に通わせるか、近所の公園や支援センターに行かないと他の子と関わる機会を作るのは難しいですよね。
早くから他の子と遊ばせないと、社会性やコミュニケーション能力など子どもの心の発達に影響があるのではないか?と悩んでいるママもいるかもしれません。
おうちで家族とだけで過ごしていても、発達に影響はないのでしょうか。今回は臨床心理士の帆足先生に、0歳の赤ちゃんとの関わり方について聞いてみました。
臨床心理士帆足 暁子
公認心理師、臨床心理士、保育士資格、幼稚園教諭一種免許を取得。専門は乳幼児発達臨床心理学、保育臨床、子育て相談、子どものメンタルヘルス。ほあしこどもクリニック副院長として、約20年間子育て相談やこころの相談で子どもや親と向き合い、2020年4月からは親と子どもの臨床支援センター代表理事を務める。
社会性を育てるのは2歳を過ぎた頃から
ー 早速ですが、0歳から他の子と遊ばせるべきなのでしょうか?
遊ばせるべき、ということはありません。
大人にケアされる環境が用意されているため「人間は1年早産」とも言われていて、他の動物よりも未熟な状態で生まれてきます。なので生まれて最初の1年間は、赤ちゃんは大人にケアされていればOKなんです。
0歳のうちは、「社会性を育てるために他の子と遊ばせなければ」と考えなくて大丈夫ですよ。
ー そうなんですね。では何歳頃から他の子と遊ばせた方がよいのでしょうか?
2歳頃になると、同じくらいの年齢の子をじっと見つめたり、追いかけたりすることが増えてきます。自分の子どもの様子をみて、他の子に興味をもっているようであれば、一緒に遊ばせてみてあげてください。
ただ、2歳になったからといって、必ず他の子と関わらせないといけないわけではありません。
まだ興味がないのに無理に他の子と遊ばせても、恐怖体験になってしまうだけ。発達の理想論に子どもを合わせるのではなく、その子の発達のペースを大事にしてあげてくださいね。
ー 親が人見知りで人が集まる場所に行くのが苦手なこともあると思うのですが、その場合はどうしたら良いでしょうか?
ママやパパが無理をして行っても、子どもは親の不安感を感じ取ってうまく適応できません。
「社会性を育てるために!」と無理をしてまで行く必要はなく、「楽しそうだから子どもと一緒に行ってみたいな」と思えるようになったら行けばOKです。
人と会うことよりも親子の信頼関係が大切
ー 親戚や友人などパパママ以外の人に触れ合う機会がなくても、心の発達に影響はありませんか?
ありません。
赤ちゃんとずっと2人きりなのがしんどくて、誰かが来てくれることで自分が安心できるのであれば、親戚や友人を呼ぶとよいと思います。
特に0歳の赤ちゃんは、お世話をしてくれる人の状態に大きく影響されます。ママやパパが安心していると赤ちゃんも安心するので、自分自身が居心地のよい環境をつくることが大切です。
無理にたくさんの人に会わせる必要はありませんよ。
ー 小さな頃からたくさんの人と触れ合っている方が、人見知りにならないイメージがあるのですが…。
たくさんの人と会っているから人見知りをしないのではなくて、自分を守ってくれる特別な人(=親)との関係を築けているから、いろいろな人と関われるようになるのです。
なので0歳の頃はママやパパがしっかりお世話をしてあげて、赤ちゃんが安心できる場所を確立することの方が大切ですよ。
0歳はひとり遊びで発達を促してあげて
ー おうちで遊ぶときに、ママやパパが意識した方がよいことはありますか?
まずは危険のない環境を整えること。そして、赤ちゃんが楽しんでくれそうな環境を用意することです。
赤ちゃんが自分で興味をもって「あれはなんだろう?」と遊べる環境を作ると、知的好奇心が旺盛になりますよ。音が鳴ったり動いたりするおもちゃを置いておいてあげるのもいいと思います。
まだまだ思ったとおりにできず、機嫌が悪くなることもあるでしょう。そんなときに「大丈夫だよ」とママやパパが慰めてくれると、赤ちゃんはより自発的に遊ぶようになります。
ー 赤ちゃんがひとり遊びをしていたら、パパママも一緒に遊んであげた方が発達的によいのでしょうか?
いえ、赤ちゃんがひとり遊びをしているときは邪魔しないであげてほしいですね。
赤ちゃんは0歳の頃から遊びを通して「持続力」「自己充実感」「達成感」を身につけていきます。ひとり遊びをしていたら一区切りつくまで見守ってください。
赤ちゃんは表情や声のトーン、皮膚の触感や匂いなど五感を通してママやパパの変化を読み取ります。
「赤ちゃんの相手をしなきゃ」と頑張って遊ぼうとすると表情や声が固くなり、赤ちゃんにとっても楽しくありません。
ママやパパが「赤ちゃんと遊びたい!」と思ったら一緒に遊んであげるだけで十分です。
ー 0歳の赤ちゃんとは、どのように遊んであげるのが良いのでしょうか?
赤ちゃんに笑いかけてあげたり、赤ちゃんの行動にリアクションを取ってあげたり、抱っこをしながら声かけをしてあげたり。
0歳の赤ちゃんにとっては、これだけで十分楽しい遊びですよ。
赤ちゃんとパパママとのやり取りが
コミュニケーション能力の基礎になる
ー ちなみに、家族とだけで過ごしていることで、言葉の発達が遅れることはないのでしょうか?
ありません。言葉の発達の遅れに影響するのは、家族以外の人との関わりの不足ではなく、赤ちゃんと親とのやり取りが不足することです。
言葉はコミュニケーションツールのひとつなので、まずは「コミュニケーションをしたい」という意欲を育ててあげること大切です。
たとえば赤ちゃんが指さしをしたのにママやパパがリアクションをしないと、子どもは次第に指さしをしなくなり、「パパママに伝えたい!」という意欲も低下していきます。
赤ちゃんが笑ったら笑ってあげる、喃語を喋ったら「いまなんて言ったの?」と返してあげる、「お花がきれいだね」などと話しかけてあげるなど、0歳の赤ちゃんとのやりとりを大切にしてあげてくださいね。
ママやパパが楽しく過ごすことがいちばん!
● 0歳のうちは家族以外の人と触れ合うより、親子の信頼関係を築く方が重要
● 2歳頃になり他の子に興味を持ち始めたら、一緒に遊ばせてみる
● 赤ちゃんが自発的に遊べる環境を整えてあげることが大切
● ひとり遊びを通してたくさんのことを学んでいるので、一区切りつくまで見守ってあげる
● 笑いかける、声かけをする、指さしに反応するなど赤ちゃんとのやり取りが、将来のコミュニケーション能力につながる
赤ちゃんの成長に関して不安なことがたくさんあると思いますが、赤ちゃんにとって1番大切なのは「親が笑顔でいること」だと先生は言います。
特に0歳の時期は「こうしなくちゃ」と頑張りすぎず、赤ちゃんと過ごす毎日を楽しんでくださいね。